著者
宇佐美 清英 徳元 一樹 猪野 正志 小澤 恭子 木村 透 中村 重信
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.516-520, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
14
被引用文献数
4 5

症例は80歳の男性.頸部回旋後に後頸部痛,右上下肢の麻痺,しびれ感,顔面の感覚鈍麻,喋りづらさがあり,当初,原因として椎骨動脈解離による脳梗塞が強く疑われた.しかし,発症14時間後の頭部MRIで責任病巣を認めず,「顔面の感覚鈍麻」と「喋りづらさ」を神経脱落徴候ではないと判断し,頸髄レベルの病変を疑い,頸部MRIで頸髄硬膜外血腫と診断した.顔面感覚鈍麻の訴えは変動し信頼性に乏しく,喋りづらさは口腔内乾燥によるものであった.脳卒中の疑われる患者が頭痛・頸部痛を訴える場合,稀だが治療が全く異なる頸髄・頸胸髄硬膜外血腫の可能性も念頭におきつつ,正確な神経学的部位診断・鑑別を心がけるべきである.
著者
徳元 一樹 上田 進彦
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.151-157, 2014
被引用文献数
5

症例は68歳男性である.ゴルフスウィング後に項部痛と両肩の脱力を自覚した.意識清明で脳神経系に異常なく両側の三角筋と上腕二頭筋の筋力が低下していた.頭部MRI,頸椎MRIで脳幹梗塞や頸椎硬膜外血腫はみとめず数時間後に両上肢筋力は軽度改善し脊髄震盪と診断された.翌日,高度四肢麻痺を呈し入院した.去痰困難,呼吸筋麻痺も出現し人工呼吸器管理となった.入院後の画像検査で頸髄病変が顕在化し右椎骨動脈は起始部から描出されず血管腔に解離所見をみとめた.一側椎骨動脈解離による頸髄梗塞は後方循環系脳梗塞にくらべると非常にまれだが報告例があり本症例もゴルフによって生じた右椎骨動脈解離が頸髄梗塞の原因と考えた.