著者
佐藤 慎二
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.e00013, 2017 (Released:2019-03-01)
参考文献数
28

抗MDA5抗体は,皮膚筋炎,特にそのサブタイプである典型的な皮膚筋炎の皮疹を呈しながら,臨床的に筋症状がまったくないかあるいはごく軽微な症例である無筋症性皮膚筋炎に見出されたDM特異自己抗体で,対応抗原はウイルス感染における自然免疫での感染防御機構で重要な役割を担っているmelanoma differentiation-associated gene 5(MDA5)である。同抗体陽性例は,臨床上,治療抵抗性・予後不良の急速進行性間質性肺炎を高頻度に併発するという特徴を有する。
著者
志馬 伸朗
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.e00008, 2017 (Released:2019-06-27)
参考文献数
23

人工呼吸器関連肺炎(VAP)はICUにおける最頻の感染性合併症であり,致死率は30%と高い。予防策として,早期の呼吸器離脱,誤嚥を回避する体位や幽門後栄養投与,カフ上部吸引などがある。診断において,気管支肺胞洗浄を用いた侵襲的微生物診断を行うべきかどうか議論が続いている。経験的治療の適切性が予後に関連する因子であるが,その選択において肺炎診療ガイドラインを上手く活用する価値がある。
著者
小松﨑 恵子 中村 陽一
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.e00015, 2017 (Released:2019-06-27)
参考文献数
34

食物依存性運動誘発アナフィラキシーは即時型食物アレルギーの特殊型で,特定の食物摂取と運動等の二次的要因の組み合わせにより蕁麻疹・アナフィラキシー等のアレルギー症状を来すものをいう。本邦の成人発症例で最も多い原因は小麦であり,特に小麦依存性運動誘発アナフィラキシーといわれている。粗抗原である小麦特異的IgEは陽性率が低く,負荷試験にても症状が誘発されなかった場合には診断に難渋するケースもあった。近年,成人小麦依存性運動誘発アナフィラキシーのアレルゲンコンポーネントがω5グリアジンであることが本邦より報告され,特異IgE抗体測定が2010年10月から保険収載されたことで,一般臨床での診断を多いに助けることになった。
著者
貫和 敏博
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.e00023, 2017 (Released:2019-03-01)

自分が生涯の専門とする領域は何なのか?医学はモラトリアムの期間が長いので,いろいろな試行錯誤があり得る。その試行錯誤はまさに個人の人生の姿そのものであるのだろう。「呼吸」と「呼吸器」という言葉を使い分けるのは,私の人生の履歴として,明確に違いがあるからである。「呼吸器」は肺を中心としたhealth and diseaseとして臨床的色合いを持った言葉である。医学を志し,肺の病気を専攻する一般の呼吸器科医にとっては,「呼吸」という用語で,呼吸中枢調節異常や,COPD口すぼめ呼吸などを思い浮かべることだろう。
著者
朝野 和典
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.e00007, 2018 (Released:2019-09-07)
参考文献数
3

日本呼吸器学会の成人肺炎診療ガイドライン2017では,最初に患者を「市中肺炎」と「医療・介護関連肺炎+院内肺炎」の2つに分けて診療を開始する。医療・介護関連肺炎と院内肺炎を一緒にしたのは,この2つの肺炎の患者には人生の最終段階(終末期)の患者が含まれ,個人の意思の尊重を最優先するべきと考えられたからである。人生の最終段階以外の患者に対しては,薬剤耐性菌のリスクの有無と重症度をもとにescalation治療とde-escalation治療の方法を用いて抗菌薬の推奨を示している。
著者
森本 耕三 土方 美奈子 Guo Tz-Chun 宮林 亜希子 山田 博之 慶長 直人
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.e00103, 2020 (Released:2022-10-22)
参考文献数
10

原発性線毛機能不全症候群(PCD)は主に常染色体潜性またはX連鎖性遺伝形式をとる先天性疾患の1つで,気道上皮細胞などに存在する運動性線毛や精子鞭毛の機能的障害を来し,臨床的には副鼻腔気管支症候群の特徴や不妊症,内臓逆位など呈する症候群をいう。気道クリアランスの障害により進行例では気管支拡張の進展により呼吸不全を来す。原因遺伝子はこれまでに40以上が知られており,近年新たな遺伝子異常の報告が続いているが,推測される全遺伝子異常の70%までしかカバーできていないとされている。診断には電子顕微鏡(electron microscopy:EM)検査や鼻腔NO測定など専門的な検査を必要とするため,診断が難しく,多くの患者が未診断の状態にあると考えられている。システマティックレビューから本邦ではこれまで主にEMのみを用いた診断が行われており,その解釈も欧米とは異なることが明らかとなった。われわれはPCD専門外来を開設した。これまでにびまん性汎細気管支炎でマクロライド療法不応例とされていた症例にDRC1の広範囲欠失をもつPCDが存在していることを報告した。アジア人に最適化した遺伝子パネルの開発を含め診断体制の確立により本邦の実態を明らかとし,患者支援活動に繋げることが望まれる。
著者
佐々木 寿 宮田 純 西村 匡司 槇 陽平 田上 陽一 濱川 侑介 君塚 善文 林 伸好 藤倉 雄二 川名 明彦
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.3, no.12, pp.e00093, 2019 (Released:2022-10-22)
参考文献数
12

