著者
花田 敬士 飯星 知博 山雄 健太郎 平野 巨通
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.3773-3782, 2012 (Released:2013-01-18)
参考文献数
45
被引用文献数
3

膵癌早期発見における内視鏡的診断戦略について概説した.従来の診断体系は,腹部US等でスクリーニングされた膵管拡張,膵嚢胞性病変などの間接所見から造影CTなどを用いて“腫瘍性2cm以下の病変”を発見するアルゴリズムであった.一方,近年の報告から早期診断の目標であった腫瘍径2cmの症例はStage III以上の進行膵癌が多く,より長期の予後が期待できるStage Iまでで診断するには腫瘍径1cm以下での拾い上げが求められている.これを実現するには,上述の間接所見を契機に,MRCP,EUSなどを用いて膵管の限局的な異常所見を確認した後,腫瘍の直接描出が可能な症例にはEUS下穿刺吸引細胞組織診(EUS-FNA)を,腫瘍性病変が描出できない症例にはERCPおよび複数回の膵液細胞診を行って診断するアルゴリズムが有用である可能性がある.また,早期診断には危険因子の理解が重要であり,膵癌診療ガイドラインに記載された項目に該当する患者に対する地域病診連携を生かした効率的なスクリーニング体制の整備が求められる.
著者
相原 直樹 田妻 進 大屋 敏秀 初鹿 寿美恵 山下 喜史 堀川 和彦 越智 秀典 寺面 和史 平野 巨通 三浦 弘之 佐々木 雅敏 梶山 梧朗
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.9-13, 1994-02-25 (Released:2012-11-13)
参考文献数
12

大柴胡湯によるコレステロール胆石形成に対する影響を, コレステロール胆石形成モデルを用いて検討した. 雄性ゴールデンハムスターを, 普通食投与群 (N群: n=12), グルコース食投与群 (L群:n=14), 1%大柴胡湯添加グルコース食投与群 (L+D群:n=12) の3群にわけ4週間飼育した後, 胆石出現率, 胆汁脂質, 血清脂質および肝組織中の脂質の差を検討した. コレステロール胆石の出現率は, L群において71%と高率であったが, NおよびL+D群においては胆石形成を認めなかった. 胆汁中の胆石形成指数は, N群0.44±0.28, L群0.85±0.19, L+D群0.43±0.24 と大柴胡湯投与により有意に低下していた. 一方, 血清脂質は, コレステロール, 中性脂肪ともにL群においてN群, L+D群に比し有意に上昇したが, N群, L+D群間に有意の差は認めなかった. 肝組織中の脂質はN群に比べL+D群において遊離コンステロールの低下, コレステロールエステルの上昇, L群においては逆の変化を認めた. 以上より, 大柴胡湯は, 腸管でのコレスデロール吸収抑制, 肝でのコレステロール合成抑制および胆汁酸への異化亢進により, 胆汁中コレステロール飽和度を低下させ, 胆石形成に抑制的に作用することが示唆された.