- 著者
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笠野 由布子
三上 章允
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.0079, 2016 (Released:2016-04-28)
【はじめに】変形性膝関節症の発症と進行には,肥満や年齢,職業や栄養の他,下肢のアライメントや筋力等の要因も関与していると考えられている。特に足部や足関節のアライメントは膝関節や股関節に運動学的な代償の連鎖を引き起こし,関節症発症に関与する可能性がある。我々は第49,50回大会において内側縦アーチ高率,外反母趾角と歩行時下肢関節モーメントの相関関係等を解析し,外反母趾角が大きい人ほど歩行時の下肢関節モーメントは低下する歩行様式をとることを報告した。本研究の目的は,横アーチの低下いわゆる開帳足が歩行時の下肢関節モーメントに与える影響を検討することである。【方法】対象は若年健常女性23名(平均年齢21.1±1.6歳)とした。開帳足の指標として足長(mm)に対する足幅(mm)の占める割合によって横アーチ長率(%)を算出した。足幅は荷重立位時の第1趾側中足点と第5趾中足点間の距離,足長は荷重立位時の最も長い足趾先端から踵先端までの距離とし,人体測定器を用いて計測した。歩行解析は,三次元動作解析装置(ANIMA,WA-3000)と床反力計(ANIMA,MG-1090)を用い,被験者任意の歩行速度による裸足歩行を計測した。貼付する反射マーカーは,左右の上前腸骨棘,大転子,大腿骨外側顆,外果,第5中足骨指節間関節の10点とした。得られた床反力垂直成分のデータから,立脚期の2つのピークを第1ピーク,第2ピークと規定し,解析区間を1)全立脚期:踵接地~足趾離地,2)第1期:踵接地~第1ピーク,3)第2期:第1ピーク~第2ピーク,4)第3期:第2ピーク~足趾離地の周期に分類し各区間における平均関節モーメントを算出した。関節モーメントは,三次元解析システムから得られた三平面(矢状面,前額面,水平面)におけるモーメントと総合モーメントを用いた。解析は横アーチ長率と各関節モーメントの相関関係についてPearsonの相関係数を用いて検討した(p<0.05)。【結果】全立脚期および全ての区間で股関節屈曲伸展モーメントは横アーチ長率と負の相関関係をみとめた。また,全立脚期,第1,2期において横アーチ長率が高値であるほど膝関節外反モーメントと総合モーメントが高い値を示した。また,横アーチ長率が高値であるほど,全立脚期,第1,3期の股関節外転モーメントと,全立脚期,第3期の股関節総合モーメントが高い値を示した。その他足関節および膝関節矢状面,水平面,股関節水平面のモーメントに有意な相関関係をみとめなかった。なお,関節モーメントは内部モーメントとして表記している。【結論】横アーチの低い人,つまり開帳足の傾向のある人では,外反母趾における研究と同様に立脚期の矢状面における股関節モーメントを減少させる歩行戦略が用いられていた。しかし,開帳足による影響はそれだけでなく,立脚初期から中期にかけての膝関節内反ストレスと立脚初期と終期の股関節内転ストレスの増大を引き起こしていた。