著者
新美 文彩 久米 春喜 熊野 信太郎 石川 晃 西松 寛明 冨田 京一 高橋 悟 武内 巧 北村 唯一
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.98, no.5, pp.713-717, 2007-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
22

症例は27歳女性. 気胸の既往があり他院にて加療されていた. 2回目の左気胸発症時に肺生検にて肺リンパ管筋腫症 (LAM) と診断された. その後の精査目的のCTで右腎前面に径10cmの脂肪濃度を含む腫瘤を認め, 腎血管筋脂肪腫 (AML) と診断され, 当科に紹介された. 当科にて腎部分切除術が施行された. 腫瘍は腎実質と5cm程度の部分で連緯しており, 有茎状に発育していた. LAMは病理学的に肺の気道, 血管, リンパ管周囲の平滑筋の異常増生を示し, 気道閉塞による多数の肺嚢胞状病変形成が特徴とされ, 殆どの症例で経過中に気胸を発生する予後不良の疾患である. また47~60%の症例にAMLを合併することが知られている. LAMを合併したAML患者の特徴としては20代から30代の生殖可能な女性に好発しており, 結節性硬化症に合併するAMLと比較すると片側単発傾向ではあるが, 両側例が25~62%と比較的多く, また多発例も報告されている. LAMは予後不良のため, AMLに対しては出血などの症状が出現するまで無治療で経過することが多く, 治療としては腎摘除術が多い. しかしながら, 最近の報告ではLAMの予後はやや改善してきており, AMLの再発例も認められることから, 可能な限り腎温存を図るべきである. 本症例は本邦10例目である.
著者
松澤 幸正 前川 滋克 西松 寛明 高橋 克敏 新美 文彩 米虫 良允 宮嵜 英世 村田 高史 平野 美和 河村 毅 本間 之夫
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.95-102, 2015-04-20 (Released:2016-04-23)
参考文献数
30
被引用文献数
3

(目的) 副腎出血は保存的に経過観察できるものから致死的なものまで様々である一方,治療の基準や方法は明確に確立されていない.今回我々は自験例および文献例にて副腎出血の治療法,そしてその適応について検討する. (対象と方法) 2004年11月から2013年9月までに東京大学医学部附属病院および同愛記念病院に来院した副腎出血6例と医中誌にて検索し得た57例について後向きに調査した. (結果) 今回の自験例6例と既報告57例の計63例において,悪性腫瘍の転移による副腎出血は重篤化する可能性が高い傾向があった.治療では保存的治療が13例(23%),TAEを行ったのが5例(8%),緊急手術が3例(5%)であり,残りの症例は状態が安定した後に診断を兼ねて待機的に副腎摘除術を施行していた.また,Hb 10 g/dl以下かつ血腫径が10 cm以上の症例は5例あり,そのうち1例を除いて,緊急止血術が行われた. (結論) 悪性腫瘍の副腎転移による出血,Hb 10 g/dl以下かつ血腫径が10 cmを超えるものは緊急で止血術を考慮すべきであり,止血術後も再出血や全身状態の悪化を起こす可能性があり厳重な観察を要すると考えられた.治療法としては,手術と比べ侵襲も少ないことからTAEを第一選択とすることが勧められる.