著者
工藤 綾子 稲冨 惠子
出版者
順天堂大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

1. テーマ「災害時における集団避難生活者の感染予防意識と行動」を第14回日本在宅ケア学会学術集会(聖路加看護大学)にて発表した。回答者は117名。男性44.4%、女性55.6%である。本調査では(1) 集団避難生活者の感染症意識は災害発生時期や集団非難の規模の影響をうけている。(2) 避難期間の長さによって体調の変化、集団避難生活の仕方(清掃範囲・清掃場所)などの清掃意識に影響を与える。(3) 避難生活中の感染症予防行動がとれていない人は30%みられる。感染予防行動は水確保の影響を受けており、医療関係者派遣と同時に、早い時期の水確保が感染症予防と拡大防止につながることが明らかにされた。2. 全国の県庁・市役所の災害防災課担当者への調査結果:611箇所から回答を得た。災害時に充分対応できるかと感染症の知識の両項目には関係がみられ、知識が不十分な場合には充分な対応ができないと捉えていた。また、災害時に感染症の知識が不十分と答えた人と対策が必要な細菌・ウイルスはなにかわからないと答えた人には有意な関係がみられた。最も注意する感染症は「呼吸器系の感染症」が最も多く264名(43.5%)であった。「消化器系の感染症」138名(22.7%)では、災害時に対応できる人数が21~30人と答えた人の項目に有意な関係がみられた。仕事内容と災害時の対応では、「地域住民の安全対策」担当と災害時の対応が充分な対応ができるともできないとも言えないと答えた人とは有意な関係がみられた。防災担当する人には、感染症に対する知識が求められることがわかった。3. 今後の課題:行政調査の結果を学会に発表し、1.2の結果をもとにマニュアルを作成する。
著者
久保田 早苗 工藤 綾子 岩渕 和久
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.87-96, 2020-05-25 (Released:2020-11-25)
参考文献数
17

本研究の目的は,理学療法士の訓練時における感染予防意識と行動について明らかにすることである.感染管理認定看護師が所属する施設に勤務する理学療法士,5施設計18名を対象に半構造化面接を行い,感染予防意識と行動に関する語りをコード化,類似するコードをカテゴリー化し,質的帰納的に分析した.理学療法士の感染予防意識は432生成され,98サブカテゴリー,28カテゴリーに分類され,5コアカテゴリーが抽出された.コード数の多いコアカテゴリーとして,【職種間の感染予防策の認識の差と危機管理意識】【感染症患者の増加によるリハビリ調整の困難さと超高齢社会への危機感】などが生成された.理学療法士の感染予防行動は684生成され,93サブカテゴリー,25カテゴリーに分類され,7コアカテゴリーが抽出された.コード数の多いコアカテゴリーとして,【感染症や指示による手順通りの防護服の着脱と定期的な白衣・リネンの交換】【感染症情報の確認・連絡による日常や汚染時の清掃徹底】などが生成された.患者との接触が多い理学療法士が行う標準予防策は感染症の有無や健康状態によって予防策を決めていくことではないことを理解し,実践していくことが求められる.また,感染事例に応じて自らが判断し根拠をもった知識の習得を目指す必要がある.
著者
鈴木 淳子 工藤 綾子 山口 瑞穂子 村上 みち子 服部 恵子 岩永 秀子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-16, 1994-03-25
被引用文献数
1

本研究は,基礎看護技術を教授するうえで必要な科学的裏付けを明らかにする研究の一環として行っているものである。今回は,バイタルサインの測定技術の教授に必要な知識がどの程度実証されているか,過去10年間の看護関係の文献から明らかにした。検索した文献を(1)血圧測定,(2)体温測定,(3)脈拍測定,(4)心拍測定に整理し,考察した。呼吸測定については該当する研究がなかった。その結果,血圧測定時には測定器具の特徴を考慮すること,測定者による誤差を少なくする為に最小血圧を読む時の減圧をゆっくりしたほうがよいとの結果を得た。清潔援助や体位が血圧に及ぼす影響については,仰臥位による測定が妥当とされた。血圧測定方法に関しては,測定部位と心臓を同じ高さにする必要性や,上腕の太さが測定値に影響を与えることが検証された。体温測定に関しては,体温計の特徴を理解して使用することが必要とされた。体温測定時の変動因子については,身体の露出,腋窩検温では皮下脂肪の厚さが測定値に影響を与えること,入浴後60分後に入浴前の体温に戻ることがわかった。測定方法については,水銀体温計での腋窩検温の測定時間は10〜15分間必要であること,測定部位を一定にする必要性が明らかになった。また,口腔温よりも腋窩温の方が高いとは一概に言えないとの報告,老人のオムツ内検温の有用性の検証など,対象者の状態を考慮した測定部位の選択の必要性が示唆された。脈拍,心拍測定については,運動,入浴などの影響を考慮し,1分間測定することが必要であることが実証された。
著者
工藤 綾子 稲冨 惠子 佐久間 志保子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.458-467, 2007-09
被引用文献数
1 1

目的:本研究は訪問看護師ならびに施設責任者の在宅医療廃棄物処理の現状を把握し,訪問看護ステーションの適正処理に関する教育的課題を明らかにすることを目的とした.対象:訪問看護師703名,施設責任者345名.方法:対象者には質問紙による郵送法調査を行った.調査内容は,(1)在宅医療廃棄物の処理状況,(2)医療廃棄物取り扱いに関する指導内容と方法,(3)感染性医療廃棄物に関する意識と取り扱い,(4)行政・企業・施設に対する要望などであった.調査結果:(1)訪問看護師が施設に持ち帰る廃棄物は注射器・注射針,点滴セット,血糖測定時のテステープ・カット針などであった.(2)医療廃棄物に関する講習会への参加経験がある訪問看護師は25%であった.(3)職員を講習会に参加させている施設責任者は34%であった.(4)施設に対しては医療廃棄物に関するマニュアル作成,感染症に対する学習の機会を要望していた.(5)行政・企業への要望は訪問看護師・施設責任者ともに知識の普及であった.結論:講習会参加については参加させている施設責任者,参加経験のある訪問看護師ともにその効果を認めているものの,職員を講習会に参加をさせている施設責任者は少なく,訪問看護師の在宅医療廃棄物に関する知識の普及と各市町村ならびに施設の廃棄システムを踏まえた感染性医療廃棄物の取り扱いマニュアルの作成が急務な課題であることが明らかになった.