著者
冨安 眞理 川越 博美
出版者
一般社団法人 日本看護学教育学会
雑誌
日本看護学教育学会誌 (ISSN:09167536)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.39-50, 2005-11-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
27
被引用文献数
2

本研究は、病院から在宅へ移行した新人訪問看護師が看護実践への自信を深める要因を探索することを目的とした因子探索型質的研究である。病院での臨床経験を経て訪問看護の経験が2年以内である看護師7名を対象として、半構成的面接調査を実施した。収集されたデータについて質的記述分析を行った結果、次のことが明らかになった。 【療養者とパートナー関係を結ぶ】【ひとりで訪問する】【医療から生活へ看護の軸を移す】【他職種とともに療養生活を支える】を課題として、新人訪問看護師は段階的に取り組んでいた。また、新人訪問看護師が課題に取り組むプロセスにおいて、【先輩看護師からサポートを受ける】【チームメンバーからサポートを受ける】【療養者・家族とつながる】【成長の糧をみつける】といった看護実践への自信を深める要因が、自信に影響を与えていた。これらの結果から、新人教育プログラムおよび新人訪問看護師へのサポート体制について示唆が得られた。
著者
菱沼 典子 川越 博美 松本 直子 新幡 智子 石川 道子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護大学紀要 (ISSN:02892863)
巻号頁・発行日
no.31, pp.46-50, 2005-03
被引用文献数
1

聖路加看護大学看護実践開発研究センターでは,2004年5月に,市民に健康情報を提供する場として,聖路加健康ナビスポット「るかなび」を開設した。本論文は,「るかなび」開設までの経過,開設から5ヵ月間の来場者の現状の報告である。医療の主体は病んでいる患者にあり,医療者はその回復を手助けするパートナーであるという関係を構築していくには,まず,市民と医療者の間の圧倒的な情報量の差を埋めることが必要である。主体的に健康生活を創り,自分の健康を自分で守る市民社会をめざして,必要な健康情報を得る方法ならびに,健康情報の使い方に関して情報を提供することを目的に,「るかなび」を開設した。「るかなび」は,月曜日から金曜日までの10時から16時までをサービス時間とし,スタッフとしてヘルスコーディネーターまたはヘルス・ボランティア1〜2名が常在,書籍,パンフレット,血圧計,身長・体重計,コンピュータを備えている。開設から9月までの来場者は428名で,利用目的は健康相談が26%,立ち寄りが22%であった。来場者のうち,アンケートに回答を得られた90名では,40〜60歳代が7割,女性が7割であった。市民が欲していることに合わせ,教育,研究にも活用できる場になるよう工夫を重ねたい。
著者
松村 ちづか 川越 博美
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.19-25, 2001-03-01 (Released:2017-04-20)

本研究の目的は,在宅療養者の自己決定と家族の意向が不一致な状況において,熟練訪問看護者がその不一致を解決し,療養者の自己決定を実現するためにどのような意思決定をしているのか,構成要素および構造を明確にし,療養者の自己決定を支えるための訪問看護者の意思決定のあり方の示唆を得ることである.対象は5名の熟練訪問看護者で,継続的な家庭訪問での参加観察とインタビューを用いた質的記述研究を行った.その結果,熟練訪問看護者が認識した療養者の自己決定と家族の意向が不一致である内容としては,療養者の日常のケア,治療,生き方に関するものがあった.また,不一致の根底にある療養者と家族の関係性として,家族が療養者を大切に思うがゆえに不一致が生じているものと過去からの関係性の困難さから不一致が生じているものがあった.熟練訪問看護者の意思決定の構成要素として,訪問看護者としてのあり方を意味する2コアカテゴリー【訪問看護者としての生き方】【個人としての生き方】,意思決定のプロセスを意味する10コアカテゴリー【役割認識をもつこと】【了解すること】【自己関与させること】【自己と対話すること】【支援目標をもつこと】【見通すこと】【決断すること】【働きかけのタイミングを掴むこと】【働きかけ方の選定をすること】【支援について省みること】が抽出された.これらのコアカテゴリーを各熟練訪問看護者の意思決定の経時的プロセスに当てはめてみた結果,熟練訪問看護者の意思決定の全体を構造化することができた.以上の結果から,訪問看護者が在宅療養者の自己決定と家族の意向が不一致な状況を解決し療養者の自己決定を支えるためには,療養者と家族が共に納得できるような方向性の家族ケアを提供する必要性が示唆された.そして,訪問看護者の意思決定のあり方として,療養者の自己決定する権利を認識し,療養者の心身の利益の優先という倫理的,かつ自己のあり方を問う自律的な意思決定をしていく重要性が示唆された.
著者
菱沼 典子 石川 道子 高橋 恵子 松本 直子 鈴木 久美 内田 千佳子 金澤 淳子 吉川 菜穂子 川越 博美
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.76-82, 2007-06
被引用文献数
1 1

