- 著者
-
平部 正樹
藤後 悦子
藤城 有美子
北島 正人
藤本 昌樹
竹橋 洋毅
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.6, pp.412-424, 2021-06-15 (Released:2021-06-25)
- 参考文献数
- 28
目的 私立広域通信制高校の生徒を対象に質問紙調査を行い,通信制高校選択に関わるストレスから生徒を分類し,そのタイプごとに精神健康度に関わる要因を抽出した。方法 私立A広域通信制高校の全国11キャンパスに所属する全生徒3,888人を対象とした。調査期間は2015年10月から2016年1月であった。クラスごとの一斉ホームルーム時に,担任教員が,調査票を直接配付・回収した。調査票は,基本項目,精神健康関連項目,ライフスキル項目から構成されていた。精神健康関連項目については,通信制高校入学前のストレス,入学後のストレス,通信制高校選択に関わるストレスについて,「学業」,「友人関係」,「教師との関係」,「部活動」,「学校行事」,「家庭環境」,「健康状態」,「バイト・仕事」の8領域から尋ねた。精神健康度を計る指標として,Kessler 6(以下,K6)を用いた。結果 2,424人からの有効回答を得た(回収率,62.3%)。通信制高校入学前と入学後のストレスの変化については,男女ともに,「バイト・仕事」領域以外で入学後にストレスが低下していた。通信制高校選択に関わるストレスの8領域の得点により大規模クラスタ分析を行った結果,6群が抽出された。各群におけるK6得点に関わる要因を抽出したところ,すべての群で健康状態が強く関わっていた。加えて,学業ストレス高群,友人関係ストレス高群,家庭・健康ストレス高群については,通信制高校選択の理由となったストレスが,入学後も精神健康度の低さに結びついていた。学校関連ストレス複合群については,友人関係に加え,家庭環境が精神健康度の低さと関連していた。全ストレス高群は,とりわけ学業との関連が強かった。ライフスキルについては,ストレスマネジメントスキルや意志決定スキルの高さが精神的健康度の高さと関わっていた。結論 通信制高校生徒の精神健康度の向上のためには,そのニーズを把握し,そのタイプに応じた支援を行うこと,その際にストレスへの対処と,ライフスキルを伸ばすことが重要であることが示された。今後,通信制高校生徒への支援実践につながることが期待される。