著者
遠藤 秀紀 佐々木 基樹 成島 悦雄 小宮 輝之 林田 明子 林 良博 STAFFORD Brian J.
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.839-843, 2003-08-25
被引用文献数
1 3

ジャイアントパンダの肢端把握時における前腕と手根部の運動を解明するため,遺体を用いて前腕の屈筋と伸筋を機能形態学的に検討した.尺側手根屈筋は発達した2頭をもっていたが,その収縮では尺骨に対する副手根骨の角度が変わることはほとんどないと結論できた.このことは,ジャイアントパンダが物を把握するときに,副手根骨がその把握対象物の支持体として機能していることを示している.また,長第一指外転筋は尺骨と橈骨の双方に発達した起始をもち,前腕の回外筋としても機能していることが明らかとなった.これらの結果から,ジャイアントパンダが橈側種子骨と副手根骨を利用した肢端把握システムを使って食物を口に運ぶ際には,方形回内筋,円回内筋,長第一指外転筋,そして回外筋が,前腕の回内・回外運動に効果的に貢献していることが示唆された.
著者
遠藤 秀紀 小宮 輝之 成島 悦雄 鈴木 直樹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.1153-1155, 2002-12-25
被引用文献数
1 3

コーンビーム型CTスキャンは,遺体から直接的に三次元データを集めることを可能とするものである.筆者らは,ジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)の遺体の頭部を用いて,コーンビーム型CTにより,復構を経ずに直接的に三次元画像を得た.また三次元データからセクションを作ることで,非破壊的に頭部諸断面の観察を行った.得られた結果の要点は以下の2つである.1)三次元画像から咀嚼筋と下顎骨の形態学的関係を示すことができた.側頭窩の吻外側において下顎骨の筋突起の位置を認識することができた.2)三次元データから断面像を作ることで,鼻腔内を詳細に観察することができ,鼻甲介の発達が確認された.また鼻腔後部,嗅球の吻側領域には複雑な構造を備えた篩骨迷路が観察された.これらのデータは同種が繁殖期に交尾相手を見出す上で重要と推測される嗅覚機能の議論にも有効と考えられる.