著者
志田 仁完
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.2_51-2_70, 2018 (Released:2018-09-28)
参考文献数
35

本稿は,2015年第4四半期に実施された企業調査の結果に基づき,対ロシア経済制裁が企業経営に与える影響を検証した.分析は主に次の点を明らかにしている.第1に,企業経営幹部は,経済制裁が自社の経営に与える負の影響を,世界金融危機や欧州ソブリン危機と同程度において深刻な問題として評価している.第2に,金融危機の影響とは異なり,経済制裁の影響の評価には地域差が認められない.
著者
久保庭 眞彰 志田 仁完
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.14-34, 2016-12-25 (Released:2016-12-27)
参考文献数
16

国際的なサプライチェーン・アウトソーシング・垂直貿易の進展による世界的規模の中間財貿易興隆を背景にして,WTO・OECD等の国際機関はこの数年間に共同してグローバル・バリューチェーン論すなわち付加価値貿易論の急成長を先導してきた.粗産出・粗輸出から付加価値への視点転換は,新たな器のもとに,産業連関分析の世界的なルネッサンスをもたらした.この連載では,付加価値貿易論のABC から進んだ応用にいたるまで順次平易に説明する.付加価値貿易論は,専門家の間でも十分に確立した領域ではないので,解説とはいえ,筆者のレンズを通してみた見取図提供の試論であることをあらかじめお断りしておきたい.
著者
雲 和広 森永 貴子 志田 仁完
出版者
岩波書店
雑誌
経済研究 (ISSN:00229733)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.74-93, 2008-01

本調査研究の目的は,帝政ロシア及びソ連・新生ロシアの統計制度・人口統計整備手法を概観すると共に,ソ連崩壊後の新生ロシア領域に基づく人口統計を一次史料に基づいて構築すること,そして帝政ロシア末期から新生ロシアに至るまでの長期的人口動態を把握することにある.先行研究における帝政ロシア期を扱うものとソビエト以降のそれとの間の断絶は大きく,そして原資料に依拠した研究は極めて少ない.最初にロシア帝国における人口統計制度の整備過程に焦点を当て,続いて革命後のソビエト・ロシア,そして新生ロシアの人口統計を見る.主眼を置くのは,(1)一次史料に依拠して100年の期間で獲得可能な限りの統計を揃える,(2)現ロシア連邦の領域への統一を可能な限り試みる,という点である.通史的にロシアの発展を描く上での最も基礎的な情報を揃えることを旨とするものである.The aims of this study are (1) to overview statistical systems and the methods of maintaining population statistics in the Russian Empire, the Soviet Union and the Russian Federation, (2) to provide population statistics in territorial unit comparable to the Russian Federation based on primary materials, and (3) to take a general view of long-term population dynamics from the late Imperial era to the new Russian Federation. The gap between previous researches dealing with population during the imperial periods and that which examines the period after the October revolution is very large, and few studies utilized primary data in investigating population figures of the imperial era.First, this study focuses on the institutional background of maintaining of population statistics in the Russia Empire, and then examines the population statistics systems after the establishment of the Soviet government. In estimating population and collecting archive data, this paper devoted efforts to utilizing primary materials consistently, and to adjusting all the territories in accordance with those of the Russian Federation. Thus, this study provides a fundamentally necessary information for investigating historical development processes in Russia.
著者
志田 仁完
出版者
Japan Association for Comparative Economic Studies
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.49-59,102, 2007-01-31 (Released:2009-12-03)
参考文献数
55

ソ連の強制貯蓄は,実証上の困難や体制転換に伴う議論の中断のため,十分に検討されていない。そのため,その要因として指摘されてきた(1)公式市場の不足,(2)第二市場の存在の有無と完全性の是非,(3)公式市場から第二市場への消費者の行動転換の不十分さ,といった側面は個別的な検討に留まり,統合的には検討されてこなかった。そこで,本稿では,これの要素を統合し,ソ連の強制貯蓄を説明するための筆者独自のモデルを提示する。