著者
鈴木 庸平
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.186, 2015 (Released:2015-09-03)

大陸地殻に花崗岩は広く分布し、花崗岩の亀裂を流動する地下水は、冷却過程での熱水活動や海進・海退等の影響をうけて変遷する。最終氷期以降の氷河融解と隆起により、淡水と海水が深部まで浸透した北欧の花崗岩体では、還元的地下水中でウランが高濃度で検出され、その要因は明らかでない。日本最大級のウラン鉱床が東濃地域で約1000万年前に形成したが、花崗岩中で大規模にウランが移動した要因についても明らかではない。東濃地域は1800から1500万年前にかけて、水深が200メートルに至る海進を経験し、花崗岩の亀裂中で当時の海水から沈殿した炭酸カルシウムが充填鉱物として保存される。地下水中でのウラン濃度の変動を復元することを目的とし、瑞浪超深地層研究所の深度200 mの掘削孔から、炭酸塩脈が発達する花崗岩コア試料を採取し、微量な炭素酸素安定同位体測定とナノスケールでの鉱物解析を行った結果について発表する。
著者
元川 竜平 遠藤 仁 横山 信吾 西辻 祥太郎 矢板 毅 小林 徹 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.190, 2015 (Released:2015-09-03)

福島第一原子力発電所の事故により環境中へ放出された放射性セシウムが、福島県を中心に広範な地域に対して環境汚染をもたらした。放射性セシウムは、水を介して拡散し、土壌に吸着しているが、その中でも特に風化黒雲母・バーミキュライトといった特定の粘土鉱物に濃縮され、強くとり込まれることが明らかにされている。そこで我々は、X線小角散乱(SAXS)法を用いて、バーミキュライト・風化黒雲母/セシウム懸濁液の構造解析を行い、セシウムイオンの吸着に伴う粘土鉱物の構造変化を明らかにした。
著者
髙島 千鶴
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.169, 2015 (Released:2015-09-03)

温泉成鉄質沈殿物は先カンブリア紀に形成された縞状鉄鉱層(BIF)と組成的・組織的に非常に類似しているため,BIFのモダンアナログとしてのポテンシャルが高い.入之波温泉の鉄質沈殿物に見られる縞状組織は炭酸塩鉱物の基質と上方に向かって枝分かれしたフィラメント状鉄水酸化物で構成されている.鉄質沈殿物から中性環境で生息する鉄酸化細菌や他の生育するために溶存酸素が必要な独立栄養化学合成細菌が検出された.おそらく,これらの微生物群集の競争により縞状組織が発達したと考えられる.奥々八九郎温泉の鉄質沈殿物にも縞状組織が認められ,鉄酸化細菌とシアノバクテリアが検出された.奥々八九郎温泉水には溶存酸素を全く含んでおらず,おそらく奥々八九郎温泉の鉄質沈殿物は,シアノバクテリアの光合成により発生した酸素を沈殿物表面で鉄酸化細菌が利用することにより,沈殿したと考えられる.
著者
渋谷 岳造 上野 雄一郎 小宮 剛 西澤 学 北島 宏輝 山本 伸次 齋藤 拓也 松井 洋平 川口 慎介 高井 研 吉田 尚弘 丸山 茂徳 ラッセル マイケル
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.49, 2015 (Released:2015-09-03)

原生代前期には赤道域まで海洋が凍結したという全球凍結イベントがあったとされている。全球凍結の原因については、様々な仮説が提唱されているが、地質記録に基づく大気CO2分圧の推定からはCO2がそれ自体で地球を温暖に保つために不十分だったのかどうかが明らかになっていない。そこで、本研究では南アフリカ、トランスバール超層群のオンゲレック累層 (全球凍結時に海水中に噴出した玄武岩質安山岩) の地質調査・試料採取を行い、海洋底玄武岩の空隙を埋める熱水性石英に含まれている流体包有物の分析を行った。その結果、初生的流体包有物のCO2濃度は5.5 mmol/kg以下であることが明らかになった。また、計算の結果、大気CO2分圧は現在の約21倍以下であり、海水温を氷点温度以上に維持するのに必要なCO2分圧よりも低いと推定された。したがって、原生代前期全球凍結時の大気CO2分圧はCO2の温室効果だけで地球を温暖に保つには不十分であったことが地質記録から初めて明らかになった。
著者
賞雅 朝子 サフー サラタ クマール 中井 俊一 新江 秀樹
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.173, 2015 (Released:2015-09-03)

福島第一原発事故由来の放射性物質のうち、ウランやプルトニウムなどのα線核種についての挙動を理解するため、マルチコレクター型ICP-MSを用いて、高精度なウラン同位体比測定を行った。MC-ICP-MSでの高精度分析には、ウランの分離が必須であるため、U-TEVA樹脂による2回の分離方法を採用し、鉄などの妨害元素の除去を行いながらウランを分離した。 土壌中のグローバルフォールアウトによるウランと比較するため、福島第一原発事故以前の沖縄、神戸の土壌試料を測定した。福島第一原発付近(30km以内)の試料は、空間線量率が大きい試料を12試料測定し、235U/238U比および234U/238U比から土壌中の原発由来のウランの寄与を観察した。
著者
神林 翔太 張 勁 柴沼 成一郎 成田 尚史
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.181, 2015 (Released:2015-09-03)

福島第一原子力発電所事故により飛散し,陸上に沈着した放射性セシウム(Cs)は水・物質循環に伴う移動で海洋へ移行するため,今後は海洋への移行予測が重要になる。水・物質循環の経路において,汽水域は河川水と海水の混合領域であり,塩分の急激な変化に伴う吸着・溶脱等により化学物質の濃度が大きく変化するため,海洋への移行を考える上で汽水域での放射性Csの動態把握は重要である。しかし,先行研究では大河川や沿岸域での動態把握に留まり,汽水域での挙動は明らかにされていない。本研究では,汽水域での放射性Csの動態を把握し,「河川-汽水-海洋」の系における移行挙動を明らかにするため,幅広い塩分変動をもつ海跡湖「松川浦」において現場観測を行った。
著者
天羽 美紀
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.285, 2015 (Released:2015-09-03)

東部南海トラフ海域でのメタンハイドレート(MH)の成因を明らかにするために、MH濃集帯を含むコア試料のバイオマーカーを分析し、培養実験によるメタン生成及び酸化活性評価試験、堆積物の遺伝子解析、及び堆積盆シミュレーションの結果との比較を行うことによって、メタン生成ポテンシャルを評価した。メタン生成菌のバイオマーカーと考えられるPMI(2,6,10,15,19ペンタメチルイコサン)の炭素同位体比からPMIの起源がメタン生成菌由来であることが示唆された。PMIの濃度はMH濃集帯で高く、培養実験によるメタン生成及び酸化活性評価試験、堆積物の遺伝子解析の結果及び堆積盆シミュレーションの結果と調和的であった。これらの結果から、MH濃集帯を含む深い深度においてメタン生成活性が活発であった可能性が示唆された。