著者
斉藤 耕二
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.121-127, 1978-02-15 (Released:2010-11-26)
参考文献数
9
被引用文献数
4 4

視覚的媒体を利用して, 対象者についての刺激情報を示した際のパーソナリティ判断における規定要因を明らかにするために, 被験者の性, メガネ, 呈示, 対象者の性を要因として25尺度 (特性) について評定されたパーソナリティ判断について分散分析を行なった。その結果メガネをかけることによってかけていない場合より知能が高く判断されることが, これまでこうした事実が明らかにされている諸国と文化的背景を異にするわが国でも見出された。メガネをかけた場合に知能が高く判断されるのは, 対象者についての情報が不十分な条件下に限定されるというArgyleの理論を, メガネ要因と呈示要因の交互作用として検討した結果, 支持する事実を見出すことができなかった。またメガネをかけることの効果が, 知能のみでなく他の多くのパーソナリティ特性におよぶであろうという予想は, メガネ要因が半数を越す多くの尺度で有意であったことによって支持されている。このことよりメガネをかけている, いないによって知能をふくめて数多くの特性についての判断が異なってくることが明らかになった。メガネをかけることのパーソナリティ判断への効果が, かける人の性によって異なるのではないかという予想と一致する有意な効果は, 25尺度中わずか1尺度で見出されただけにすぎず, 実験的条件のもとでのパーソナリティ判断では, メガネ要因と対象者の性要因の交互作用は大きな効果をもつものではなさそうである。
著者
中西 晃 赤堀 侃司 野田 一郎 木村 達明 斉藤 耕二 藤原 喜悦
出版者
東京学芸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

1.帰国子女の文化的アイデンティティの形成に関する調査研究現在は社会人として活躍しているかっての帰国子女が, 自分の青少年時代の異文化体験をどう評価し, それが現在の個人の人格形成にどのような関わりがあるかを調査研究した.(1)研究の手法 青少年時代に海外で生活し, 現在は社会に出ている異文化体験者に対し, 質問紙法及びインタビューによって調査を行った. 質問紙法では同年代の未異文化体験者を統制群とし, 比較検討を行った. (2)研究の成果 (1)職業, (2)余暇, (3)友人, (4)職場, (5)父母, (6)結婚, (7)人生観・人格, (8)異文化体験の影響の8項目にわたっての調査を統計的に分析した結果, 当初想定していた程ではなかったものの, 異文化体験群と統制群とではそれぞれの項目について有意な差が検出された. 面接法によっての調査からも, 個人の人格形成にとっては異文化体験はその成長を促すものであり, プラスの関与があったことが伺えた.2.帰国子女の国際感覚に関する意識の調査研究帰国子女の国際感覚が一般生とどのように異なるかを対比することによって, 帰国子女の国際感覚の特質を明らかにする調査研究を行った.(1)研究の手法 帰国子女のうち, 中・高校生を対象に質問紙法による調査を行った. 同年齢の一般の生徒を統制群として比較検討した.(2)研究の成果 (1)日本の印象, (2)外国語, (3)差別, 偏見, (4)生活習慣, (5)個性, (6)将来・進路の5つの内容について統計分析の結果, 帰国生と一般生の間には各内容に有意差が見られた. 帰国生には外国語・差別偏見に対する意識, 海外での進学・就職志向に顕著な特徴が見られた. また, 帰国前の日本の印象, 生活習慣の変容, 周囲に合わせる傾向から, 帰国生の日本への適応の様子の一端を窺うこともできた.