著者
沼田 義弘 大屋 敏秀 田妻 進 山崎 美保 菅野 啓司 岸川 暢介 山本 隆一
出版者
一般社団法人 日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.219-225, 2015-05-31 (Released:2015-06-19)
参考文献数
17

古くより胆石の危険因子として5F(Forty,Female,Fatty,Fair,Fertile)が知られており,特にFattyの基礎的原因として糖尿病や脂質代謝異常が関与することが報告されている.肥満,糖尿病,脂質代謝異常の急激な増加が指摘されている我が国において,胆石保有者の特徴,胆石形成の背景や危険因子の変化について評価検討されるべきと考えられる.我々は205例の胆石症例を土屋分類に従ってI型,II型,III型の3つの群に分類し,年齢,性別,BMI,血清脂質,血糖,HbA1c,インスリンについて解析した.コレステロール石保有者(土屋I型)の特徴として,1)肥満,2)インスリン抵抗性がみとめられ,多変量解析からは肥満と年齢が有意な危険因子とみなされた.今回の検討結果から,生活習慣にも深く関係する肥満や耐糖能異常の増加は,コレステロール石の頻度を増加させる可能性を示唆するものと考えられる.
著者
田妻 進
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.153-160, 2007-05-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
38

胆石症は消化器疾患の中でも最も頻度の高い疾患の一つであり,日本人の胆石保有率は人ロの高齢化とともに上昇している.胆石保有者数の増加は食生活習慣の変化,特に脂肪摂取量増加と繊維食摂取の減少による胆汁中コレステロール濃度の上昇に起因すると推定されている.また,胆石は女性に比較的多く,その成因として女性ホルモンの関与が推測されている.胆石は胆道に局在する結石であり,その構成成分と存在部位により,背景因子や生成機序が,臨床症状や重症度・治療の緊急性など臨床病態も多彩となる.胆石はその主要構成成分によりコレステロール結石と色素結石に大別され,両者の成因や形成過程も異なる.本稿では,その胆汁成分の肝・胆道における代謝異常とそれに基づく物性化学的変化や,胆道における運動生理機能異常を中心に胆石生成機序を解説する.
著者
相原 直樹 田妻 進 大屋 敏秀 初鹿 寿美恵 山下 喜史 堀川 和彦 越智 秀典 寺面 和史 平野 巨通 三浦 弘之 佐々木 雅敏 梶山 梧朗
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.9-13, 1994-02-25 (Released:2012-11-13)
参考文献数
12

大柴胡湯によるコレステロール胆石形成に対する影響を, コレステロール胆石形成モデルを用いて検討した. 雄性ゴールデンハムスターを, 普通食投与群 (N群: n=12), グルコース食投与群 (L群:n=14), 1%大柴胡湯添加グルコース食投与群 (L+D群:n=12) の3群にわけ4週間飼育した後, 胆石出現率, 胆汁脂質, 血清脂質および肝組織中の脂質の差を検討した. コレステロール胆石の出現率は, L群において71%と高率であったが, NおよびL+D群においては胆石形成を認めなかった. 胆汁中の胆石形成指数は, N群0.44±0.28, L群0.85±0.19, L+D群0.43±0.24 と大柴胡湯投与により有意に低下していた. 一方, 血清脂質は, コレステロール, 中性脂肪ともにL群においてN群, L+D群に比し有意に上昇したが, N群, L+D群間に有意の差は認めなかった. 肝組織中の脂質はN群に比べL+D群において遊離コンステロールの低下, コレステロールエステルの上昇, L群においては逆の変化を認めた. 以上より, 大柴胡湯は, 腸管でのコレスデロール吸収抑制, 肝でのコレステロール合成抑制および胆汁酸への異化亢進により, 胆汁中コレステロール飽和度を低下させ, 胆石形成に抑制的に作用することが示唆された.