著者
平賀 一希
出版者
日本地方財政学会
雑誌
日本地方財政学会研究叢書 (ISSN:24367125)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.105-124, 2021 (Released:2022-03-26)
参考文献数
15

本稿では,震災や火山噴火警戒レベル上昇といった自然災害による外生的ショックが自治体の入湯税収に与える効果について,箱根町のデータを用いて実証分析を行う.箱根町においては,全国自治体でもっとも多くの入湯税収を得ているおり,具体的には,2008年1月から5地区別で月次データとして収集している.本稿においては,自然災害ショックとして,直接的な影響として箱根山の噴火警戒レベルが変化したことと,間接的な影響として,東日本大震災による全国的な自粛ムードを通じた影響について検証を行った.2つの自然災害ショックの影響を定量的かつ動学的波及効果を明らかすべく,パネルLocal Projectionという手法を用いて検証を行った.本稿の分析結果より,東日本大震災発生時のショックは大きく,発生時点では,各地域において平均約745万円(5地域計約3725万円)ほど入湯税収が減少し,箱根山噴火警戒レベルショックは約139万円(5地域計約695万円)ほどであった.一方,ショックの持続性という観点で見ると,東日本大震災の影響は2か月ほどで収束している一方,火山噴火の影響については,7か月ほど持続していることが分かった.
著者
平賀 一希 江口 允崇
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究において、政府債務の持続可能性の検証を行うため、動学的一般均衡モデルの枠組みを用いて経済理論ベースに検証する手法の考察を行った。成果としては、①広義の意味での持続可能性がどこまで成立するかを簡単なモデルを用いて説明したこと、②世代重複モデルタイプの動学的一般均衡モデルを用いて、財政安定化ルールと政府債務と経済の両方が安定化するような状況がどのようなときに導かれるかの導出、および③財政安定化ルールを考慮した上での、政府債務の持続可能性の統計的な検証手法の導出の3点が成果として挙げられる。
著者
江口 允崇 平賀 一希
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.141-156, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本稿では,政府消費,公共投資,政府雇用のそれぞれが,経済に与える影響の違いについて分析する。そのために,政府支出の項目を政府消費,公共投資,政府雇用の3つに分けた動学的一般均衡モデルによるカリブレーション分析を行うとともに,そこで得られたインパルス・レスポンスを,1969年から2008年までの日本のデータを使ったVARモデルのインパルス・レスポンスと比較した。 カリブレーション分析とVAR分析の結果は概ね整合的であり,次のような結果が得られた。第1に,公共投資は,消費と投資に対してプラスの効果を持つ。第2に,政府消費は,消費に対してはマイナス効果を持つ一方で,投資に対してはプラスの効果を持つ。第3に,政府雇用は,消費と投資に対してともにマイナスの効果を持つ。これにより,政府支出の増大による景気対策,または政府支出の削減による財政再建は,その内容によってまるで違う効果が現れてしまうことが示された。