著者
木下 学 金村 米博 成田 善孝 貴島 晴彦
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.4-10, 2022 (Released:2022-01-25)
参考文献数
15

神経膠腫診療における放射線画像の役割は大きく, 放射線画像で神経膠腫の分子診断を行おうとする研究は年々盛んになっている. 本稿では直近10年でこの分野においてどのような研究成果があったのかを①神経膠腫のradiomics研究, ②T2-FLAIR mismatch signの発見, そして③定量的MRIへの期待という3項目に分けて説明し, 神経膠腫の放射線画像による質的診断がどのように発展してきたか, あるいは現状ではどのような問題点が指摘できるのかについて理解することをめざす.
著者
有田 英之 市村 幸一 山崎 夏維 松下 裕子 成田 善孝
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

神経膠腫は成人悪性脳腫瘍の中で最も頻度の高い腫瘍である。同一の診断でも様々な経過を示すため、より詳細に臨床経過を反映した分類が可能なバイオマーカーの探索が望まれてきた。我々は、近年の神経膠腫の遺伝子解析で発見されたテロメア関連遺伝子、特にTERTに着目し、国内のコホートを用い、臨床経過との関連を詳細に検討した。TERTのプロモーター変異は、従来本腫瘍で予後因子として知られていたIDH1/2やMGMTと組み合わせることで、神経膠腫をより詳細に分類することができることを明らかとした。
著者
大野 誠 成田 善孝
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.82-90, 2018 (Released:2018-02-25)
参考文献数
31

グレード2・3神経膠腫はWHO2016分類ではIDH遺伝子変異と1p/19q共欠失の有無に基づいて分類されるようになった. グレード2・3神経膠腫は緩徐であるが直線的に増大し, 悪性転化をきたす. 早期手術および手術摘出率を上げることは生存期間延長に寄与する可能性があるが, 手術のみでの腫瘍制御には限界があることも留意する必要がある. グレード2・3神経膠腫に対する放射線治療は重要な役割をもつが, 治療から長期経過後の高次脳機能障害が問題である. 近年化学療法による生存期間延長効果が示され, 現在欧米および本邦において適切な化学療法を検討する臨床試験が進行中である. 今後は, 分子遺伝学的な解析が進み治療効果を予測するバイオマーカーの同定や新規治療の開発が行われ, 治療成績が改善することが期待される.
著者
山澤 恵理香 大野 誠 里見 介史 吉田 朗彦 宮北 康二 高橋 雅道 浅野目 卓 里見 奈都子 成田 善孝
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.27-32, 2019 (Released:2019-01-25)
参考文献数
12

Multinodular and vacuolating neuronal tumor of the cerebrum (MVNT) は比較的新しい疾患概念のため, 長期観察された報告は少ない. 今回われわれは再発なく5年経過した自験例と, これまでに報告された31例を対比しながら, MVNTの画像所見・治療経過をまとめた. これまでのところ年齢中央値は41歳であり, 男女差はない. 病理組織のみでなく画像上も結節を認めるものが約半数存在した. MVNTの症候性てんかんは手術により改善することが多い. これまでのところMVNTの悪性転化は報告されておらず, MVNTの予後は良好である.
著者
沖田 典子 成田 善孝
出版者
The Japanese Congress of Neurological Surgeons
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.46-58, 2014
被引用文献数
2

悪性脳腫瘍の臨床試験におけるエンドポイントは, 治療開始からの全生存期間や無増悪生存期間が一般的に用いられる. 神経膠腫の中でも最も予後の悪い膠芽腫に代表される悪性脳腫瘍の病態の本質は, 神経学的な悪化による日常生活機能の低下である. 神経膠腫患者でも長期生存患者が増えるにつれ, 生存期間の延長だけではなく, 「いかによく, 長く生きるか」を評価する必要がある. 悪性脳腫瘍の手術・放射線治療・化学療法による認知機能や健康関連QOL (health-related quality of life : HRQOL) の低下が問題となっているが, 悪性脳腫瘍についての研究は国内ではいまだ不十分である. 国内における悪性脳腫瘍についてのQOL研究を確立するために, QOL研究の評価法について解説し, 研究論文のレビューを行った.
著者
成田 善孝
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.184-191, 2012-03-20
参考文献数
36

日本における原発性脳腫瘍の頻度は,人口10万人あた14.1人(男性11.6人,女性16.4人)と報告されており,米国の10万人あたり19.3人という数字とほぼ同じであることが2011年に初めて明らかになった.発生頻度も,(1)髄膜腫(36.8%),(2)神経膠腫(19.5%),(3)下垂体腺腫(17.8%),(4)神経鞘腫(9.9%),(6)中枢神経系悪性リンパ腫(3.6%)と,米国における頻度と同じである.グリオーマの年間の発生頻度は国内ではおよそ4,000〜5,000人程度と推定される.グリオーマは希少癌ではあるが,この40年間にグリオーマを含む悪性脳腫瘍の予後は改善したものの,依然として膠芽腫の治療成績は5年生存率が10%以下で,あらゆる癌の中でも最も予後不良である.予後が不良の原因のーつは使用できる薬剤が少ないことである.国内でのグレード2の神経膠腫に対する標準治療は手術+放射線治療で,グレード3・4の神経膠腫に対しては手術+放射線治療+テモゾロミドの投与であるが,照射の方法,照射量,化学療法プロトコールなどさまざまな治療が国内で行われている.神経膠腫の治療成績を改善するために,脳外科医はこれまでに蓄積されたエビデンスを理解して治療にあたることが必要であり,国内外で行われるさまざまな臨床試験を迅速に行うことも重要である.