著者
廣田 有里 清野 隆 大内 田鶴子
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
vol.30, 2020-03-15

地縁型コミュニティの重要性が高まっている現在,希薄になったつながりを取り戻す試みが注目されている。そこで本研究では近隣住民ネットワークを構築する方法に注目し,オレゴン州ポートランド市のシティリペアプロジェクトの取り組みについて報告する。シティリペアプロジェクトは,創造的活動を通して人々が集まる場所を作り,つながりを取り戻す活動を行っている。シティリペアプロジェクトは,デザインされた空間自体は簡易的なものであったが,その建設や作成過程にコミュニティが主体的に携わる点に特徴がある。さらに,建設と政策の過程自体が,コミュニティ形成を強く促す効果があることが明らかになった。
著者
大内 田鶴子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.20-34, 1982-03-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
38

今日まで「都市の類型学」をM・ウェーバーの科学方法論と結びつけて解釈する試みは殆んどなされていない。しかし、ウェーバーがG.フオン・ベローに宛てた手紙と、「古代農業事情」の末尾に付けられた注の内容とに注意してみると、「都市の類型学」は因果帰属の問題と関連をもつように思われる。特に後者は都市比較論についての覚書であり、その方法的手続は論文「文化科学の論理の領域における批判的研究」で展開されている客観的可能性判断と適合的因果帰属の思考図式に対応している。このためウェーバーが都市の歴史的具体的研究を行いながら並行して、客観的可能性判断と適合的因果帰属の方法論的実験と試行錯誤を繰り広げていたことが考えられる。「都市の類型学」の錯綜した構成はその結果であろう。このような観点から「都市の類型学」を方法論的に精査し合せてウェーバーの論理学的な主張を再検討すると次のような諸問題が明らかになる。第一に、「都市の類型学」はウェーバーの歴史学的接近法から独自の社会学的接近法への方法論的転換期に位置づけられる。第二に、右の位置づけの論理的基礎づけをそれが与えるのであるが、客観的可能性判断と適合的因果帰属の思考図式は、「理論」と「歴史」との関係を明らかにし、社会学の理論の性格を理解する上での示唆を与えている。
著者
大内 田鶴子 玉野 和志 林 香織 鰺坂 学 廣田 有里 小山 騰 ディアス ジム 斎藤 麻人 吉田 愛梨 細淵 倫子 清野 隆
出版者
江戸川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

グローバリゼーション下、地域社会と市民・近隣組織に関する新たな理論枠が必要になっている。本研究は新しい社会に対応する近隣組織について実態を把握し、論点を整理した。1.イングランドでは自治会規模の住民組織が準自治体となっている。2.シアトル市ではボトムアップ式の協議体を設置し、合意形成能力を獲得し、その後政治対立に巻き込まれ機能不全に陥った。3.シアトル近郊の極小自治体の長期存続は、住民の凝集性の維持につとめたこと、コモンズの維持管理を行っていることなどによる。4.個人が情報のコントロール力を持ちつつある現在、ITによる意見交換の仕組みと個人の情報発信のスキルが必要であることが明らかになった。
著者
大内 田鶴子

本稿は,東京の下町が,町会を有効に機能させて,コミュニティを発展させた事例の研究である。白河三丁目町会は,認可地縁団体の法的地位を得ている。これは,再開発に付随して登録されたもので,全国の町内会の例にもれず,以前は任意団体であった。それにもかかわらず,同町会は同潤会アパートの再開発に,きわめて大きな影響力を行使し,結果として法的な地位を得るとともに,町会財産の価値を増大させた。関東大震災の被災,東京大空襲の被災を経て成長発展した町内会と住民の活動について報告する。
著者
大内 田鶴子

本稿は,東京の下町が,町会を有効に機能させて,コミュニティを発展させた事例の研究である。白河三丁目町会は,認可地縁団体の法的地位を得ている。これは,再開発に付随して登録されたもので,全国の町内会の例にもれず,以前は任意団体であった。それにもかかわらず,同町会は同潤会アパートの再開発に,きわめて大きな影響力を行使し,結果として法的な地位を得るとともに,町会財産の価値を増大させた。関東大震災の被災,東京大空襲の被災を経て成長発展した町内会と住民の活動について報告する。
著者
大内 田鶴子
出版者
三田社会学会
雑誌
三田社会学 (ISSN:13491458)
巻号頁・発行日
no.14, pp.12-23, 2009 (Released:2009-00-00)

特集: 古書流通から見た地域社会 はじめに1. 神保町と新知識の流入2. 本屋の動向3. 日本橋から神保町へ移行期の諸問題
著者
大内 田鶴子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.513-530, 1999-03-30 (Released:2010-11-19)
参考文献数
25
被引用文献数
1

「自治会」と呼びながら自治の要素の弱まっているのが, 現代の自治会・町内会の特徴である。米国のネイバーフッド・アソシエーションは個人の主体的参加によるボランタリーな組織であるのに対して, 日本の町内会は行政端末的で組織運営の方法も米国と異なるといわれる。このような相違点にもかかわらず, 現代社会の最小単位として住民の日常生活に果たす役割はきわめて類似している。本稿では, 日本の自治会・町内会が, 米国のネイバーフッド・アソシエーションから, 行政参加を促す「草の根レベルの自治の技術」として組織運営上の技術を学ぶために, 近隣団体の規約 (ポートランド市のサンプル・バイローと東海自治体問題研究所編纂のモデル規約) の比較考察を行なった。比較の結果, バイローは合意形成, 調整の公開性, 公平性を確保しようとする手続きの規定に重点が置かれるコミュニケーション型であり, モデル規約の方は「何をどう行うか」を規定している事業執行型であることが明らかになった。モデル規約には合意形成や公平性確保の技術 (広い意味での政治技術) が不足している。日本の近隣団体が自治の技術として, 米国のネイバーフッド・サンプル・バイローから学ぶべき要素は, 1. 活動会員という考え方, 2. コミュニケーション重視, 3. 役員が会員に奉仕する機構, 4. 少数意見の重視である。