- 著者
-
廣瀬 喜貴
後藤 晶
- 出版者
- 行動経済学会
- 雑誌
- 行動経済学 (ISSN:21853568)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.Special_issue, pp.S19-21, 2020 (Released:2021-03-24)
- 参考文献数
- 9
本研究は,地方公共団体が開示している会計情報は幸福と結びついているのか,を検証するために,各都道府県が開示している財務書類から会計指標を計算し,アンケート調査で得られた幸福度との関連を分析した.本研究の結果は,以下の3点である.第1に,多くの資産形成がなされている都道府県の住民ほど幸福度が高い.第2に,現世代の負担が将来世代の負担よりも相対的に高い都道府県の住民ほど幸福度が低い.第3に,住民一人当たり負債額が大きい持続可能性が低い都道府県の住民ほど幸福度が低い.これらの結果は,これまで伝統的に分析されてきた財政指標のみでは得られなかった結果である.これまで会計情報は財務情報の補足資料として位置づけられてきたが,2017年度から新たに全面適用となった地方公会計基準にもとづいた会計指標は主観的な幸福度と関連しており,会計情報の有用性を示した点が本研究の貢献である.