著者
植田 康孝 廣田 有里

本稿は,音楽業界で起きているAKB48 のWTA(Winner Takes All:勝者の市場独占)状況と至ったメカニズムを分析することを目的とする。ネットワーク外部性,収穫逓増,経路依存性が働かないはずの音楽ソフト市場において,WTA 現象に至ったメカニズムの解明を試みた。解明にあたっては,社会学,人文学,経済学のアプローチを援用した。分析を行った結果,音楽ソフト市場においてWTA 現象が観察された。更に,AKB48 が歌う歌詞のテキストデータにテキストマイニングとコレスポンデンス分析を施した結果,東日本大震災や福島原発事故などの社会危機の状況下,経済的にも社会的にも心理的にも挫折した若者に対して,AKB48 が発する歌詞の中に,「希望」や「ポジティブ」を示す語句が多く含まれ,共起頻度が高いことが観察された。AKB48 は震災以降,歌詞の内容,曲調,支援活動を含めて価値あるシステムとなる「エコシステム」を人々に提供している証左である。
著者
廣田 有里 清野 隆 大内 田鶴子
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.30, 2020-03-15

地縁型コミュニティの重要性が高まっている現在,希薄になったつながりを取り戻す試みが注目されている。そこで本研究では近隣住民ネットワークを構築する方法に注目し,オレゴン州ポートランド市のシティリペアプロジェクトの取り組みについて報告する。シティリペアプロジェクトは,創造的活動を通して人々が集まる場所を作り,つながりを取り戻す活動を行っている。シティリペアプロジェクトは,デザインされた空間自体は簡易的なものであったが,その建設や作成過程にコミュニティが主体的に携わる点に特徴がある。さらに,建設と政策の過程自体が,コミュニティ形成を強く促す効果があることが明らかになった。
著者
大内 田鶴子 玉野 和志 林 香織 鰺坂 学 廣田 有里 小山 騰 ディアス ジム 斎藤 麻人 吉田 愛梨 細淵 倫子 清野 隆
出版者
江戸川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

グローバリゼーション下、地域社会と市民・近隣組織に関する新たな理論枠が必要になっている。本研究は新しい社会に対応する近隣組織について実態を把握し、論点を整理した。1.イングランドでは自治会規模の住民組織が準自治体となっている。2.シアトル市ではボトムアップ式の協議体を設置し、合意形成能力を獲得し、その後政治対立に巻き込まれ機能不全に陥った。3.シアトル近郊の極小自治体の長期存続は、住民の凝集性の維持につとめたこと、コモンズの維持管理を行っていることなどによる。4.個人が情報のコントロール力を持ちつつある現在、ITによる意見交換の仕組みと個人の情報発信のスキルが必要であることが明らかになった。
著者
廣田 有里
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.29, 2019-03-15

個人の庭を開放して公開するオープンガーデンは,コミュニティに活気を与える重要な観光資源として注目されている。庭のオーナーと訪問者がガーデニングという趣味を通じて関係性を築いているが,両者の関係性はまだ「見どころの共有」までには至っていない。一方,オープンガーデンの訪問者に限らず旅行者にとっての満足度に,専門的な知識とコミュニケーションの技術の両方が必要とされる解説活動(インタープリテーション)が重要性を増しているといわれている。また,スマートフォンの保有率が高くなっている現代において,観光地における情報端末の利用は欠かせないものとなってきている。 そこで本研究では,情報端末を用いて庭のオーナーと訪問者の情報量のギャップを埋め,「見どころの共有」をしたうえで,コミュニケーションの促進をはかるWeb サイトの構築を行った。その結果,①訪問者はWeb サイトまたはアプリでの情報提供を希望しており,情報端末がインタープリテーションの役割を果たす可能性は高い,②情報提供のWeb サイトまたはアプリでは360°カメラの映像をもとにし,直感的に使いやすいサイトにする,③提供する内容は,草木の名前や庭の説明とし,その中にオーナーの見どころを合わせて提供できるようにする,④次の庭への地図の機能追加の要望が高いことが明らかになった。
著者
廣田 有里 土屋 薫 林 香織
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.26, 2016-03-15

高度成長期に流山に住居し始めた高齢化が進む旧住民と,「母になるなら流山」というキャッチフレーズで子育てのしやすさを打ち出し,近年,流入してきた子育て世代(新住民)を,双方の持つ社会的資源の交換を促すことによって,魅力的な,まちづくりの担い手となっていくと考え,「ゴーヤ」をツールとして交流させた。本研究で明らかになった点は,①世代間交流のツールとしての「ゴーヤ」の有用性と限界②プログラムに関わる資源に対する重要性の確認不足③プログラム実施結果,関係者が受け取るインセンティブの不平等,である。本研究によって,「ゴーヤ」というツールを用いての世代間交流の場を設けることは可能性の一端は確認されたが,課題が明確になったため,今後の改善がのぞまれる。
著者
植田 康孝 廣田 有里

本稿は,音楽業界で起きているAKB48 のWTA(Winner Takes All:勝者の市場独占)状況と至ったメカニズムを分析することを目的とする。ネットワーク外部性,収穫逓増,経路依存性が働かないはずの音楽ソフト市場において,WTA 現象に至ったメカニズムの解明を試みた。解明にあたっては,社会学,人文学,経済学のアプローチを援用した。分析を行った結果,音楽ソフト市場においてWTA 現象が観察された。更に,AKB48 が歌う歌詞のテキストデータにテキストマイニングとコレスポンデンス分析を施した結果,東日本大震災や福島原発事故などの社会危機の状況下,経済的にも社会的にも心理的にも挫折した若者に対して,AKB48 が発する歌詞の中に,「希望」や「ポジティブ」を示す語句が多く含まれ,共起頻度が高いことが観察された。AKB48 は震災以降,歌詞の内容,曲調,支援活動を含めて価値あるシステムとなる「エコシステム」を人々に提供している証左である。