目的:大学内に市民が立ち寄り活用できる健康情報サービススポットが開設されて3年目になる。この健康情報サービススポットの広報活動が,利用者の増加に有用であったかどうかを検討し,今後の広報活動への示唆を得ることを目的に本研究を行った。方法:調査対象期間は2004年4月〜2006年12月であり,健康情報サービススポットの記録と,研究者間での振り返りからデータを収集した。広報活動を時間軸に沿って整理し,来訪者数,リピーター,健康相談者数,ならびに当該地域住民,当該自治体,看護職・司書等からの協力や連携等の問い合わせ件数の推移を調べた。結果:3年間の広報活動の内容は<知ってもらう宣伝>と<来てもらう催事>に大別され,<近所付き合い>から始め<町のキーパーソンとの連携>によって推進されていた。<知ってもらう宣伝>は,ポスターやチラシ,案内板や看板,地域の行事への参加,ホームページの活用で,イメージキャラクターを用い,サービス内容を選択して宣伝内容としていた。<来てもらう催事>はハーブティや抹茶のサービス,ランチタイムミニ健康講座・ミニコンサートの定期的催しであった。健康情報サービススポットの最も重要な活動である健康相談の月平均利用者は,2004年31.7名から2006年88.4名と増加し,2005年の相談者の12%がリピーターであった。宣伝媒体を受け入れている店舗数は2006年現在,ポスター掲示が31件,カードの設置が10件で,自治体や自治体内の諸機関からの連携依頼や専門職の見学もあった。考察:これらの結果から,健康情報サービススポットの利用者が増え,その存在が広く知られてきていることが確認でき,広報活動は有用であったと考える。大学と地域との連携や,広報活動の中での健康情報サービスの実施について考察した。
著者
有森 直子 小松 浩子 長江 弘子 太田 加代 横山 由美 川越 博美
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.84-89, 2005-06-20

本稿の目的は,People-Centered Careというテーマをシンポジウムという形態で企画・運営から実施まで試みた市民と医療者の「協働」のプロセスおよびその企画担当者(医療者)の経験内容を帰納的に記述することである。方法は,駅伝シンポジウム企画運営委員会の議事録・配布資料をデータとして,企画運営のプロセスおよび,医療者と市民の協働について内容分析を行った。結果は,企画のための会議は15回(計28時間)もたれた。医療者が市民と「協働」することの模索におけるスタートの段階では,いかにしてこの活動(シンポジウム)を広報するか(プロモーション)に力点がおかれロゴおよびキャッチコピーの作成などがなされた。またボランティアとともにシンボルキルトの作成をシンポジウムの開催期間に行った。各シンポジウムにおいては,前回のシンポジウムの改善点を次回に生かして,プログラムの工夫がなされた。People-CenteredCareを基盤とした市民との協働における一連のプロセスにおいて医療者の企画担当者は,(1)メインテーマの再確認,(2)「市民を巻き込む」方略の模索,(3)市民に対してわかりやすく説明する努力,(4)People-Centered Careとシンポジウムの目標の再検討,(5)シンポジウムの成果の発信方法の検討,(6)医療者が市民から「教わる」経験をしていた。シンポジウムは第1回「あなたはどこで最期を迎えたいですか」,第2回「考えよう!医療と看護-あなたも医療チームの一員-」,第3回「自分で決めた生き方を実践するために」をテーマに開催された。160〜320名の参加者があり,その4割は医療職であった。性別は,8割が女性であった。評価項目の(1)テーマとニーズの合致性,(2)シンポジウムの政策提言性,(3)国際的情報発信の適正については外部評価者(有識者)よりも参加者の評価のほうが高かった。