右上葉の肺扁平上皮癌(cT2aN3M1c stage IVB)と診断した60歳男性に対し,1次化学療法としてペムブロリズマブを投与後,全身倦怠感を認めた。血中好酸球増多,血清コルチゾール値・血清ACTH濃度が検出感度以下であり,迅速ACTH負荷試験でコルチゾール低値であり,反応性の低下を認めた。MRIとCTで下垂体と副腎に明らかな異常所見を認めず,ペムブロリズマブによるACTH単独欠損症と診断した。
著者
工藤 翔二 鄒 大同
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.e00025, 2018 (Released:2019-09-07)

江戸時代,西洋医学はオランダから日本にもたらされた。しかし,幕末には英国人医師ベンジャミン・ホブソンによって中国上海で出版された中国語(漢文)の医書が,訓点翻刻(訓読みのための返り点などを付して印刷)されて,『内科新説』という名の医書として日本で普及していた。今回は気管支喘息について,当時のイギリス医学における理解を紹介したい。和訳は,できるだけ原文(漢文)を残すこととし,鄒大同医師の協力を得た。
著者
工藤 翔二 鄒 大同
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.e00026, 2018 (Released:2020-08-29)
参考文献数
1

江戸時代,西洋医学はオランダから日本にもたらされた。しかし,幕末には英国人医師ベンジャミン・ホブソンによって中国上海で出版された中国語(漢文)の医書が,訓点翻刻(訓読みのための返り点などを付して印刷)されて,『内科新説』という名の医書として日本で普及していた。今回は肺結核について,どのように記述されているかをみることにしたい。和訳は,できるだけ原文(漢文)を残すこととし,鄒大同医師の協力を得た。
著者
谷口 清州
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.2, no.5, pp.e00033, 2018 (Released:2020-10-22)
参考文献数
17

インフルエンザウイルスはヒト世界の感染環のなかでヒトの免疫学的圧力から逃れる方向に連続的に変異し,間断ない感染環と軽症から重症まで広い臨床スペクトルにより,ヒトとの共存においてヒト世界で生存している。一方では動物世界に入ってそこでの感染環で維持されていたインフルエンザウイルスは,再びヒト世界との交差によってヒト世界の感染環に入ると,当初は重症感染が多発することがあっても,再びヒトとの共存の方向に向かっていくものと思われる。
著者
藤倉 雄二
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.2, no.5, pp.e00031, 2018 (Released:2020-10-22)
参考文献数
21

1918年から流行したスペインインフルエンザでは,全世界で4000万〜5000万人が死亡したとされる。当時の資料をみると,特に1918年後半からの流行では致死率が高く,肺炎による死亡が顕著であった。短期間で世界中に拡散し,世界中で多くの被害をもたらしたインフルエンザウイルスは,現代においてreverse geneticsの手法により復元され,多くの知見をもたらしている。
著者
田中 一大
出版者
COSMIC
雑誌
呼吸臨床 (ISSN:24333778)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.e00020, 2017 (Released:2019-04-27)
参考文献数
42

生体を構成する細胞は,さまざまな物理的刺激(メカニカルストレス)に応答して,増殖・分化・形態形成を制御する。近年,物理的刺激が感知された後の応答分子として,Hippoシグナル経路およびその標的因子である転写共役因子YAP/TAZが同定された。Hippoシグナル経路・YAP/TAZは,発生過程で臓器サイズを決定する重要な役割を担う一方で,腫瘍の悪性化にも深く関連している。肺癌においては,YAP/TAZが細胞外基質の硬度に応答して細胞増殖に寄与している可能性が高い。それに対し,悪性中皮腫においてはHippoシグナル経路の破綻が基軸となり,YAPの恒常的活性化を引き起こしている。YAP/TAZの活性化は,細胞外基質の再構築にも関与し腫瘍進展を促進している。