著者
平 弥悠紀 ヒラ ミユキ Hira Miyuki
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究 (ISSN:21868816)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-21, 2013-02

研究論文(Article)大槻文彦著『言海』において見出し語として立てられた和語の音象徴語(異なり語数315 語、延べ語数325 語)について調査を行い、以下の特徴を明らかにした。『言海』には、語頭がパ行である語は載せられていない。採録された音象徴語のタイプは、多い順に、「ABAB」、「ARAR」、「AッBリ」、「ARリ」、「AB」となっており、この上位5 位までのタイプで、全体の7 割以上を占めていた。また、『言海』では、古語と俗語について記号が付されており、古語として扱われている語は、奈良時代に見られる「AB,ABB,AB ラ、ABAB,AR ラ、ARAR,A,AA」タイプの語、俗語には、中古になって現れる「ABリ・ARリ」、中世になって現れる「AッBリ、AンBリ」タイプの語が多かった。語頭の音については、パ行音であるものが採録されていないこと、バ行音の語も比較的少数であることから、多い順に「サ行」、「カ行」、「タ/ハ行」となっており、同時期に出版された『和英語林集成』(第3 版)や現代音象徴語では「ハ行音」がトップであるという様相とは異なっていた。語末の音は、多い順に「リ」、「ラ」、「ロ」、「促音」となっていて、『和英語林集成』(第3 版)とほぼ同様であった。現代音象徴語を採録した『擬音語・擬態語の読本』と、「リ」が1 位である点では同様であったが、異なる点としては、「ラ」が上位を占め、また、撥音は上位ではなかった。
著者
平 弥悠紀 Miyuki Hira
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究 = Bulletin of Center for Japanese Language and Culture (ISSN:21868816)
巻号頁・発行日
no.17, pp.19-37, 2020-03

漫画には多くのオノマトペが見られるが、本稿では、「動き」を視点として、オノマトペを取り上げ、中でも「歩く・走る」動きについて、擬音語、擬態語がどのような役割を果たしているのかについて考察した。擬音語・擬態語の辞書によると、人間の全身の「動き」の中で、「歩く」動作に関するオノマトペが最も多く見られる。一方で、「走る」に関するオノマトペは少数である。本稿で資料とした森本梢子著『研修医 なな子』(全7巻、1995-2000年、集英社)では、「歩く」動作そのものを表現する場合、「歩く」に関するオノマトペではなく、擬音語が多く用いられている。特に「走る」に関しては、擬音語を活用して、「走る」動作を表現していると考えられる。絵にオノマトペを添えて、絵では表現しきれない内容を補うばかりでなく、絵はなくても、オノマトペだけで十分「動き」を読み取ることができる場合もある。このような「動き」を表現するオノマトペは、単に「動きの効果を高めるため」の「効果音」というよりも、「動き」そのものを表現するツールになっていると考えられる。そして、「音や動きのない時間を造り出す」促音によって、動きの遅速を表現したり、リズムに変化を与えたり、オノマトペの様々な語形によって、動きの違いを表現し分ける。また、「歩く」カテゴリーのオノマトペは、歩く動作そのものよりも、身体機能に影響されたり、健康状態や心理状態を反映した歩き方を表現していた。
著者
平 弥悠紀
出版者
同志社大学
雑誌
同志社大学留学生別科紀要 (ISSN:13469789)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.17-29, 2004-12

天沼寧編『擬音語・擬態語辞典』(1974〔昭和49〕年,東京堂出版)に収録されている音象徴語を,A型,AB型,AR型の三つに分けて,擬態語がどのようなタイプの語に多く用いられているのかを擬音語と比較した。型別に見ると,A型は音象徴語全体の中でも少数である上に,特に擬態語は少ない。A型の中では,擬態語では「Aッ」,擬音語では「AーAー」タイプが最も多かった。AB型では,「ABAB」タイプは,擬態語,擬音語ともに最も多く用いられている。特徴的であるのは「AッBリ,AンBリ」タイプの語で,擬態語としての用法がほとんどであった。AR型においても,擬態語,擬音語ともに。「ARAR」タイプが一番多かった。AR型で特徴的なのは,「リ」の添加されたタイプはほとんどが擬態語として用いられており,擬音語としてはあまり見られないことである。全ての擬態語,擬音語について見ると,擬態語としても擬音語としても1位は「ABAB」タイプで,4位に「ARAR」タイプが入っている。2拍語基の重複型は,擬態語,擬音語を問わず,全ての音象徴語の代表的なタイプであると言える。擬態語の上位にA型のタイプは少なく,一方,擬音語では6位から10位はすべてA型である。擬態語の第3位の「AッBリ」,8位の「ARリ」は,擬音語としてはほとんど用いられていなかった。また,語末の音については,「リ」は擬態語に多く,撥音は擬音語に多く見られた。用例数は少ないが,引き音節についても,擬態語に少なく,擬音語に多かった。
著者
平 弥悠紀 ヒラ ミユキ Hira Miyuki
出版者
同志社大学日本語・日本文化教育センター
雑誌
同志社大学日本語・日本文化研究
巻号頁・発行日
no.7, pp.1-16, 2009-03

