著者
小長谷 好江 村井 京子 笠井 倫世 岸山 眞理 高羽 ゆかり 豊永 真穂 吉井 理恵子 諸星 浩美 玉内 登志雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.114-120, 2016
被引用文献数
1

当院看護職の離職率は全国平均と比べ高い。看護師確保・離職率の低下を目指し,2012年度日本看護協会主催WLB(ワークライフバランス)推進の取り組みに参加した。当院ではスタディを加えWLSB(ワークライフスタディバランス)として取り組んだ2年間の活動を評価した。WLSB推進委員は①業務改善チーム,②PNS(パートナーシップ看護体制)チーム,③労務管理チームで活動に取り組み,各チームの進捗管理,インデックス調査・満足度調査を実施して不満層の変化を調査した。またリーダー格スタッフを対象に,「WLSB研修コース」を企画運営した。 2か月周期のPDCAサイクルをまわした結果,業務改善目標を達成でき,「ノー残業デイ」の実施率は0%から70~80%へ大幅に改善した。またバースデイ休暇・長期休暇の計画的取得,半日有給の導入で有給休暇取得率も向上した。「WLSB研修コース」の研修生からは,研修を通してやりがいや変革に取り組む面白さを実感できたとの意見もあった。PNSも導入できた。これらの成果は成功体験としてスタッフに認知され,変革に積極的に取り組む風土ができた事を示唆している。WLSB推進活動は,不満要因の減少と満足度の向上により,看護職にとって働きやすい職場環境の構築につながり,ひいては看護職定着の促進に寄与する可能性があると思われる。
著者
藤枝 裕倫 水野 伸二 徳丸 勝悟 日比野 正幸 玉内 登志雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.2306-2311, 2013-08-25
参考文献数
19

症例は39歳,男性.心窩部痛を主訴に近医受診.左上腹部に小児頭大の腫瘤が指摘され当院受診となった.腹部超音波検査では,94×92×111mm大のhigh echoとlow echoが混在した腫瘤が見られた.CT検査では,腫瘤の内部は低濃度と高濃度がモザイク状に混在していた.内部には造影効果は見られなかった.MRIT1強調像では,腫瘍の大半が高信号であり,MRIT2強調画像では隔壁様の構造を伴う高信号と低信号域が混在していた.造影MRI検査では腫瘤背側壁の外縁が造影された.以上より,後腹膜血腫が疑われ,再度問診を行い2カ月前に自転車で転倒し左肘骨折をした既往があると分かった.しかし,後腹膜腫瘍も否定できず開腹手術を行い腫瘤の摘出を行った.病理検査では中心部には変性,壊死に陥った凝血塊を認め,周囲は線維性の被膜で覆われている所見であった.以上よりchronic expanding hematomaと診断した.文献的考察を加え報告する.
著者
矢野 裕基 鈴木 悠子 安本 和正 原田 和彦 玉内 登志雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.68, 2008

