著者
周藤 俊樹 万年 英之 辻 荘一 後藤 信男
出版者
日本動物遺伝育種学会
雑誌
動物血液型蛋白多型研究情報
巻号頁・発行日
vol.1992, no.20, pp.27-31, 1992
被引用文献数
1

著者らは, 実験動物であるウサギ, マストミス, ハムスターから核DNAを精製し, M13ファージDNAの反復配列をプローブとしてDNAフィンガープリントを得た。その結果, 各個体で多数のバンドが検出され, そのバンディングパターンは各個体に特有であった。ウサギの同一個体の肝臓と血液からのDNAを用いて本法を行ったところ, 両者の間に相違は認められなかった。これらの結果より, M13ファージ反復配列を用いる本法のウサギ, ハムスター, マストミス等遺伝的モニタリング法が確立していない実験動物への適用に有効な方法であると考えられる。また, ウサギの日本白色種とニュージーランドホワイト種の交配による親子2組の親子鑑別を行ったところ, F1のバンドは両親のバンドのどちらかに由来していた。
著者
入谷 明 森 誠 東篠 英昭 山村 研一 山田 淳三 内海 恭三 辻 荘一
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

個体レベルで生体の機能との関連において遺伝子の発現機構を研究する手段として外来遺伝子を受精卵に導入する技術が開発されている。この技術を家畜家禽の受精卵に利用し、育種的改良技術への応用をも期待されるようになった。本研究では、外来遺伝子導入の為の発生学的手法の開発、遺伝子のクローニングとマッピング及び導入遺伝子による発現機構の解析を哺乳動物と家禽を用いて行なう。材料としての卵子の供給を円滑にする為に豚卵母細胞の冷却保存法を試みたが、20℃への感作でも発生能は著しく阻害された。牛や鶏の体外受精法によって、牛卵子では産仔まで発育することが、鶏卵子では精子の進入過程が詳細に明らかにされた。遺伝子導入実験の際の標識となる遺伝子の探索とクローニングが行なわれた。鳥類の性分化を司る遺伝子に焦点をあて、雌から雄への性転換を引き起こす因子の同定と発現を試みる為初期胚に精巣を移植した。その結果性腺は精巣に特有の構造を呈し、未分化性腺に作用して精巣化する未知の物質の存在が知られた。さらにラット肝臓のOTC遺伝子DNAをプローブとして鶏ヒナ肝臓DNAから2種のmRNAを得た。将来このOTC遺伝子を使って遺伝子導入制御機構の変異を解析する予定である。又、ラットを使ってアンギオテンシノーゲン遺伝子の多型の分析から3型の変化が第19染色体上にあることが同定されたので、今後の系統同定やモニタリングへの利用が期待される。ヒト成長ホルモン遺伝子DNAをプローブとしてヤギ下垂体よりcDNAを取り出し、MTプロモーターが置換された構造遺伝子を作り、マウス受精卵へ注入した。マウス卵子への遺伝子導入法を用いた発現機構の解析が、ヒトA-γ鎖とβ鎖の連結遺伝子とヒトプレアルブミン遺伝子で行なわれた。初期発生と成体ではγ遺伝子とβ遺伝子の発現時期が異なり、アルブミン構造遺伝子は肝臓や脳で特異的に発現した。