著者
小林 朋佳 稲垣 真澄 軍司 敦子 矢田部清美 北 洋輔 加我 牧子 後藤 隆章 小池 敏英
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.465-470, 2011 (Released:2014-12-25)
参考文献数
20
被引用文献数
3

数字や線画を単独あるいは交互に呼称する課題を通常級在籍中の小学1~6年生207名に行い, ひらがな音読能力との関連を検討した. 数字呼称時間は小学3~4年生まで短縮し続け, 単音音読時間と相関していた. 一方, 線画呼称は学童期の前半で特に短縮変化が目立ち, 以降はゆるやかに変化した. 交互課題はいずれの年齢においても単独呼称より時間がかかったが, エラーがほとんどなく施行できた. 呼称能力はひらがな音読能力と関連性がみられ, 交互課題は単語音読とより強く相関していた. 日本語話者の発達性読み書き障害の病態解明の一助として, 音読異常を持つ小児の数字・線画呼称スピードを今後検討する必要があると思われる.
著者
瀧元 沙祈 中 知華穂 銘苅 実土 後藤 隆章 雲井 未歓 小池 敏英
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.65-75, 2016 (Released:2019-03-19)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究は、改行時に途切れたひらがな単語を音読する際の特徴を、通常音読と比較して検討した。定型発達児と比べて、改行単語の音読潜時が長い(2SD以上)LD児において、発話時間が長いタイプと、発話時間は同程度であるタイプを確認した。ロジスティック分析の結果、2~5文字のひらがな有意味単語の発話時間が通常音読で短い場合に、改行単語の発話時間が短く、音読が効率的になることを指摘した。一方、通常音読の5文字で音読潜時が延長し、標準未達成であったが、改行5文字で音読潜時が短縮し、標準達成を示したLD児を認めた。その中で、改行5文字条件の発話時間が延長した者では、文字―音変換に強く依存した読み方略を選択した可能性が示唆された。これらの者は、改行音読で自己修正を伴う誤反応の増加を示さなかった。自己修正には、概念的準備と音韻的単語が関与するため、これらの者では、改行単語の意味把握が阻害されたことを推測できる。
著者
佐久間 隆介 軍司 敦子 後藤 隆章 北 洋輔 小池 敏英 加我 牧子 稲垣 真澄
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.320-326, 2012 (Released:2014-12-25)
参考文献数
22

コミュニケーション行動の習得にともなう行動変化の客観的な定量評価を目指し, 従来の行動観察法に加えて, 児の頭部方向を二次元平面上に展開する行動解析を行った. 発達障害児4名に, ソーシャルスキルトレーニング (SST) を行い, 前後の行動を比較した結果, ①コミュニケーション行動の増加と, ②ペア活動の相手を中心視野に捉えようとする注目行動の増加が認められた. ヒト位置情報の二次元尺度化は, ソーシャルスキルの治療的介入がもたらす行動における空間的時間的変化の可視化に有用であり, 従来の行動観察法を補う定量評価法の一つとして, 今後の応用が期待される.
著者
小林 朋佳 稲垣 真澄 軍司 敦子 矢田部 清美 加我 牧子 後藤 隆章 小池 敏英 若宮 英司 小枝 達也
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.15-21, 2010 (Released:2016-05-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1

読みの能力の発達を明らかにするため, ひらがな読みに特化した仮名表記の単音, 非単語, 単語, 単文4種類の音読課題を作成し, 通常学級在籍中の児童528名の音読に要した時間, 誤読数を解析した. 時間は全課題とも1年生が有意に長く, 学童期の前半に短縮し, 単音と非単語課題では5年生以降の, 単語と単文課題では4年生以降の変化が少なかった. 単語と単文課題の音読所要時間には強い相関がみられた. 一方, 誤読は全課題で少なく, 最初に読み誤るもののすぐに自己修正されるものや語頭音を繰り返して読むパターンは対象の半数にみられた. 今後は読みのつまずきを有する児童の所見と比較し, 簡便な音読検査としての活用法を検討していきたい.
著者
稲垣 真澄 加我 牧子 矢田部 清美 後藤 隆章
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、通常学級に通う発達性読み書き障害児の学習全般に不可欠な読み書き支援法に関して、認知神経科学的特性を踏まえた上で構築することが目的である。新たに、ひらがな音読検査課題と漢字読み書き課題を開発し、健常小学生の発達変化のデータ集積を行い、発達性読み書き障害診断アルゴリズムを確定した。診断された発達性読み書き障害児の音韻操作能力ならびに語彙能力の把握を行った上で、読み書きの認知神経心理学的モデルにワーキングメモリの要素を加味した支援法を開発し、漢字読み書きの障害例に一定の効果を見いだした。