著者
松永 昌宏 金子 宏 坪井 宏仁 川西 陽子
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.135-140, 2011-02-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2

本研究では「幸福感」に着目し,幸福感の脳神経基盤および幸福感が脳と身体の機能的関連に及ぼす影響を明らかにすることを試みた.実験の結果,高幸福群では低幸福群に比べて,ポジティブ感情喚起時の内側前頭前野・腹側線条体(脳内報酬系)活動が有意に高く,報酬系活動を抑制する末梢炎症性サイトカイン濃度が低いことが明らかとなった.また,カンナビノイド受容体遺伝子多型と幸福感との関連を解析した結果,カンナビノイドの受容体に対する結合能が高いCC/CT遺伝子型群では,TT群よりも主観的幸福感が高いこと,末梢炎症性サイトカイン濃度が低いこと,そして内側前頭前野活性が高いことが示された.本研究から,幸福感を維持するメカニズムとして脳内報酬系機能,炎症性サイトカイン,内因性カンナビノイドの関連が示唆された.本研究の研究成果から,今後心身の健康を維持するための予防医学的アプローチなどが展開されていくことが期待される.
著者
川西 陽子
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.22-30, 1995 (Released:2015-06-13)
参考文献数
15
被引用文献数
1

The purpose of this study is to examine the relation among self-esteem, appraisal (amount of stressful experience, degree of stressfulness and controllability), coping and psychological stress responses in a sample of 190 university students. Product-moment correlation cofficients were calculated between self-esteem and appraisal, between self-esteem and coping strategies, between self-esteem and psycholological stress responses. Self-esteem was negatively correlated with amount of stressful experiences, Escape-Avoidance coping, Accepting Responsibility coping and psychological stress responses. Furthermore, multiple regression analysis revealed that self-esteem, Escape-Avoidance coping and Positive reappraisal coping influenced the psychological stress responses. These results suggest that students with low self-esteem were tend to appraise daily events as more stressful, to use Escape-Avoidance coping towards stressor more frequently and to show more psychological stess responses.
著者
川西 陽子 早田 憲司 八木 一暢 奥野 幸一郎 田中 博子 正木 秀武 奥野 健太郎 坪内 弘明
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.217-223, 2016

<p>予後不良と認識されている妊娠22週未満での前期破水(以下;pPROM)の予後について,当院の症例を後方視的に検討した.2006年から2013年の間に,当院で妊娠22週未満にpPROMと診断された41症例(うち双胎4症例)を対象とした.41例の破水時週数は妊娠13週~21週であった.18例が48時間以内に流産進行またはIUFDとなり,10例が選択的分娩誘発を選択したため,13例について待機的管理を行った.妊娠22週未満に分娩に至った6例はIUFDが3例,自然流産が2例,母体感染による人工流産が1例であった.妊娠22週以降に分娩に至った7例のうち,死産となった2例(双胎1例)はいずれもIUFDであった.5例(双胎2例)が妊娠26週1日から33週6日で分娩に至り,7人の生児を得た.待機的管理を行った13例のうち,3例が母体感染を認め,1症例に遺残胎盤を認めた.胎盤病理所見では,Blanc III度の絨毛膜羊膜炎を生産例で1/5,死産例で6/8で認めた.児の合併症としては,先天性サイトメガロウイルス感染と子宮内胎児発育制限を認めた1例で重度の身体的・精神的発達障害を認め,dry lungと慢性肺障害のため在宅酸素療法を要した.他の6例中,肺低形成・敗血症・脳室内出血など重篤な合併症は認めず,1例がdry lungと診断されたが退院までに改善を認めた.股関節の開排制限を2例で認め,うち1例は生後早期に自然軽快し,1例は理学療法を要した.双胎の非破水児1例に精神発達障害を認めた他,5例は生後の精神発達に異常を認めなかった.妊娠22週未満のpPROM症例であっても必ずしも予後不良ではないことを念頭に,待機的管理も含めて治療方針を提示することが望ましい.〔産婦の進歩68(3):217-223,2016(平成28年8月)〕</p>