著者
日本小児歯科学会 有田 憲司 阿部 洋子 仲野 和彦 齊藤 正人 島村 和宏 大須賀 直人 清水 武彦 石通 宏行 松村 誠士 尾崎 正雄 石谷 徳人 濱田 義彦 渥美 信子 小平 裕恵 高風 亜由美 長谷川 大子 林 文子 藤岡 万里 茂木 瑞穂 八若 保孝 田中 光郎 福本 敏 早﨑 治明 関本 恒夫 渡部 茂 新谷 誠康 井上 美津子 白川 哲夫 宮新 美智世 苅部 洋行 朝田 芳信 木本 茂成 福田 理 飯沼 光生 仲野 道代 香西 克之 岩本 勉 野中 和明 牧 憲司 藤原 卓 山﨑 要一
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.45-53, 2019-02-25 (Released:2020-01-31)
参考文献数
18

日本人乳歯の萌出時期および萌出順序を明らかにし,乳歯の萌出に変化が生じているか否かを検討する目的で,全国的に3 か月から3 歳11 か月の小児8,724 名を調査し,以下の結果を得た。1 .男児の乳歯萌出は,A が5 か月-9 か月,A が7 か月-11 か月,B が9 か月-1 歳2 か月,B が9 か月-1 歳3 か月,D が1 歳1 か月-1 歳6 か月,D が1 歳1 か月-1 歳7 か月,C が1 歳2 か月-1 歳8 か月,C が1 歳2 か月-1 歳9 か月,E が1 歳11 か月-2 歳7 か月,E が2 歳0 か月-2 歳11 か月の順だったが,BB 間とD, D, C およびC の間には有意な差は認められなかった。2 .女児の乳歯萌出は,A が6 か月-9 か月,A が7 か月-11 か月,B が9 か月-1 歳1 か月,B が9 か月-1 歳2 か月,D が1 歳1 か月-1 歳7 か月,D が1 歳1 か月-1 歳7 か月,C が1 歳3 か月-1 歳9 か月,C が1 歳4 か月-1 歳9 か月,E が1 歳11 か月-2 歳7 か月,E が2 歳1 か月-2 歳10 か月の順だったが,AA 間,AB 間,BB 間,DD 間,CC 間には有意な差は認められなかった。3 .性差は大部分の歯で認めず,C とC の萌出時期にのみ有意な差を認め,いずれも男児が1 か月早く萌出していた。4 .前回報告(1988 年)に比べて,男児はA, A, C, D の,女児はA とD の,萌出時期が有意に早くなっていることを認めた。
著者
鈴木 康生 真柳 秀昭 福田 理 森主 宜延 西川 康博 田中 晃伸
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.571-582, 2005-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
7
被引用文献数
2

歯科大学・大学歯学部における小児歯科学の教育,障害児歯科の教育ならびに大学(附属病院)における障害児(者)の歯科診療の現状を知る目的から,29歯科大学・大学歯学部を対象にアンケート調査を行った.小児歯科学の教育については,講義学年や講義時間数の設定等は多様化の傾向がみられた.また小児歯科学の講義学年では,4学年が多いが,低学年や複数学年にまたがる場合もみられた.障害児歯科の教育については,9大学で「障害者歯科学講座」等が設置され,他の多くの大学でも授業科目としての「障害者歯科学」が設けられていた.また,小児歯科学の中での「障害児歯科」の教育は,大多数の大学で講義がなされていた.「障害児歯科」の講義内容については,「心身障害児の歯科診療」,「小児疾患と歯科治療」について多くの大学で講義されていた.また,「症候群・先天異常(染色体異常・遺伝性疾患)」はほとんどの大学の小児歯科学の中で講義されていた.大学(附属病院)における障害児(者)の歯科診療の現況については,「障害者歯誌科」等の診療科が設置されているのが22大学であった.また診療科がない場合の受け入れ窓口は,小児歯科,あるいは小児歯科と他科とで担当していた.また小児歯科における障害児の歯科診療は,大多数が15歳以上も対象としており,20歳以上の障害者も対象として診療を行っている大学も多くみられた.
著者
河合 利方 福田 理 中野 崇 磯貝 美佳 中田 和彦 中村 洋 土屋 友幸
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.684-691, 1998-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
34

