著者
張 蘇平 平野 隆雄 村島 直哉 廣瀬 俊一 北川 龍一 奥村 康
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.300-306, 1991-06-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
10

肝硬変症患者血清中の免疫複合体(IC),とくにC3ネオアンチゲンに結合するC3b結合免疫複合体(C 3b-IC)とiC 3b/C 3dg結合免疫複合体(iC 3b/C 3dg-IC)の産生,およびそのクリアランスに重要な役割を担っている補体リセプター(CR 1), factor Iおよびfactor Hの動態について検討した.肝硬変症患者血漿中において,高率にC 3b-ICが検出されたがiC 3b/C 3dg-lcは正常人,慢性肝炎患者との間に有意な差は認めなかった.また,肝硬変患者において,補体リセプター(CR 1)と血漿factor Hは高値を示したが, factor I値はコントロール群と比較して低値を示した(p<0.01).このことは,肝硬変患者において免疫複合体(IC)の異常産生,そのクリアランスに重要な補体C3カスケードのメカニズムの異常の存在が推測された.すなわち, factor I値の低値による機能不全のためC 3b〓C 3dgへの変換が障害され,それを補うためCR 1, factor Hの産生充進として働いていることが推察される.このように肝硬変患者におけるC3カスケードの異常評価の検討をすすめることは,肝障害時における補体系動態の解析に重要であることが示唆された.
著者
宮内 輝幸 奥村 康 平野 隆雄 片山 仁
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

近年、医療の分野における診断器機はめざましい発展をとげており、とりわけX線CTやDSAなどの開発・改良は著しく、もはやこれらなくしては高度医療が成り立たなくなっているといっても過言ではない。その結果として必然的に水溶性ヨード造影剤の使用頻度が増し、それにつれて多彩な副作用の発生が臨床上重視されている。しかしながらその発生機序についてはすべてが解明されているわけではなく、一部の症状では明らかに何らかのアレルギー反応の関与が疑われるものの、良好な実験モデルが作成できないことなどの理由から、とくに免疫学的機序の研究が遅れている。そこで我々は、今後の研究の展開の一助となることを期待して、実験系の確立すなわち動物(マウス)の免疫方法、抗体産生系の確立および免疫学的検出法の確立をめざし、以下の実験方法を試みた。抗マウス抗体であるDNP-KLHをBALB/cマウスに免疫し、血清中のIgEを増加させる抗体産生系を確立させ本研究に応用した。DNP-KLHを免疫した群と水溶性ヨード造影剤だけで免疫した群、さらに両者を同時に免疫した群にわけて、各群のIgE抗体産生の程度を比較した。抗体検出方法としてはELISA、PCA、FACSを用いた。その結果、1.水溶性ヨード造影剤は免疫反応に直接的には関与しない。少なくとも抗造影剤抗体の存在は否定的であると考えられた。2.しかしながら、水溶性ヨード造影剤の存在下で本来のIgE抗体産生が増強する可能性がある。3.この反応・変化にはインターロイキン(IL-4)が関与していると考えられた。4.現在までのところ造影剤の種類(イオン系と非イオン系、モノマー型とダイマー型)によって免疫反応への影響の仕方に有意差があるかどうかについては断定的な結論は出せない。遅発アレルギーの検討とあわせて今後に残された研究課題と考える。
著者
平野 隆雄
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

自己免疫、SLE、ベ-チェット病には、多彩な神経症状をともなうことが知られている。神経症状を合併するかどうかは、その患者の予後に重要な意味を持っている。近年、抗糖脂質抗体と自己免疫病患者の神経症状との関連性が注目されている。そこで、われわれは、自己免疫病とくに神経症状をともなうSLE、ベ-チェット病患者血清、髄液について抗糖脂質抗体の検出法を開発し、定量をおこないこれと実態・原因の解析を目的として研究を試みた。62年度に抗糖脂質抗体、特に抗asialo GM_1抗体のELISA法、TLCイムノスティンニング法による検出法を開発し、各種自己免疫症患者血清、髄液を定量した結果、CNSーSLE、ニュ-ロベ-チェット病患者血清中に高率に、抗asialo GM_1抗体の存在することが判明した。髄液中には、抗asialo GM_1抗体の存在はほとんど認めなかった。さらにモノクロ-ナル抗asialo GM_1抗体を作成し、患者血清及び髄液中に糖脂質抗原の存在の有無を検討したが、検出できなかった。これは、この検出法の感度や免疫複合体の存在等まだ十分に検討すべき点が残っている。いずれにせよ、神経症状をともなう自己免疫病患者血清中に、高頻度に抗糖脂質抗体の存在することが明らかになった。このアッセイ法を用いてさらに臨床的検討を進めていく次第である。我々の共同研究者が、最近新らたにCNSーSLE血清中に存在する抗糖脂質抗体がリンパ球減少、低補体価、臨床活動性と相関することを見い出した。我々は、シアリダ-ゼ処理したB細胞表面の糖脂質に対する自己抗体がNZBマウスに存在することを明らかにした。これらの研究は全て、糖脂質に対する自己抗体が、自己免疫病の病因、病態に密接に関連することを意味している。今後の研究の発展に期待したい。
著者
山田 古奈木 森 健 入江 誠治 松村 万喜子 中山 勝司 平野 隆雄 須田 耕一 押味 和夫
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.1103-1108, 1998 (Released:2009-04-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1

症例は41歳男性。平成7年10月発症の急性骨髄性白血病(M1)。2回の寛解導入療法に不応であったが,3回目の治療後寛解を得て,平成8年4月HLAの一致した兄をドナーとして同種骨髄移植を行った。移植後好中球数は20日目に500/μlまで回復し,その後さらに増加したが,移植前より合併していた真菌症が急速に悪化し移植後31日目に死亡した。剖検では,全身性真菌症の所見を呈し,心筋刺激伝導系への真菌の浸潤が死亡の直接の原因と考えられた。急性GVHDはみられなかった。剖検時に採取した患部組織の培養より,Aspergillus flavus (A. flavus)が検出され,アフラトキシン産生株であることが判明した。アフラトキシン産生性のA. flavusが臨床検体から分離されたのは本例が初めてである。