著者
岸 洋一 平野 美和 井上 滋彦 石塚 英司 濱嵜 公久 鈴木 基文 藤田 喜一郎 山田 徹
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.403-409, 1997

99例の前立腺肥大症に対し, 経尿道的前立腺高温度療法(プロスタトロン)を施行した. 自覚症状としてのI-PSSの変化では治療前には20.1±7.0であったが, 4週後には10.8±6.7と著明に減少し, さらに6ヵ月まで徐々に減少し, 1年後にやや上昇しているが, いずれも有意な変化であった(p<0.0001). 満足度も同様の傾向であった. 他覚所見の推移では最大尿流率の変化が8.9±4.9ml/secから4週~6ヵ月後まで3~4mlの増加がみられ, 1年後にも9.7±3.1ml/secであった(p<0.018). 平均尿流率をみると, 治療前に4.3±2.5ml/secであるが, 8週後には5.8±2.6ml/secまで上昇し, 1年後には4.6±1.6ml/secとやや低下したが, 有意の変化は保たれた. また残尿量も1年後にも有意の減少を示した. 自他覚的所見の改善は少なくとも1年にわたって持続するので, 本療法は前立腺肥大症の治療の有力な選択肢の一つとなりうる.
著者
小林 博仁 熊谷 仁平 大野 俊一 酒井 真人 平野 美和 手島 伸一 井上 滋彦 河村 毅
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.462-465, 2005-03-20
参考文献数
14

症例は81歳男性.1999年1月14日に排尿困難を主訴に当科受診.経直腸的超音波検査上, 前立腺に接して長径4cmの多房性嚢胞を認めたが, 本人精査希望せず放置していた.2002年8月頃より排尿困難が悪化, 尿閉となり精査目的に9月10日入院となる.RUG, DIPで膀胱, 前立腺部尿道の左側への圧排を認め, CTでは骨盤内に径12×7cmの多房性嚢胞を認めた.その他に骨盤MRI, リンパ管シンチ, 精管造影, 注腸造影等施行するも, 骨盤内嚢胞の由来は確定できなかった.PSA 3.7ng/ml, CEA 1.2ng/mlと正常であったが, CA19-9は111.4U/mlと高値であった.排尿状態改善のため10月1日骨盤内嚢胞摘除術施行.病理組織診断は前立腺嚢胞性腺腫であった.術後排尿状態は良好となり, 現在外来経過観察中である.
著者
柳沢 良三 井上 滋彦 板倉 宏尚 岸 洋一 藤丸 純一 和田 順子
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.5, pp.690-693, 1992-05-20

症例は70歳女で,1990年1月26日,排尿困難と頻尿を主訴に当院を受診.コリン作動薬を投与するも効果なく,4月6日に尿閉をきたした.膀胱鏡にて尿道および膀胱頚部の挙上を認め,導尿後も下腹部に小児頭大の腫瘤を触知した.排泄性尿路撮影では膀胱後部腫瘤を認め,鎖尿道膀胱造影で膀胱頚部と近位尿道の前方への偏位を示した.CTスキャンとMRIにて膣上方に位置し,膀胱を前方に圧排する内容液状の骨盤内腫瘤を認めた.1990年8月6日,子宮全摘除術を施行.病理診断は結核性子宮内膜炎であった.術後は排尿障害は消失し,鎖尿道膀胱造影上,膀胱頚部と尿道の偏位は消失した.本邦34例,欧米110例の婦人科疾患による尿閉を集計し,婦人科疾患による尿閉の機序を検討した.妊娠後屈子宮,子宮脱,子宮筋腫,卵巣嚢腫,処女膜閉鎖,膣閉鎖等の頻度が高かった.結核性子宮留膿腫による尿閉症例は,これまでに報告をみない.