外傷により脱落した歯を再植し,その予後を良好なものとするためには,その歯根膜の活性の維持が重要な要因の一つであると考えられている。本研究では,歯根膜の活性の維持をするための保存液としてソフトコンタクトレンズ保存液に注目し,その溶液の歯根膜細胞への影響をヒト歯根膜由来線維芽細胞を用い,それまで脱落歯の保存液として有効性が報告されている牛乳と生理食塩水を比較対照とし,短時間低温保存条件下で細胞数,細胞形態の観察から検討を加え,次の結果を得た。1.細胞数の測定3種類のソフトコンタクトレンズ保存液ともに,牛乳のような高い細胞数は示さず,溶液間にも差が認められた。しかし,経日的に細胞数の増加が認められ,作用7日後には牛乳の作用直後より高い細胞数を示した。2.細胞形態の観察牛乳においては,まったく異常所見は認められなかった。3種類のソフトコンタクトレンズ保存液では,生理食塩水と同様な所見を示した。すなわち,作用直後に原形質突起の縮小・球状化・剥離が認めらるものの,作用7日後には回復傾向を示し異常な所見は認められなくなっていた。以上のことからソフトコンタクトレンズ保存液は,脱落歯保存液の第一選択とされている牛乳よりも劣るものの,緊急時の一時保存溶液として短時間低温条件下での有用性を示唆したものと考える。
著者
日本小児歯科学会 有田 憲司 阿部 洋子 仲野 和彦 齊藤 正人 島村 和宏 大須賀 直人 清水 武彦 尾崎 正雄 石通 宏行 松村 誠士 石谷 徳人 濱田 義彦 渥美 信子 小平 裕恵 高風 亜由美 長谷川 大子 林 文子 藤岡 万里 茂木 瑞穂 八若 保孝 田中 光郎 福本 敏 早﨑 治明 関本 恒夫 渡部 茂 新谷 誠康 井上 美津子 白川 哲夫 宮新 美智世 苅部 洋行 朝田 芳信 木本 茂成 福田 理 飯沼 光生 仲野 道代 香西 克之 岩本 勉 野中 和明 牧 憲司 藤原 卓 山﨑 要一
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.363-373, 2019-06-25 (Released:2020-01-31)
参考文献数
17

要旨:日本人永久歯の萌出時期,萌出順序および第一大臼歯と中切歯の萌出パターンを明らかにし,約30 年前と比べて永久歯の萌出に変化があるか否かを検討する目的で,4 歳0 か月から18 歳11 か月の小児30,825 人を調査し,以下の結果を得た。1 .男子の萌出は,1 が5 歳6 か月-7 歳0 か月,6 が5 歳10 か月-7 歳6 か月,1 が6 歳6 か月-7 歳10 か月,2 が6 歳3 か月-8 歳3 か月,6 が5 歳11 か月-8 歳7 か月,2 が7 歳6 か月-9 歳2 か月,3 が9 歳2 か月-11 歳3 か月,4 が9 歳1 か月-11 歳7 か月,4 が9 歳5 か月-11 歳6 か月,3 が9 歳10 か月-12 歳1 か月,5 が10 歳4 か月-13 歳0 か月,5 が10 歳3 か月-13 歳2 か月,7 が11 歳3 か月-13 歳 10 か月,7 が12 歳1 か月-14 歳5 か月の順であった。2 .女子の萌出は,1 が5 歳5 か月-6 歳7 か月,6 が5 歳6 か月-7 歳0 か月,1 が6 歳3 か月-7 歳7 か月,2 が6 歳3 か月-7 歳8 か月,6 が5 歳10 か月-8 歳4 か月,2 が7 歳2 か月-8 歳8 か月,3 が8 歳 8 か月-10 歳5 か月,4 が8 歳11 か月-11 歳0 か月,4 が9 歳1 か月-11 歳1 か月,3 が9 歳2 か月- 11 歳4 か月,5 が10 歳1 か月-12 歳11 か月,5 が10 歳2 か月-13 歳1 か月,7 が11 歳2 か月-13 歳 10 か月,7 が11 歳9 か月-14 歳3 か月の順であった。3 .萌出順序は,男女ともに上顎が6≒1 →2 →4 →3 →5 →7 で,下顎が1 →6 →2 →3 →4 →5 → 7 であった。4 .第一大臼歯と中切歯の萌出パターンは,男子では上顎がM 型77.2%,I 型22.8%で,下顎がM 型29.2%,I 型70.8%であった。女子では上顎がM 型73.4%,I 型26.6%で,下顎がM 型36.7%,I 型63.3%であった。5 .萌出時期の性差は,すべての歯種で女子が早く萌出しており,上下顎1, 2, 3, 4 および6 に有意差が認められた。6.約30 年前に比べて,男子は上下顎4, 5, 6 が,女子は3,上下顎の4, 5, 6, 7 の萌出時期が有意に遅くなっていた。
著者
榊原 章一 中野 崇 加藤 一夫 中垣 晴男 福田 理
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.459-464, 2011-12-25 (Released:2015-03-14)
参考文献数
27
被引用文献数
1

