著者
志賀 令明
出版者
福島県立医科大学
雑誌
福島県立医科大学看護学部紀要 (ISSN:13446975)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-6, 2014-03

ポストモダンと呼ばれる現代で生活する若者の心理は,それ以前の規律訓練型社会といわれた時代に成長した人とは異なってきているといわれる.最も大きな違いは,わが国における物語性(深層構造)の喪失と,表層主体の現代社会で若者が生きていかざるを得ないというところにある.ここではわが国の時代の変化に伴う文化の変容に焦点をあて考察し,これから看護を志す若い人たちの理解を促し,看護観の形成に寄与したいと考えている.
著者
志賀 令明 本多 たかし
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.492-497, 2007-11-30 (Released:2017-01-26)

21歳から32歳の9名の女性を対象にして,1月経周期に3回の採血と各種心理検査を行い,月経前症候群(PMS)に該当する者を抽出すると同時に,血液成分(エストラジオール,プロゲステロン,ACTH,コルチゾール,レプチン,IL-1β),及び心理検査(PMS調査票,POMS,Y-G性格検査)各項目の検討を行った.採血時の各人の最終月経からの経過日数は1日から37日であった.各人の最終月経からの経過日数を横軸,血液成分,心理検査各項目得点を縦軸にして単回帰分析を行うと,有意な相関が見られたのは,コルチゾール,PMS調査票得点であり,双方とも月経周期が後半になるにつれて上昇した.PMS調査票得点と月経周期との単回帰式から算出した予測値との差に基づき,月経周期20日以上でPMS得点が予測値より高かった者をgroup H(n=4),下回った者をgroup L(n=7)とし比較した.その結果,group Hはgroup Lに比し,IL-1βで有意に高い値を示し,コルチゾール,レプチンで高い傾向を示した.また心理検査でも抑うつ性に関する得点が有意に高い値を示した.特にgroup Hは平均22日目にあたる採血時において,平均15日目にあたるその他の者(n=23)に比し,有意に高いIL-1βを示した.上記から,PMS群と考えられるgroup Hでは排卵周辺に炎症反応が強まり,炎症性サイトカイン濃度が上昇し,それが視床下部-下垂体-副腎皮質系に影響を与えて特有の抑うつ症状を起こさせるだけでなく,レプチンを抑制するコルチゾールの上昇は,レプチン抵抗性を引き起こし高レプチン血症を生じさせると考えた.またIL-1βの上昇はバソプレッシンの分泌亢進を引き起こし水分貯留などの原因になると考えた.上記から,PMSにおいて,排卵ないしは月経そのものを「炎症」ととらえる免疫系のメカニズムの不全を示唆した.
著者
志賀 令明
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.89-94, 2011-06-30 (Released:2017-01-26)

18歳から77歳までの72名の健常女性(平均年齢±1SD:33.5±18.5歳)を対象にして,血液検査と心理検査(Y-G性格検査及びPOMS)を行い,血液成分(ACTH,コルチゾール,IL-1β,TNF-α)と心理検査各因子との関連を検討した.抑うつと関係が深いとされる血漿中IL-1β濃度は,重回帰分析の結果,Y-G性格検査の抑うつ因子得点で有意に説明され,末梢でのIL-1β濃度と性格的な抑うつとの関連性が支持された.このIL-1β濃度とY-G抑うつ性得点が双方とも平均値よりも1SD以上高かったものをgroup H(n=4),その他をgroup L(n=68)として比較すると,group Hはgroup Lに比して有意にコルチゾールとTNF-α濃度が高かった.年齢,身長,体重,肥満度には有意差はみられなかった.他方,対象者全員でのIL-1βとTNR-αには有意な正の相関傾向があったが,TNF-αと心理検査各項目の得点やコルチゾールとの間には有意な相関は見られなかった.上記の結果から,抑うつ傾向の高い者ではこれまで言われてきたようにHPA-axisの亢進が起こっており,併行して血漿中のIL-1β濃度も上昇することが知られた.他方,今回の結果からは,TNR-αと心理検査各項目やコルチゾールとの間には有意な関係性が認められなかったので,抑うつが即TNF-αを上昇させるのではなく,抑うつによって生じたIL-1βの上昇が付随的にTNF-αを上昇させる,ないしは,高コルチゾール血症下での全般的な細胞性免疫や液性免疫の低下が貧食細胞系を活性化させることにより高サイトカイン状態が生じる,ないしは高コルチゾール血症によって生じた糖新生の結果としてのフリーラジカルの上昇がサイトカイン系を駆動することで結果的にTNF-αを上昇させる結果を生み出すのではないかと推測した.いずれにせよ,IL-1βとTNF-αは連動し,TNF-αは血管炎症を促進させることから,抑うつ状態を有する人は動脈硬化などの血管障害に至る危険性が高いことが示唆された.
著者
志賀 令明
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.315-320, 2012-03-31 (Released:2017-01-26)

若年女性の性交疼痛障害の一例が報告された.症例はA市で,双子の妹として生まれたが,その母親によって幼い頃から「性交」を嫌い恐れるようにしつけられた.症例は,A県の郡部出身の男性と結婚したが,彼は「イエ」を継ぐのが当たり前として育ってきており,郡部で,実家の母親と妻と一緒に暮らしたいと考えていた.結婚初夜から症例の性交疼痛障害は始まり,約2年間持続した.カップルカウンセリングが行われ,夫,妻双方ともその実家からの精神的な自立ができていないことが明らかになった.特に症例は,夫により,彼の「イエ」に連れ去られるのを恐れていた.症例の性交疼痛障害は,我が国での伝統的なイエ制度とそれを維持しようとする夫に対する異議申し立てであると解釈された.