- 著者
-
恒次 祐子
- 出版者
- 独立行政法人森林総合研究所
- 雑誌
- 若手研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2003
これまでに実験室実験において,生理応答の個人差をパーソナリティで説明することを試み,不安傾向,タイプA型傾向と味覚・嗅覚刺激時の脳血液動態との間に関連がある可能性を見出した。今年度は実験をフィールドに拡大し,実際に生活の場で自然環境と触れる際の生理応答の個人差について唾液中コルチゾールならびに分泌型免疫グロブリンA (s-IgA)を用いて検討した。森林浴実験を国内10箇所で実施した。被験者は毎回異なる男性大学生12名とし,午前中に森林中にて15分間の歩行を行い,午後には同じく森林中にて15分間の座観(椅子に座って景観を眺める)を行った。コルチゾール,s-IgA分析用の唾液は,朝,歩行前後,座観前後,夕方の1日6回行った。また対照として各地で「都市部」実験地を設定し,同じスケジュールで測定を行った。結果として,コルチゾール濃度にはどこの実験地においても明確な日内変動が認められ,主観申告との対応も良く出ていた。一方IgA濃度については主観申告との対応があまり見られず,値の個人差も大きかった。これについて文献的調査を行ったところ,ソーシャルサポート(日常生活で自分をサポートしてくれる人の数等に関する主観申告),タイプA型傾向などによってs-IgA濃度のベースラインが異なるという報告や,ストレスの種類によって視床下部-下垂体-副腎皮質系または視床下部-交感神経系のどちらが刺激されるかが異なり,それにより免疫応答の方向が決定されるという報告があることが分かった。s-IgAについては今後さらに文献的調査を実施し,刺激受容から分泌までの時間や,濃度の上昇・低下の持つ意味を整理する予定である。