齲蝕は歯垢中の細菌が産生する酸が歯質を脱灰することによって起こる。一方フッ化物は齲蝕予防効果があり,歯垢中に低濃度で常時存在することでそれを発揮する。フッ化物による齲蝕予防効果の1 つに歯垢細菌の糖代謝に対する抗酵素作用があり,菌体外への乳酸などの有機酸の生成を抑制する。本論文ではフッ化物の具体的な効果を解明するため,250 ppmF NaF 溶液を用いた際の,歯垢細菌へのフッ化物の影響を調査した。NaF 溶液で洗口した群を実験群,蒸留水で洗口した群を対照群とし,各群の洗口後,10 分後に10%グルコース溶液にて洗口を行い,更にその後5 分後に歯垢採取を行い,採取した歯垢のフッ化物,乳酸及びグルコースの濃度を測定した。本実験より以下の結果を得た。・実験群では,フッ化物濃度は有意に上昇した・実験群ではグルコース洗口後の乳酸の産生濃度が有意に減少した・実験群ではグルコースの残留量が多い傾向にあった本実験の結果より,フッ化物洗口によってフッ化物イオンが歯垢中に取り込まれ,歯垢細菌の乳酸産生を抑制したことが明らかとなった。しかしながら,NaF 溶液による歯垢中フッ化物濃度の上昇は一時的であるため,今後は歯垢中フッ化物濃度を長時間高濃度に維持する方法について検討が必要である。
著者
福田 理香 松浦 亜紀子
出版者
活水女子大学
雑誌
活水論文集. 健康生活学部編 (ISSN:18807720)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.21-32, 2015-03-31

The purpose of this study is to make a sitting exercise program, which is based on the basic movements of human in a standing position.The points of making this exercise program are as follows : 1. Safety comes f irst, and the exercise intensity is lower than 3 Mets 2. Adopting movements of the three-dimensional diagonal spiral, which is the basic movement pattern in standing position. 3. Relating the sitting exercise program to the improvement of walking movement in the future. The first half is the dynamic stretch named "e-dynamic ROM", which is designed to improve range of movement. The next part, the second half is an aerobic exercise named "e-bics" consists of a dynamic and diagonal spiral movements. This sitting exercise program was named "e-exercise".
著者
福田 理
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.95, no.11, pp.877-878, 1989-11-15
著者
名和 弘幸 山内 香代子 栁瀬 博 岡本 卓真 松野 智子 荒木 麻美 堀部 森崇 藤井 美樹 外山 敬久 藤原 琢也 後藤 滋巳 福田 理
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.426-431, 2016 (Released:2017-06-30)
参考文献数
14

上顎第二乳臼歯の晩期残存と上顎第二小臼歯の異所萌出,上顎前突を呈する11歳9カ月の自閉スペクトラム症男児の治療について報告する.患者の発達指数は,遠城寺式・乳幼児分析発達検査においてDQ:59で,歯科治療に対する協力性は比較的良好であった.患児は5歳11カ月から医療福祉センターの歯科にて,歯科治療への適応向上のために定期的な口腔衛生管理を受けていた.最初の治療計画として,口腔衛生管理のため上顎第二小臼歯を正しい位置へ移動することとした.初期治療が問題なく完了し,患者が矯正歯科治療を希望した場合,上顎前突の治療のために矯正歯科を紹介する予定とした.スプリントを作製し,患者が口腔内に装置を装着できるかどうか確認するため,自宅で装着するように指示した.3カ月後,スプリントの着用時間が長くなったので,固定式矯正装置を作製し口腔内に装着した.7カ月後,上顎第二小臼歯は歯列に移動して,口腔衛生管理が行いやすくなったので,装置を取り外した.咬合誘導は良好な結果であり,患者と両親は上顎前突の改善も希望したので,矯正歯科へ依頼をした.矯正歯科受診時の患者の暦年齢および精神年齢は13歳0カ月と7歳8カ月であった.この症例報告より歯科治療への適応向上ができた自閉スペクトラム症児は,矯正歯科治療を始められる可能性が示唆された.
著者
福田 理明 笹原 弘之 松田 礼 堤 正臣
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.111-115, 2010-01-05 (Released:2010-07-05)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

This study describes a new machining strategy to make regularly aligned geometric pattern by ball-end milling process employing a patch division milling technique. The surface is divided into a lot of triangle patch segments which is machined with helical tool path. It is newly proposed the way to array cutter marks straightly in arbitrary triangle patches. In addition, it is shown that the inclination angle of cutter marks array against the feed direction can be controlled by the appropriate setting of feed per tooth and cross feed for an arbitrary triangle patch. It is shown that the experimental results and simulation results are in good agreement. It is also reported that the well arranged cutter marks arrays are formed on the triangle patches on the spherical model.
著者
福田 理 栁瀬 博 河合 利方 戸田 久美子 中野 崇
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.1141-1147, 1996-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
20