<B>〈緒言〉</B>近年地方の医療を取り巻く問題に患者の医療費負担増・地域間格差の拡大などがある。今回,医療福祉制度面での地域間格差を検証することと医療ソーシャルワーカー(以下,MSW)や病院が用いる制度改善の最も有効な手段を検討することを目的に,全国の市町村が実施する重度心身障害者医療費助成制度(以下,助成制度)の現状とその改善手段についてのアンケート調査を2007年11月に実施した。その結果,今後検討するべき課題が明確となったので報告する。<BR><B>〈調査方法〉</B>1,対象 全国120の厚生連病院MSW 2,調査方法 郵送によるアンケート調査 設問(1)から(7)助成制度の内容,設問(8)から(13)制度改善の手段<BR><B>〈結果〉</B>76病院(病院所在地14町56市)より回答(回収率63%)<BR>(1)対象障害の範囲<BR> 1)身体障害 「2級まで対象」 23(33%),「3級まで対象」 38(54%),「心臓や肺,腎臓などの内部障害について対象拡大あり」 20(29%) 2)知的障害 「A判定(IQ35以下)」 38(54%) 3)複合障害その他の対象 「対象範囲あり」 23(32%)<BR>(2)助成方法 「現物給付」 45(64%)<BR>(3)所得制限 「あり」 53(76%)<BR>(4)年齢制限 「あり」 6(9%)<BR>(5)自己負担 「あり」 36(52%)<BR>(6)助成の時効 「あり」 40(63%)〈BR> 時効期限 最短6ヶ月 1 最長5年 4 最多2年 9<BR>(7)助成制度の問題 「あり」 40(68%)<BR> 助成制度のどこが問題か(複数回答)<BR> 「対象障害の範囲」 28(34%)<BR> 「所得制限」 18(22%)<BR> 「助成方法」 17(21%)<BR>(8)MSWの問題解決の実践 「実践あり」 26(63%)<BR> 実際にMSWが多く用いた手段(複数回答)<BR> 「行政担当との直接交渉」 18(32%)<BR> 「個別ケース援助」 17(30%)<BR>(9)MSWの採る最も有効と思う手段<BR> 「地域の患者団体との連携」 9(17%)<BR> 「行政担当との直接交渉」 8(15%)<BR> 「地域の福祉関係者との連携」 7(13%)<BR>(10)病院の問題解決の実践 「実践あり」 8(11%)<BR> 実際に病院が行った手段(複数回答)<BR> 「行政機関への直接交渉」 5(41%)<BR>(11)病院の採る最も有効と思う手段<BR> 「地域の医療関係団体との連携」 21(39%)<BR> 「行政機関への直接交渉」 11(20%)<BR>(12)各県MSW協会の実践 「実践あり」 4(6%)<BR>(13)各県MSW協会の採る最も有効と思う手段<BR> 「制度改正の提言」 19(37%)<BR><B>〈考察〉</B>今回の結果から,全国の助成制度に地域間格差が存在することは明らかである。制度に問題があると感じているMSWも多く,何らかの制度改善に向けたアクションが必要である。しかし,実際にはMSWや病院は制度を改善するために最も有効と思う手段を実践できていない。何故なのか,その理由を探る必要がある。実践を難しくしている要素を明らかにし,今後は地域の患者団体や医療・福祉の関係団体と連携を強化し,共に制度改善を図ることが必要である。各県MSW協会には制度改正の提言など目に見える活動が求められている。各地域の制度はそれぞれの地域の病院や団体が行動を起こさなければ改善は実現しないものと考える。<BR>
著者
山田 雅子 勝山 奈々美 中川 映里 花村 真梨子 諸星 浩美 玉内 登志雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.448, 2011

(緒言)近年、身体拘束を廃止しようと医療機関では拘束廃止の取り組みが増加してきている。抑制には紐で縛る抑制「フィジカルロック」、薬物による抑制「ドラッグロック」、言葉による抑制「スピーチロック」があることを知った。私たちは「動かないで!」等の言葉を、言葉による抑制であるという意識なく患者に使用していることに気付いた。そこで、医療現場で勤務する看護師を対象に言葉による抑制「スピーチロック」について意識調査を行った。(方法)看護師174名に独自で作成したアンケート用紙を用いて実施した。1)看護師の背景、2)スピーチロックの認知度、3)例題の言葉に対する認識の程度、等5項目に対し記入を求めた。(結果) スピーチロックを「知っている」と回答した者は26.6%であった。言い方の変化としてスピーチロックと認識されるのは「ちょっと待って!!」が43.2%であることに対し、「ちょっとお待ちください」が1.9%と、差がみられた。スピーチロックと捉える言葉を「毎日聞く」と回答した者は50%を占めた。(考察)言葉は目に見えないもので、抑制であるという定義づけが難しく、他の身体抑制よりも看護師の認識が薄い。そのため不必要な抑制は行わないように心がけていても、言葉で相手を抑制している現状があることを知った。同じ意味でも言葉を変えるだけで抑制に対しての感じ方も変わってくることがわかり、接遇とスピーチロックは関係が深く、接遇の改善でスピーチロックを減らすことができると考える。看護は人と人とのつながりであり、良い接遇は不必要な抑制を減らし、良い看護につながると、多くの看護師が感じていた。看護の現場ではスピーチロックという言葉に対する認識は薄いが、スピーチロックにならないための対策を考えていく必要がある。