論文(Article)音象徴語の語基について、2拍語基から便宜的に語基の第2拍がラ行音であるものを独立させ、AR型(2拍語基で第2拍がラ行音)、AB型(2拍語基で第2拍がラ行音以外)、A型(1拍語基)の3つに分類し、これまで研究を行ってきた。本稿ではAR語基を更に語基別に調査し、特に、「Aリ」語基について、特徴を明らかにした。
著者
平 弥悠紀
出版者
同志社大学
雑誌
同志社大学留学生別科紀要 (ISSN:13469789)
巻号頁・発行日
pp.31-45, 2001-12

音象徴語をA型(1拍語基の語),AB型(2拍語基で,第2拍がラ行音以外の語),AR型(2拍語基で,第2拍がラ行音の語)の三つに分けて,擬音語がどのようなタイプの語に多く用いられているのかを調査した。型別では,擬音語としての用法をもつ語の割合はA型に多く,AR型には比較的少ない。それぞれの型においても,A型では「Aー,Aッ,Aン」,「AーAー,AッAッ,AンAン」タイプに,擬音語としての用法をもつ語が多く含まれているが,特に,引き音節の「Aー,AーAー」タイプのものに集中していた。AB型の語では,「ABリ」には擬音語として用いられる語があるにもかかわらず,「AッBリ,AンBリ」にはほとんどない。AR型では,語基に「リ」の添加された形の「ARリ,ARリARリ」等にはあまり擬音語として用いられる語はなく。「リ」の添加されない「ARAR,ARARッ」等が擬音語としての用法をもっていた。AB型,AR型では「リ」が添加されているか否かで,擬音語として用いられる語の分布に偏りが見られた。また,擬音語を意味分野別にみると,「動物・人の声」の擬音語,声を発するという行為に近い「吐く,吹く,吸う,呼吸する」ことを表す擬音語はA型に多かった。しかし,同様に口を使って行う行為でも「噛み砕く」はAR型,「飲み込む」はAB型の語に集中しており,意味分野によって,用いられる語のタイプに偏りがあることがわかった。
著者
平 弥悠紀
出版者
同志社大学
雑誌
同志社大学留学生別科紀要 (ISSN:13469789)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-15, 2005-12

天沼寧編『擬音語・擬態語辞典』(1974〔昭和49〕年,東京堂出版)に収録されている音象徴語のうち,XYXYタイプ(AB型の「ABAB」,AR型の「ARAR」,A型の「AーAー,AッAッ,AンAン」)の擬音語について調査した結果,以下のことが明らかになった。AB型の語基の子音は,第1音節は「p・b・h・k・g・t・d・s・z」に,第2音節は「p・b・h・k・g・t・d・s」に集中しており,AR型,A型も第1音節はAB型と同様であった。また,どの型においても「m・n・w・j・r・φ」はわずかであった。擬音語は,「声」と「音」に二分でき,更に,「音」は,「動作に関わる音」,「無生物が発する音」,「物と物とが作用して生じる音」に分けることができる。「生物が発する声」と「無生物が発する音」にはA型の語が多く,「物と物とが作用して生じる音」には,AB型の語が多く見られた。圧力が加わって音が出るという点で,「動作に関わる音」の「噛む・齧る」は,「物と物とが作用して生じる音」の「引っ掻く・削る」等と共通しており,これらはAR型の「AリAリ」の形が圧倒的であった。「物と物とが作用して生じる音」でも,「触れ合う」,「打ち当たる」等にはAB型が多かった。また,第1音節を同じくする語の中には,「ARAR」は「震える音」,「AンAン」は「響く音」,「AッAッ」は「短い音」,「AーAー」は「継続する音」といったニュアンスが感じられるものもある。AR型の語は,従来の研究ではAB型として扱われてきたが,A型のバリエーションというとらえ方をすることも可能な語もあり,今後更に検討を加える必要があると考える。擬態語との比較も課題である。