著者
花田 敬士 飯星 知博
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.12, pp.2051-2059, 2013 (Released:2013-12-05)
参考文献数
38
被引用文献数
4

近年腫瘍径1cm以内の膵がんは長期予後が期待されると報告されている.従来の診断は,US,造影CTを用いて"腫瘤を拾い上げる"アルゴリズムであったが,小径の膵がんを診断するには"膵管の異常"を捕捉することが重要である.USで間接所見である膵管拡張,膵嚢胞性病変を拾い上げ,次いでEUS,MRCPを積極的に介入させるアルゴリズムの構築,詳細なERCPを応用した複数回の膵液細胞診も重要である.一方,危険因子の理解・啓蒙を基軸とした地域病診連携の推進,USを基軸とした検診の整備,膵がん患者家族の登録制度,非侵襲的なメタボロニクスなどを考慮した,要精検者の効率的なスクリーニング体制の構築も求められる.
著者
菅野 敦 正宗 淳 花田 敬士 真口 宏介 清水 泰博 植木 敏晴 長谷部 修 大塚 隆生 中村 雅史 竹中 完 北野 雅之 菊山 正隆 蒲田 敏文 吉田 浩司 佐々木 民人 芹川 正浩 古川 徹 柳澤 昭夫 下瀬川 徹
出版者
日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.16-22, 2017-02-25 (Released:2017-03-17)
参考文献数
16
被引用文献数
5 3

膵癌早期診断研究会が主導して行った,早期診断された膵癌の実態調査について報告する.40例のStage 0膵癌と119例のStage I膵癌が集積された.膵癌全体に占めるStage 0膵癌とStage I膵癌の割合は約2%であり,Stage 0膵癌は0.6%であった.症状を認めたために医療機関を受診した症例は38例(23.9%)と少なかったのに対して,検診にて異常を指摘され受診した症例は27例(17.0%),他疾患の経過観察中に異常を指摘された症例は85例(53.5%)と無症状で医療機関を受診した症例が多かった.検診にて異常を指摘された27例中,膵管拡張を指摘された症例が19例と画像における副所見の指摘から精査を行った症例が多かった.術前の病理診断では,超音波内視鏡下穿刺吸引法を用いた症例(30.8%)と比較して,内視鏡的逆行性胆管膵管造影下にて病理検体を採取した症例(77.8%)が多かった.予後は良好であったが,14.5%の症例で術後の残膵に膵癌が新たに発生した.今回の調査が,膵癌の早期発見ならびに予後改善に寄与をすることが期待される.
著者
花田 敬士 清水 晃典 南 智之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.4, pp.327-333, 2018-04-10 (Released:2018-04-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1

近年,膵癌早期診断を目指して,地域医療連携を生かした活動報告が散見されている.たとえば,危険因子を複数持つ症例に対し,連携施設で腹部US,採血などを施行,膵管拡張や膵囊胞性病変などを認めた場合,中核施設に紹介,外来で施行可能な画像検査を行い,精査すべきかを判断する.尾道市医師会では2007年から前述のプロジェクトを展開し,5年生存率の改善などの成果が現れ,他地区からも地域の実情に応じた同様の取り組みの結果,切除率の向上や早期診断例の増加などの成果が報告されている.本稿では膵癌早期診断に関して,国内で展開されている地域医療連携を生かした取り組みの現状を概説する.
著者
花田 敬士 飯星 知博 山雄 健太郎 平野 巨通
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.3773-3782, 2012 (Released:2013-01-18)
参考文献数
45
被引用文献数
3

膵癌早期発見における内視鏡的診断戦略について概説した.従来の診断体系は,腹部US等でスクリーニングされた膵管拡張,膵嚢胞性病変などの間接所見から造影CTなどを用いて“腫瘍性2cm以下の病変”を発見するアルゴリズムであった.一方,近年の報告から早期診断の目標であった腫瘍径2cmの症例はStage III以上の進行膵癌が多く,より長期の予後が期待できるStage Iまでで診断するには腫瘍径1cm以下での拾い上げが求められている.これを実現するには,上述の間接所見を契機に,MRCP,EUSなどを用いて膵管の限局的な異常所見を確認した後,腫瘍の直接描出が可能な症例にはEUS下穿刺吸引細胞組織診(EUS-FNA)を,腫瘍性病変が描出できない症例にはERCPおよび複数回の膵液細胞診を行って診断するアルゴリズムが有用である可能性がある.また,早期診断には危険因子の理解が重要であり,膵癌診療ガイドラインに記載された項目に該当する患者に対する地域病診連携を生かした効率的なスクリーニング体制の整備が求められる.