著者
高嶋 敦史 中西 晃 森下 美菜 阿部 真 小高 信彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>沖縄島やんばる地域の亜熱帯林において、樹洞はケナガネズミやヤンバルテナガコガネなどの希少野生生物も利用する重要な生態学的資源である。そこで本研究では、やんばる地域の非皆伐成熟林2箇所に試験地(面積0.36haと0.25ha)を設け、胸高直径(DBH)15cm以上の幹を対象にDBHと樹洞の発生状況を調査した。なお、樹洞は立木の幹、枝、根に発生している奥行き10cm以上の穴と定義した。調査の結果、試験地内の立木の第一優占種はイタジイで、それに次いでイスノキやイジュが多かった。イタジイの樹洞を有する率(以下、樹洞発生率)は全体では22%であったが、DBH40cm以上では52%に達するなど、DBHが太くなるほど樹洞発生率が高くなる傾向が確認された。イスノキでも同様にDBHが太くなるほど樹洞発生率が高くなる傾向が確認されたが、樹洞発生率は全体で52%、DBH30cm以上では77%、同40cm以上では90%となっており、イタジイと比べてより細い幹でも高い樹洞発生率を呈していた。その一方、イジュにはまったく樹洞が発生していなかった。このように、樹洞発生率はDBHが太くなるほど高くなる傾向があるものの、樹種間による違いが大きいことが明らかになった。</p>
著者
中西 晃 東 若菜 田中 美澄枝 宮崎 祐子 乾 陽子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.125-139, 2018 (Released:2018-08-02)
参考文献数
133

林冠生物学は、生物多様性や生態系機能が局在する森林の林冠において、多様な生物の生態や相互作用、生態学的な機能やプロセスの理解を目指す学問である。林冠は高所に存在し複雑な構造を有するため、林冠生物学研究の飛躍的な進展は1980年代以降の林冠アクセス手段の発達に拠るところが大きい。様々な林冠アクセス手段の中でも、ロープテクニックを駆使して樹上にアクセスするツリークライミングは道具を手軽に持ち運べることから移動性に優れ、対象木に反復してアクセスすることが可能である。また、林冠クレーンや林冠ウォークウェイなどの大型アクセス設備に比べて経済的であるという利点が活かされ、林冠生物学研究に幅広く適用されてきた。近年では、ツリークライミングの技術や道具の発展によって安全性や作業効率の向上が図られており、今後ますます活用されることが期待されている。本稿では、ツリークライミングを用いた林冠生物学の研究例を紹介しつつ、樹上調査における林冠アクセス手段としてのツリークライミングの有用性を示す。さらに、ツリークライミングを用いた林冠生物学研究の今後の展望および課題について議論する。移動性、経済性、撹乱性に優れたツリークライミングは、場所の制限を受けないため、あらゆる森林での林冠生物学研究において今後も重要な役割を担うと考えられる。また、他の林冠アクセス手段や測定機器と併用することでさらなる進展が期待される。一方、安全かつ有効なツリークライミングが普及するためには、研究調査以外の領域も含めたツリークライミング・ネットワークの形成と情報共有のためのプラットフォームづくりが急務である。
著者
中西 晃 赤堀 侃司 野田 一郎 木村 達明 斉藤 耕二 藤原 喜悦
出版者
東京学芸大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

1.帰国子女の文化的アイデンティティの形成に関する調査研究現在は社会人として活躍しているかっての帰国子女が, 自分の青少年時代の異文化体験をどう評価し, それが現在の個人の人格形成にどのような関わりがあるかを調査研究した.(1)研究の手法 青少年時代に海外で生活し, 現在は社会に出ている異文化体験者に対し, 質問紙法及びインタビューによって調査を行った. 質問紙法では同年代の未異文化体験者を統制群とし, 比較検討を行った. (2)研究の成果 (1)職業, (2)余暇, (3)友人, (4)職場, (5)父母, (6)結婚, (7)人生観・人格, (8)異文化体験の影響の8項目にわたっての調査を統計的に分析した結果, 当初想定していた程ではなかったものの, 異文化体験群と統制群とではそれぞれの項目について有意な差が検出された. 面接法によっての調査からも, 個人の人格形成にとっては異文化体験はその成長を促すものであり, プラスの関与があったことが伺えた.2.帰国子女の国際感覚に関する意識の調査研究帰国子女の国際感覚が一般生とどのように異なるかを対比することによって, 帰国子女の国際感覚の特質を明らかにする調査研究を行った.(1)研究の手法 帰国子女のうち, 中・高校生を対象に質問紙法による調査を行った. 同年齢の一般の生徒を統制群として比較検討した.(2)研究の成果 (1)日本の印象, (2)外国語, (3)差別, 偏見, (4)生活習慣, (5)個性, (6)将来・進路の5つの内容について統計分析の結果, 帰国生と一般生の間には各内容に有意差が見られた. 帰国生には外国語・差別偏見に対する意識, 海外での進学・就職志向に顕著な特徴が見られた. また, 帰国前の日本の印象, 生活習慣の変容, 周囲に合わせる傾向から, 帰国生の日本への適応の様子の一端を窺うこともできた.