著者
東本 有司 伊藤 秀一 山縣 優子 石口 正 慶長 直人
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

正常ヒト気管上皮細胞にアデノウイルスE1Aをトランスフェクションして、トランスフォームすると、炎症性サイトカインや接着因子の発現が増強されることがわかった。一方、蛋白分解酵素阻害物質のSLPIやelafin/SKALPの発現は著明に抑制することも分かり、アデノウイルスE1Aは肺の炎症を増強するとともに好中球エラスターゼなどの蛋白分解酵素による肺障害を増強させて、肺の防御免疫機構を破綻させ、COPDの病態に関係している可能性が考えられた。また、アデノウイルスE1Aは組織のリモデリングに関係するTGF-βやTIMP-1の発現を増強させることも分かった。一方で、アデノウイルスE1Aは肺胞上皮細胞においてNO産生を抑制した。これは抗ウイルス作用をもつNO産生を抑制することでウイルスが組織内に存続(潜伏感染)できるのではないかと考えられた。また、実際のCOPD患者さんとコントロール患者さんを比較すると、血清TIMP-1濃度は増加しており、細胞実験の結果と類似していた。以上の結果から、アデノウイルスE1Aをトランスフェクションした気管上皮細胞は実際の臨床研究の結果とよく一致しており、アデノウイルスE1Aをトランスフェクションした細胞はCOPDの臨床病態をよく反映していると思われる。これは我々が今回行ったCOPD患者の血清中TIMP-1濃度の測定でも裏付けられている。この血清TIMP-1濃度は気道閉塞のバイオマーカーとしても有望であると思われる。以上の結果から、アデノウイルスE1A遺伝子でトランスフォームした細胞から得られた結果はCOPDの病態解明に役立つとともにバイオマーカーの検索などに利用すれば、臨床に応用できる可能性が示唆された。
著者
慶長 直人
出版者
Japan Society of Sarcoidosis and other Granulomatous Disorders
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.13-19, 2001

サルコイドーシスには, 病型や発症頻度に明らかな人種差があり, 古くからヒト白血球抗原であるHLAとの関連が報告されてきた. 近年のヒトゲノム計画の進行に伴い, 疾患感受性遺伝子の研究は新しい局面を迎えつつある. 新たに研究を始める研究者, 知識を深めたい臨床家へ向けて, HLAとの関連性から真の疾患感受性遺伝子を証明することと, HLA以外の候補遺伝子を検討することのための方法論につき, 我々の経験を踏まえ, 現状を報告したい.