著者
跡見 順子 村越 隆之 平工 志穂 三上 章允 桜井 隆史
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

東京大学教養学部では新入生を対象に必修科目のスポーツ・身体運動を行っている。その科目の一つとして、自分自身の身体を用いて運動を行いながら、運動時の身体変化を科学的に理解することを目的とした「スポーツサイエンスコース」を開講している。約30人の受講生を対象として、生命科学を基本とし、自分自身のからだを通して、また実際に運動することを通して、生命と脳を理解するための、以下の4つの教育プログラムの開発を行っている。1)フィールドにおける呼吸数による至適運動強度の推定を行い、運動に苦手意識を持つ学生にも自分自身のからだの機能を理解させる効果が得られた。2)運動後の脳の活性化を測定するためのプログラムを開発した。パソコンを用いた数分で修了する試験により、脳の活性状態を数値化し、比較検討することを可能としている。3)自分自身のからだを、構成単位である細胞から理解するために、ラットの解剖を行っており、現在、映像コンテンツを作成中である。4)自分自身の身体の動きを理解するために、ゆっくりとした動きを制御する太極拳を実習科目に取り入れ、太極拳について科学的な視点を持って身体の理解につなげる研究を行っている。伝統武術太極拳の脳機能への効果を、近赤外分光法(NIRS : Near Infrared Spectroscopy)を用いて検討した結果、太極拳実施中のOxyHbは対照課題実施時と異なる変化を示すことが明らかになった。1-3の内容をまとめたものを、日本体育学会第56回大会にて跡見、桜井が口頭発表、The American Society for Cell Biology, 44^<th> annual meetingにて跡見がポスター発表を行った。4の内容についてまとめたものを、日本体育学会第56回大会にて平工がポスター発表および共同研究として口頭発表を行った。
著者
曽我 芳枝 平工 志穂 中村 有紀
出版者
東京女子大学論集編集委員会
雑誌
東京女子大学紀要論集. 科学部門報告 = Science reports of Tokyo Woman's Christian University (ISSN:03864006)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.1987-1999, 2015

Today it is normal for women to partake in sports or exercise. This paper will firstly describe the current status of women in sport and exercise and its significance, using the actual practice and the current status of physical education at a woman's high school, Tokyo Woman's Christian University. Following this, the paper will investigate the background behind how Tetsu Yasui (1870–1945), the teacher who brought the fundamentals of physical education to the University, but was not a specialist in physical education, emphasized its importance in education, as well as looking into the history of physical education for women in Japan and how it has played such a big role to date. Lastly, the paper will aim to provide possible considerations for the future of physical education at the university.Sport and exercise is an effective method of supporting the health of the body and the mind, however the tendency for women to drop out of exercise between junior and senior high school is quite prominent, with nearly half of all students feeling out of touch with exercise once they graduate university. From the results of the study, it was found that the same problem has arisen for the students Tokyo Woman's Christian University.Yasui claims that "if physical education is not thorough enough, we cannot produce women with admirable qualities", and Tokyo Woman's Christian University has a history of keeping that ideology in mind, having placed a heavy importance on physical education in women from the opening of the school up until now. It is thought by the research group that they continue to combine further research and improvements to raise awareness of the social role that sport and exercise has for students in maintaining a healthy body and mind as well as forming solidarity with others, in the hope of guiding students to develop a broad view of the world while creating good relationships among people.今日では,女性がスポーツや運動をすることは当たり前のこととして捉えられるようになった.本稿では,まず女性におけるスポーツ・運動参加の現状と意義を述べ,女性の高等教育機関である東京女子大学の学生の実践及び身体教育の実態を述べる.そして同大学の体育の基礎を築いた安井てつ(1870–1945)が,体育の専門家ではないにも拘わらず教育活動において体育を重視するに至った経緯を調査し,同時に日本の女子体育史上,如何に大きな役割を果たしたかについて探っていく.併せて同大学におけるこれからの体育のあり方について考察することを目的とした.スポーツ・運動は心身の健康を維持するための有効な手段であるが,女性は中学校期から高校期にかけて運動をしなくなる傾向が顕著で,大学を終えると半数近くが運動と疎遠になる.東京女子大学の学生についても同様の事が調査の結果,課題として浮かび上がった.安井は「体育が充分に行き届かなければ,立派な品性ある女子を作ることはできない」との考えであったが,東京女子大学は開学以来今日までその理念を尊重すべく女性の身体教育を重要視してきた歴史がある.研究グループは今後も更に研究・改善を重ね,学生にスポーツ・運動実践を通して心身の健康や他者との連帯を図るという社会的役割を認識させ,良好な人間関係を築くとともに世界を見渡せる広い視野を養うよう導いていきたいと考える.