著者
池田 真由美
出版者
福島県立医科大学看護学部
雑誌
福島県立医科大学看護学部紀要 = Bulletin of Fukushima Medical University School of Nursing (ISSN:13446975)
巻号頁・発行日
no.15, pp.23-31, 2013-03

資料【目的】産褥早期褥婦の疲労が,イトオテルミー療法により軽減できるかを客観的評価(加速度脈波測定システムを用い心拍変動周波数と心拍変動係数の前後差)と主観的評価(「疲労の自覚症しらべ」の前後差)で明らかにする.【対象】正常な妊娠経過をたどり,A病院で経膣分娩した褥婦34名.【方法】実験デザインは,被験者内比較型のランダム化比較実験(RCT)(イトオテルミー療法(A法)と安静(B法)の繰り返しのない被験者内比較)【結果】産褥早期褥婦の疲労において,イトオテルミー療法の効果を,APG(加速度脈波)による客観的指標と「疲労の自覚症しらべ」による主観的指標から見てみると,「CVa-a%」「全身がだるい」「頭が痛い」「頭が重い」「頭がぼんやりする」「肩がこる」において効果が確認できた.【結語】産褥早期褥婦にイトオテルミー療法を行う事で,皮膚に加えられた触圧刺激(器械的・温度的)により血行改善・筋硬直の軽減・筋弛緩効果が頭部や肩の不快症状の軽減につながり,また,快適温度刺激・香などにより爽快感・壮快感・催眠感など副交感神経機能亢進による心理的効果が表れたと考えられる.
著者
志賀 令明
出版者
福島県立医科大学
雑誌
福島県立医科大学看護学部紀要 (ISSN:13446975)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-6, 2014-03

ポストモダンと呼ばれる現代で生活する若者の心理は,それ以前の規律訓練型社会といわれた時代に成長した人とは異なってきているといわれる.最も大きな違いは,わが国における物語性(深層構造)の喪失と,表層主体の現代社会で若者が生きていかざるを得ないというところにある.ここではわが国の時代の変化に伴う文化の変容に焦点をあて考察し,これから看護を志す若い人たちの理解を促し,看護観の形成に寄与したいと考えている.
著者
三浦 浅子 本多 たかし
出版者
福島県立医科大学
雑誌
福島県立医科大学看護学部紀要 (ISSN:13446975)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.27-36, 2014-03

本研究の目的は,口腔内の衛生状態の判定として目視確認による清潔判定には客観性が乏しいと考えたので,口腔内の唾液のATP値測定の有効性について明らかにすることである。健常者10名で14件について,起床時,朝食・昼食・夕食後,就寝前の歯磨きによる唾液のATP 値の日内変動を分析した。今回の結果では,唾液のATP値は起床時と歯磨き前は低く,歯磨き後は高かったが有意差は認められなかった。しかし,就寝前歯磨き後と翌朝起床時の唾液のATP値には有意差(p<0.05)が認められた。歯磨きによって歯垢面のプラークが吐き出されATP値を高くしていること,うがいの仕方によって食物残渣やプラークが残留していることが考えられた。これらは,唾液に含まれるATP値が1日を通して食事の前後で継時的に変化することを示しており,唾液のATP値ふき取り法は,口腔内の常在菌と食物残渣の両方を測定することができ,口腔内の衛生状態を客観化する簡便な方法として有効であることを示唆した。
著者
加藤 郁子 佐藤 忠 田中 久美子 横山 郁美 大川 貴子
出版者
福島県立医科大学看護学部
雑誌
福島県立医科大学看護学部紀要 = Bulletin of Fukushima Medical University School of Nursing (ISSN:13446975)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-12, 2019-03

【研究目的】精神科病院の看護師が,がんを併発した精神疾患患者に関わる際に感じる困難の実態を明らかにすること.【研究方法】A県の精神科病院に勤務し,がんを併発した精神疾患患者に関わった経験がある看護師・准看護師を対象に,自記式質問紙による実態調査を行った.調査項目は対象者の基本属性,看護ケアの困難感(6要因25項目),がんを併発した精神疾患患者と関わるために必要な教育のニーズ(3要因12項目)である.【結果】分析対象は138名.看護ケアの困難感では,〈患者のセルフケア〉,〈家族による支援〉について70%以上の看護師が難しいと感じていた.がん看護の基本的な知識と精神疾患患者への応用についての教育ニーズでは,80%以上の看護師が必要性を感じていた.【結論】精神看護とがん看護に携わる看護師が情報交換を行い,相談できる体制を作ることが看護ケアの困難感軽減につながると考える.
著者
中山 仁
出版者
福島県立医科大学
雑誌
福島県立医科大学看護学部紀要 (ISSN:13446975)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-9, 2010-03

本論では, 定義文などで用いられるNP is when/where 節(Frustration is when you can't find the car keys. など), および, 一部のNP is if 節の形式を取る表現(The only way she'd believe it is if she heard it from my lips. など) の用法と意味について, 特に語用論的な観点から考察する. 両者は主語NP と従属節が意味的に等価でないにもかかわらず,be動詞によって結び付けられ, 一見等価な関係を持った文として表わされているという点で共通している.これらの表現に対しては一部の文法家から標準的でないとの判断が下され, その意味で例外的なものと見なされてきた.ここでは, 最近の言語資料や辞書記述などを分析することによって, これらの表現が意外にも多く使用され, その使用には特有の効果があること,また,その解釈には語用論的な推論のプロセスが関与していることを明らかにする.
著者
丸山 育子 稲垣 美智子
出版者
福島県立医科大学
雑誌
福島県立医科大学看護学部紀要 (ISSN:13446975)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.47-55, 2014-03

本研究の目的は,2型糖尿病患者の療養生活における信頼とは何かを当事者の視点から明らかにすることである.2型糖尿病患者11名に半構成的面接と参加観察を行った.質的帰納的分析の結果,以下のことが明らかとなった.糖尿病患者は【得体の知れない糖尿病という病気】という感覚をもつ.それによって発する【糖尿病をもつ生活の不確さの自覚】をし,糖尿病をもつ生活の不確さに対応するために信頼するという行為をする.信頼する対象は3つで【自分の糖尿病をケアする自分】【療養行為が反応する糖尿病をもつ体】【糖尿病治療専門家で人である医師】である.【糖尿病の治療への構え】によって信頼する対象への信頼の比重が規定されている.そして,その時々の【自分の糖尿病をケアする自分】あるいは【療養行為が反応する糖尿病をもつ体】のとらえ方によって信頼する対象への信頼の比重が相対的に変化していた.