著者
大森 斉 國安 弘基 北台 靖彦 藤井 澄 千原 良友 笹平 智則 佐々木 隆光
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

骨髄間葉系幹細胞 (MSC) は、癌組織に動員され癌細胞と相互作用を通じて癌の進展・転移に関与すると考えられ、がん研究の焦点の一つとなっている。報告者らは、MSCが癌細胞が産生分泌するサイトカインHMGB1により腫瘍内に誘導され、腫瘍内では腫瘍が分泌するTGFβを多量に含んだECMであるバイグリカンとHMGB1により幹細胞が維持されることを明らかにした。このような状態は大腸癌では粘液腫状間質として病理組織学的に認識され、糖尿病合併大腸癌肝転移症例に多く認められる。HMGB1の吸着・中和によるMSC動員阻害は腫瘍増大・転移を抑制し、MSC標的化の有効性が示唆された。
著者
板村 裕之 福嶋 忠昭 北村 利夫 原田 久 平 智 高橋 芳浩
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.867-875, 1994
被引用文献数
3 2

カキ平核無の果実の脱渋後の軟化と樹体条件, とくに葉との関連について調べた.<BR>1.樹勢が弱く落葉時期が早い樹と, 9月以降にビニール被覆を行って, 落葉時期を遅らせた樹と生育中庸な対照区の樹からそれぞれ果実を採取し, アルコール処理を行った後の20°C条件下における果実の軟化を比較した. その結果, 早期落葉樹からの果実は対照区の果実に比べて, 軟化が早く, 逆に落葉が遅れた区の果実は軟化するのが遅かった.<BR>2.7月21日に摘葉処理を行い, 9月11日, 9月30日, ならびに10月15日にそれぞれ果実を採取して, アルコール脱渋後の軟化を調べた. いずれの採取時期の果実でも, 摘葉処理は脱渋後の果実のエチレン生成を促進した. さらに, 9月30日および10月15日採取の果実では摘葉処理区の果実の軟化は無処理区(対照区) に比べて7~10日促進された.<BR>3.9月7日に50ppm GA散布処理を行い, 9月15日, 9月25日, ならびに10月12日に果実を採取して, 脱渋処理を行った. いずれの採取時期の果実でも, 脱渋後の果実のエチレン生成量はGA処理の影響をまったく受けなかった. しかし, 10月12日採取果ではGA処理は, 明らかに果実の軟化を抑制した.<BR>4.10月20日に摘葉処理を行った区と, 摘葉処理の4日前に50ppm GAを前処理した区の果実を, 11月2日に採取して脱渋処理した. 脱渋後の果実のエチレン生成量は, 摘葉処理やGA前処理の影響をほとんど受けなかったものの, 摘葉処理区は果実の軟化を促進した. また, この軟化促進効果はGA前処理によってほぼ完全に打ち消された.<BR>5.7月21日に摘葉した区と対照区の果実を11月15日に採取し, 内生のGA様活性を比較した. 対照区では, 比較的高いGA様活性が認められたのに対して, 摘葉区では抑制分画は認められたが, GA様活性はほとんど認められなかった.<BR>以上の結果から, 葉が樹体に着生していることが,採取脱渋後の果実のエチレン生成を抑制する効果があるものと考えられた. また, 葉のエチレン生成抑制効果はGA以外のものによっていると思われた. さらに,成熟果においてはエチレン生成から軟化にいたる一連の反応のどこかを葉由来のGAが阻害している可能性が示唆された.