著者
三浦 克洋 藤崎 優次郎 中島 靖之 村上 洋介 柏崎 守 後藤 信男
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.399-409, 1981-06-25

1977年3月から4月に, 系統を維持しているマウスコロニーに呼吸器病が流行し, その臨床観察, 分離ウイルスの性状, 肺の病理組織学的変化, 細菌学的および血清疫学的調査からHVJの単独感染によることが明らかになった. 流行時, 多数の成熟マウスが発病・死亡し, 系統間に死亡率の差異が認められた. 実験室保存血清の抗体調査結果から, 当コロニーでは少なくとも1973年までさかぼのぼる限りHVJの汚染は起きていなかった. いっぽう, 別棟の購入マウスおよび今回の流行が起きた同一棟内のラットコロニーにおいては, すでにHVJによる汚染が生じていた. 流行マウスコロニーでは, 感染と同時に抗体が出現し生残マウスのほとんどは高い抗体価を示した. 流行終息後の1代産仔においては若齢時には抗体が検出されたが成熟時には検出されなかった. 1代産仔およびその後約2年間に生産された6-8世代のマウスには発病も抗体出現も全く認められなかった. このことから, 当コロニーでは流行時の発病マウスの淘汰, 約2か月間の繁殖停止および流行後の生残マウスの免疫獲得により, ウイルスの存続を防止できたものと考えられる. 謝辞: 本研究の遂行にあたって, 家畜衛生試験場国安主税博士, 今村憲吉技官, 日本医科大学鈴木博博士ならびに国立予防衛生研究所中川雅郎, 鈴木映子両博士に御協力いただいたのでここに深謝いたします.
著者
周藤 俊樹 万年 英之 辻 荘一 後藤 信男
出版者
日本動物遺伝育種学会
雑誌
動物血液型蛋白多型研究情報
巻号頁・発行日
vol.1992, no.20, pp.27-31, 1992
被引用文献数
1

著者らは, 実験動物であるウサギ, マストミス, ハムスターから核DNAを精製し, M13ファージDNAの反復配列をプローブとしてDNAフィンガープリントを得た。その結果, 各個体で多数のバンドが検出され, そのバンディングパターンは各個体に特有であった。ウサギの同一個体の肝臓と血液からのDNAを用いて本法を行ったところ, 両者の間に相違は認められなかった。これらの結果より, M13ファージ反復配列を用いる本法のウサギ, ハムスター, マストミス等遺伝的モニタリング法が確立していない実験動物への適用に有効な方法であると考えられる。また, ウサギの日本白色種とニュージーランドホワイト種の交配による親子2組の親子鑑別を行ったところ, F1のバンドは両親のバンドのどちらかに由来していた。
著者
田中 愼 福田 勝洋 後藤 信男 松沢 昭雄
出版者
Japanese Association for Laboratory Animal Science
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.251-255, 1993

1年齢以上のハタネズミの副腎皮質を組織学的に観察し, この種の特徴と性差を検索した。ハタネズミでは皮質全体が雌に比べて雄でより薄く, マウス・ラットと同様であるのに対して, シリアンハムスター・マストミスとは逆であった。雄では束状層が厚く, 網状層が極めて薄く, マウス・ラット・シリアンハムスター・スナネズミと類似しているがマストミスとは逆であった。雌では束状層と網状層が各々外層と内層に区分できた。雌では網状層が厚く残り, 雄と際立った差を示し, マウス・シリアンハムスター・スナネズミ・マストミスと異なっていた。光顕レベルでこの種に特異な付加層はみられなかったが, 雌の網状層内層はこれにあたる可能性が示唆された。ハタネズミの副腎皮質はその食性の特異さからも更に検索を進めるのに値する対象と考えられた。