- 著者
-
大内 田鶴子
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.49, no.4, pp.513-530, 1999-03-30 (Released:2010-11-19)
- 参考文献数
- 25
- 被引用文献数
-
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「自治会」と呼びながら自治の要素の弱まっているのが, 現代の自治会・町内会の特徴である。米国のネイバーフッド・アソシエーションは個人の主体的参加によるボランタリーな組織であるのに対して, 日本の町内会は行政端末的で組織運営の方法も米国と異なるといわれる。このような相違点にもかかわらず, 現代社会の最小単位として住民の日常生活に果たす役割はきわめて類似している。本稿では, 日本の自治会・町内会が, 米国のネイバーフッド・アソシエーションから, 行政参加を促す「草の根レベルの自治の技術」として組織運営上の技術を学ぶために, 近隣団体の規約 (ポートランド市のサンプル・バイローと東海自治体問題研究所編纂のモデル規約) の比較考察を行なった。比較の結果, バイローは合意形成, 調整の公開性, 公平性を確保しようとする手続きの規定に重点が置かれるコミュニケーション型であり, モデル規約の方は「何をどう行うか」を規定している事業執行型であることが明らかになった。モデル規約には合意形成や公平性確保の技術 (広い意味での政治技術) が不足している。日本の近隣団体が自治の技術として, 米国のネイバーフッド・サンプル・バイローから学ぶべき要素は, 1. 活動会員という考え方, 2. コミュニケーション重視, 3. 役員が会員に奉仕する機構, 4. 少数意見の重視である。