著者
比屋根 真一 川満 芳信 村山 盛一 Hiyane Shinichi Kawamitsu Yoshinobu Murayama Seiichi 琉球大学農学部
出版者
沖縄農業研究会
雑誌
沖縄農業 (ISSN:13441477)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.2-8, 1998-08

サトウキビ4種を用いて,光合成速度の長時間連続測定から光合成支配要因を調べた.2000μmol m^<-2>s^<-1>の強光条件下では,測定後半に光合成速度の低下が認められた.特に,高い光合成速度を示したTainanおよびNiF4は,低いBadila,Yomitanzanと比較して急激な低下であった.しかし,1000μmol m^<-2>s^<-1>の条件下では,BadilaおよびYomitanzanは緩やかな山なりの曲線を描いたのに対し,Tainanは直線的に,NiF4においては時間の経過と共に緩やかに上昇した.気孔伝導度の日変化は光合成速度と同様のパターンを示した.光強度2000μmol m^<-2>s^<-1>の条件における葉内CO_2濃度は,測定開始から8~10時間経過後上昇した.CO_2濃度900ppm条件下において光合成速度を長時間連続測定し,気孔の影響を省き光合成速度の制限を明らかにした.その結果,900ppm区の光合成速度は350ppm区に比べ若干高めで推移したものの,両区とも測定開始後約5時間目以降に低下した.従って,光合成速度に対する気孔の制限程度は低いと考えられた.日変化を基礎にCO_2収支量の"光―光合成曲線"を作成したところ,1000μmol m^<-2>S^<-1>に飽和点を持つ飽和型曲線を示し,瞬時の測定の"光―光合成曲線"とは著しく異なる結果となった.以上から,光強度2000μmol m^<-2>s^<-1>の条件における光合成速度の低下は,気孔閉鎖に伴う葉内への炭酸ガス供給量の低下に起因したものではなく,葉の内部要因の活性低下が主な原因と推察された.
著者
川満 芳信 重久 利枝子 福澤 康典 村山 盛一
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1-14, 2002-12-01

CAM植物であるパインアップルのCO_2収支量を増大させるためには明期の気孔を更に開孔させる必要があると考え,気孔開閉を制限している要因を検討した.1.暗期を短縮してCO_2固定を抑制してもリンゴ酸蓄積量は対照区とほぼ同じであった.暗期におけるリンゴ蓄積量とPhase-3の長さ,明期におけるリンゴ酸の消失と気孔開孔(ガス交換の開始)には関係は無く,Phase-4において葉内CO_2濃度が低下しても気孔は開かなかった.2.暗期短縮やCO_2-free air処理はリンゴ酸蓄積量を減少させたが,Phase-4の気孔開孔は著しく阻害された.3.葉のリンゴ酸含量が増加すると水ポテンシャルおよび浸透ポテンシャルは低下した.4.暗期を短縮した長日条件にすると明期のCO_2吸収は増加し,総CO_2収支量は僅かに増加した.更に明期が長くなると,C_3回路よりもリンゴ酸を精製するC,ジカルボン酸回路が活発に働き,総CO_2収支量の増加は期待できなかった.