著者
細川 恭子 宇佐美 清英 梶川 駿介 下竹 昭寛 立岡 良久 池田 昭夫 髙橋 良輔
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.530-536, 2021 (Released:2021-08-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

18歳男性,右利き.17歳より,視野全体に長く一本の斜線が入り,その上下で視野がずれて見える,両視野の眼前の光景が波状に見える,視野全体に大きな数個の斑状暗点が出現するなど多彩な視覚症状が生じ,その後に体外離脱体験(out-of-body experience,以下OBEと略記)として,“自分の姿を左後ろから見ている状態”が生じた.症状は1時間持続し頭痛が後続した.頭部MRIで両側後頭葉の軽度萎縮を認めた.本症例は多彩な視覚症状とOBEを呈し,部分てんかん発作との鑑別を要したが,症状が多彩で持続が長いことから前兆のある片頭痛と診断し,少量のバルプロ酸が著効した.OBEを伴う片頭痛は稀に存在する.
著者
池田 昭夫 松本 理器 長峯 隆 菊池 隆幸 小林 勝弘 國枝 武治 宇佐美 清英
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

難治てんかん患者の脳内脳波記録への数理モデルの適用や、手術病理標本の解析、動物実験などを通じ、てんかん焦点の脳波バイオマーカーとしてのActive ictal DC shiftsの存在を確立し、てんかん発作における、 神経細胞, 能動的グリア, 受動的グリアの3成分、特に前2者の重要性を明らかにした。また、てんかん発作前状態ではred slow(低周波数帯域活動と高周波律動の共起)がactive DC電位の領域に一致することを明らかにした。一方で、頭皮上脳波での記録の実証により、Active ictal DC shifts、Red slowのバイオマーカーとしての汎用性を明らかにした。
著者
宇佐美 清英 徳元 一樹 猪野 正志 小澤 恭子 木村 透 中村 重信
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.516-520, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
14
被引用文献数
4 5

症例は80歳の男性.頸部回旋後に後頸部痛,右上下肢の麻痺,しびれ感,顔面の感覚鈍麻,喋りづらさがあり,当初,原因として椎骨動脈解離による脳梗塞が強く疑われた.しかし,発症14時間後の頭部MRIで責任病巣を認めず,「顔面の感覚鈍麻」と「喋りづらさ」を神経脱落徴候ではないと判断し,頸髄レベルの病変を疑い,頸部MRIで頸髄硬膜外血腫と診断した.顔面感覚鈍麻の訴えは変動し信頼性に乏しく,喋りづらさは口腔内乾燥によるものであった.脳卒中の疑われる患者が頭痛・頸部痛を訴える場合,稀だが治療が全く異なる頸髄・頸胸髄硬膜外血腫の可能性も念頭におきつつ,正確な神経学的部位診断・鑑別を心がけるべきである.