著者
栁田 薫 新村 末雄 柴原 浩章 寺田 幸弘 齊藤 英和 遠藤 克
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.59-65, 2013 (Released:2013-05-23)
参考文献数
4

日本卵子学会では,生殖補助医療の核心を担う胚培養士の知識と技術の維持と向上を目的として,生殖補助医療胚培養士,管理胚培養士の資格認定を実施してきた.現在までに認定された胚培養士の状況について報告する.生殖補助医療胚培養士については,平成14年から生殖補助医療胚培養士認定審査会を実施し,現在まで1,006名が認定された.認定者において女性が79.8%を占めた.また,20~29歳が71.3%を占めた.教育背景としては大学卒・大学院修了が多く63.7%であった.学歴の専門性では生物学・動物関連学科が41.3%であった.また,学位取得者(修士・博士)は24.3%であった.審査時での実務経験が1–2年が最も多く48.8%で,不合格率が20.5%ともっとも高かった.勤務施設は医院・クリニックが多く69.1%となった.認定の更新率は70.6%であり,20.5%が資格凍結を行っている.生殖補助医療管理胚培養士の資格については,平成19年から日本生殖医学会と共同で認定を行い,現在まで14名が認定された.職種としての胚培養士の認知も進み,人数も大きな数字になってきており,公的資格制度への発展が強く望まれる.
著者
小林 万優 住田 翔太郎 新村 末雄
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.180-186, 2012 (Released:2012-11-03)
参考文献数
35

成熟モデルマウスの初期胚について,ブリリアントクレシル青(BCB)に陽性と陰性の胚の出現率とそれらの胚盤胞への発生率を調べた.2細胞期ないし桑実胚期の胚において,BCB陽性のものの出現率は,94.2ないし96.4%であり,BCB陰性胚の出現率に比べ,すべての時期で有意に高かった.また,BCB陽性胚の胚盤胞への発生率(85.7ないし96.7%)は,BCB陰性胚の0ないし50.0%に比べ,すべての時期で有意に高かった.一方,加齢モデルマウスから採取した2細胞胚および桑実胚において,BCB陽性のものの出現率は,79.5および58.6%であり,BCB陰性胚の出現率(20.5および41.4%)に比べて有意に高いとともに,BCB陽性胚の胚盤胞への発生率(77.1および79.4%)も,BCB陰性胚の発生率(0および45.8%)に比べて有意に高かった.なお,BCB陽性の2細胞胚と桑実胚の出現頻度は,成熟モデルマウスから採取したものに比べて加齢モデルマウスから採取したもので有意に低かったが,胚盤胞への発生率は,両モデルマウスから採取した胚の間で相違なかった.以上の結果から,BCB陽性胚の体外での胚盤胞への発生率はBCB陰性胚に比べて有意に高いことが確かめられた.また,卵子と初期胚におけるBCBに対する染色性とG-6-PDH活性との間には相関のあることが考えられた.
著者
新村 末雄 石田 一夫
出版者
日本繁殖生物学会
雑誌
家畜繁殖研究會誌 (ISSN:04530551)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.99-105, 1976

妊娠5日12時間から16日までのハムスターの子宮に出現する巨細胞をORSINIに従って第1次巨細胞と第2次巨細胞に分け,それぞれについて核酸,たん白質,多糖類,脂肪を染色し,さらに,Acid Pase,Alk Pase,Etase,SDH,各種OH-SDHの組織化学的検出を試みた。<BR>第1次巨細胞は細胞質突起をもっており,妊娠5日12時間にすでに着床腔周辺とエクトプラセンタルコーン付近にみられ,次第に増えてライヘルト膜近くの子宮内膜に分布し網状構造を形成した。この時期の巨細胞にごは赤血球の破片が貧食されていた。妊娠後期には紡錘状となって減少した。第2次巨細胞は多角形で,7日12時間に増殖中のエクトプラセンタルコーンの外側に多数出現し,後に合胞体化して栄養海綿体を形成した。<BR>これらの巨細胞は常に多量のRNAを含有しており,acrolein-SCHIFF陽性たん白質も少量観察された。グリコゲン穎粒は第1次巨細胞では妊娠12日まで,第2次巨細胞では13日まで,いずれも少量認められた。酸性多糖類はまったく検出されなかった。脂肪小滴は第1次巨細胞では8日まで少量認められ,第2次巨細胞では10日から出現し次第に増加した。AcidPase活性は弱かったが,妊娠期間をとおして常に認められた。Alk Pase活性は弱かったが8日まで存在し,9日で痕跡的となり11日に消失した。SDH活性は第1次および第2次巨細胞とも常に弱かった。Etaseと各種OH-SDHは検出されなかった。<BR>以上のことから,ハムスターの巨細胞は従来いわれているように移行性と貧食性をもっており,胞胚の着床や着床腔の拡大に関与していることが示唆されたが&bull;ラットやマウスにみられるようなOH-SDHは検出されなかったので,プロジェステロンの産生は行われていないように思われた。
著者
新村 末雄 高橋 英太
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産學會報 = The Japanese journal of zootechnical science (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.713-719, 1995-08-25
被引用文献数
9 2

培養マウス胚盤胞の収縮運動をタイムラプスビデオを用いて観察した.ハッチング前の期間において,83.3%(25/30)の胚盤胞が収縮を行なったが,ハッチング中およびハッチング後10時間までの期間では,すべての胚盤胞が収縮を行なった.これら3期間において,弱度(20%未満の体積の減少)および強度(20%以上の体積の減少)の収縮の平均回数および1時間当たりの平均収縮回数は,いずれもハッチング中の期間で有意に多かった.また,ハッチングを完了した胚とハッチングを完了しなかった胚において,胚盤胞形成後32時間までの弱度の収縮回数に差はみられなかったが,強度の収縮回数はハッチングを完了した胚で有意に少なかった.以上の結果から,胚盤胞の収縮運動,特に,弱度の収縮はハッチングに役割を果たしているが,強度の収縮はハッチングとは関係なく,ハッチングを完了できないような胚で多発するものであることが考えられた.