著者
府川 昭世
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.103-108, 1980-04-25 (Released:2010-06-22)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

運動の外在・内在フィードバックモデルを言語運動に適用し, 言語課題で熟知度の低いことばの朗読はDAF効果を受けやすく, 練習や語の有意味性によって熟知度が高くなるほど, フィードバックが内在化してDAF効果が小さいであろうと予想して, 実験的検証を試みた.小学6年生の男女60名を均質な3群に分け, W群は単語, NS群は無意味綴り, NSP群は練習した無意味綴りの刺激語を朗読させた.流暢さの指標として1秒当たりの正しいモーラ数〈CMR〉をとり, DAF効果を〈1-DAFのCMR/NAFのCMR〉と定義した.被験者全体では熟知度の高い単語はDAF効果は小さく, 熟知度の低い無意味綴りはDAF効果は大であった.無意味綴りの練習群と非練習群とのDAF効果には, 被験者全体としては有意差がなかったが, 男女間では男子は練習群が非練習群よりDAF効果が有意に大きく, その逆に女子では練習群が非練習群よりDAF効果が小さくなる傾向がみられた.DAF効果には性差があり, 無意味綴り練習群と単語群に有意に認められた.
著者
府川 昭世
出版者
学校法人 三幸学園 東京未来大学
雑誌
東京未来大学研究紀要 (ISSN:18825273)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.99-110, 2012-03-20 (Released:2019-01-19)
参考文献数
18

意識体系の中心的機能として自我を考える分析心理学の立場から、投影描画法によって現れるコンプレックスを概観した。自我の働きを乱すものがコンプレックスである。コンプレックスには中心となる二つの核がある。一つは心的外傷であり、もう一つは普遍的無意識である。投影描画法の一つである樹木画は、無意識的に深い層の自己像が表れるといわれている。樹木画に表現される陰影は、心的外傷とそれに付随する感情を表すとともに、普遍的無意識の元型の一つである影を象徴的に表している。 筆者が出合った小学生・中学生・高校生の樹木画に表現された陰影をコンプレックスの観点から質的に考察する。「健常群」にも陰影のある樹木を描いた描画者は9割いた。「臨床群」の樹木画は、その陰影の濃さと陰影がほどこされる範囲によってコンプレックスの強さを印象づけた。陰影によって象徴される影は、破壊的にも建設的にも働きうることが示された。
著者
大橋 恵 坪井 寿子 藤後 悦子 伊藤 恵子 山極 和佳 府川 昭世
出版者
学校法人 三幸学園 東京未来大学
雑誌
東京未来大学研究紀要 (ISSN:18825273)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.65-75, 2011-03-18 (Released:2019-01-18)
参考文献数
15

本稿では,小学校や教師と,心理学部の教員や学生とを大学が連携,活用し,コンサルテーションを行った実践例を報告する。具体的には,小学校生活において主に社会性のつまずきを抱えている小学校2,3年男児4名を対象に,小集団によるソーシャルスキル・トレーニング(SST)を実施し,その効果を検討した。その特徴として,日常子どもたちが生活している小学校内で行ったこと,子どもたちの様子に応じて内容を適宜変更したこと,プログラム内での行動の変化だけではなく内面的側面や教室での様子の評定など多面的に効果測定を行ったことなどが挙げられる。その結果,SST活動中の行動には,ルール違反や不適切な発声や身体の動きにおいてSST実施前後で改善がみられた。一方,教室内の行動においては,その効果の般化は示されなかった。
著者
府川 昭世
出版者
学校法人 三幸学園 東京未来大学
雑誌
東京未来大学研究紀要 (ISSN:18825273)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-12, 2009-03-20 (Released:2018-12-04)

近年、知的障害はないのに学習がスムーズに進まないとか、集団生活がうまくいかない子どもたちが目立ってきている。発達障害者支援法(平成 16 年 12 月 10 日法律 167)に基づき、文部科学省はこれらの子どもたちを「発達障害児」と考え、特別な支援教育を必要として、全国都道府県に早急な対策を講じるよう通達を出した。「発達障害児」とは、①学習障害(LD)②注意欠陥多動性障害(ADHD)③広汎性発達障害(PDD)などをもつ子どもたちを指しているが、これらの子どもたちは言語障害や運動障害を合併していたり、二次障害として反抗挑戦性障害や行為障害をおこしていたりする。対人関係や社会生活上の失敗体験による不安障害、気分障害、適応障害が並存していることが多い。 筆者が 20年にわたって、地域発達相談・小児科心理臨床・保育園幼稚園小学校カウンセリング・児童養護施設心理相談において担当したケースのうち「発達障害」に該当するのではないかと考えられる代表的なケースの療育について概観し、予後を左右する要因を考察する。