本研究は,ミダゾラム舌下投与鎮静法の小児歯科臨床への応用の可能性を探るための基礎的検討を行った。すなわち,成人ボランティア8名を対象に,ミダゾラム0.2mg/kg舌下投与後の血中濃度および鎮静度の推移,循環・呼吸系への影響,歩行機能の回復過程,副作用について調査し,以下の結論を得た。ミダゾラム血中濃度は,投与30分後に平均71.7ng/mlと最高濃度を示し,鎮静効果が充分期待できる血中濃度が維持されていた。また,投与25分後から60分後にかけて安定した鎮静効果が認められ,投与150分後には全症例が通常の状態に回復していた。歩行機能の回復過程では,投与60分後には全ての症例にふらつきが観察されたが,時間経過と共に回復傾向を示し,150分後に全ての症例で正常な歩行が可能になっていた。循環系・呼吸系の変化では,ミダゾラム投与後,対照値に比べ血圧および経皮的酸素飽和度の低下が認められたが,全て正常範囲内の変化であり,臨床的に問題となる循環系・呼吸系への影響は認められなかった。さらに,経過を観察した全ての過程において重篤な副作用は認められなかった。
著者
福田 理 田中 泰司 柳瀬 博 小野 俊朗 河合 利方 黒須 一夫
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.29-35, 1995-03-25
被引用文献数
7

本学小児歯科外来を訪れた心身障害児のうち,通常のトレーニング実施後も歯科治療に対する協力性が充分得られなかった54名を対象とし,笑気吸入のためのトレーニングに加え,笑気吸入鎮静下で歯科治療に対する適応性を高めるためのトレーニングを実施後,笑気吸入鎮静法下で歯科治療を行い,その臨床効果と発達年齢との関連について検討し,以下の結果を得た.<BR>発達年齢が3歳以上の患児では,本法応用によりその約72%が笑気吸入下で協力的に歯科治療を受け入れることが可能となったのに対し,3歳未満の患児では本法応用によっても約29%が笑気吸入下の歯科治療に適応できるのみで,両者間に統計的な有意差が認められた.<BR>以上の結果より,通常の対応法で歯科治療が困難であった心身障害児のうち,発達年齢が3歳以上に達している患児では,本法を応用することにより,歯科治療を協力的に受け入れるよう行動変容できる可能性の高いことが明らかとなった.
著者
福田 理 高野 貞
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.57, no.674, pp.459-472, 1951-11-20
被引用文献数
11 4
著者
福田 理絵子
出版者
北里大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本年度の我々の研究は、前年度確立したラット頬髭の毛乳頭細胞を使用した、毛乳頭細胞凍結保存法を用いて、臨床の場でも今後この凍結プログラムが使用可能かを見極める事である。その方法としては、頭部腫瘍や瘢痕拘縮修正術を行う際に出る正常ヒト毛乳頭細胞を患者の承諾を得て採取する。正常毛乳頭細胞は少量のため既知の方法にて培養後に使用した。前年度に我々が確立した凍結法に基づき処理した後に、コンピューターフリージングを施行した。ラットに比べ細胞の回収率は低いが保存量としては十分と考えられた。(ラット毛乳頭細胞の場合60〜70%に対しヒト毛乳頭細胞では、50〜60%であった。)解凍後のヒト毛乳頭細胞を培養系に戻すと、2〜3日は正常の増殖過程が認められず、その後正常増殖が開始され細胞数が増加した。これら、凍結保存後のヒト毛乳頭細胞を前年度同様にヒト毛包との共培養の系に移植する予定であったが、同時期に正常ヒト毛包を得る事が出来ず、また毛乳頭細胞も十分な供給量が得られなかったため、共培養は断念した。そこで、我々は解凍ヒト毛乳頭細胞をヌードマウスの肉様膜上に移植した。3体のヌードマウスの計4箇所にそれぞれ移植し観察した。しかし、2箇所移植したヌードマウスは移植後2日目に死亡し、他の2体でも発毛は観察されなかった。本年度の我々の研究はまだこの段階である、今後解凍後のヒト毛乳頭細胞の回収率を上げる必要性があると思われた。得にラットに比べヒトの場合、解凍後の培養系に置いcontaminationを起こす確率が高い、これは手技的な問題もあるがラットにくらべるとヒト毛乳頭細胞の方がcontaminationに弱いとも考えられる。さらにヒト毛乳頭細胞においても共培養の系を試みる必要があり、これらの課題をクリアーした上で臨床試験に移りたいと考えている。