- 著者
-
玉野 和志
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.4, pp.442-458, 2012-03-31 (Released:2013-11-22)
- 参考文献数
- 75
- 被引用文献数
-
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本稿は, 都市社会研究における家族の位置づけとコミュニティ論の課題について明らかにすることを目的としている. シカゴ学派以来の伝統的な都市社会学は, コミュニティにおける具体的な社会過程と社会的ネットワークのあり方に分析の焦点を絞ってきた. しかしながら, さまざまな事情からそのようなコミュニティ論の中に正当に家族を位置づけることができないできた. また, コミュニティ論は定着的な人口のみを対象とし, 移民や都市下層の問題を十分に扱うことができないとされてきた. 他方, 新都市社会学による批判以降, 世界都市論や新国際分業論の興隆に見られるように, グローバル化の進展にともない, 都市研究は大きな転換を迫られている. 資本主義世界経済のもとにある都市社会研究において, 家族やコミュニティ論はどのような観点から扱われるべきなのか. 本稿では, コミュニティをたんにその内部において社会関係が集積している場所と見るのではなく, 資本主義世界経済の中で何らかの位置づけを与えられた都市地域において, 特定の質をもった産業や労働の集積が求められる空間として位置づけることを提案したい. そのことによって家族を, 求められる労働力の再生産を実現する単位として, あらためてコミュニティ論の中に位置づけることができるだけではなく, 家族を形成しないという側面も含めて, 移民や都市下層をコミュニティ論の中心に据えることが可能になると考えられる.