著者
松澤 幸正 前川 滋克 西松 寛明 高橋 克敏 新美 文彩 米虫 良允 宮嵜 英世 村田 高史 平野 美和 河村 毅 本間 之夫
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.95-102, 2015-04-20 (Released:2016-04-23)
参考文献数
30
被引用文献数
3

(目的) 副腎出血は保存的に経過観察できるものから致死的なものまで様々である一方,治療の基準や方法は明確に確立されていない.今回我々は自験例および文献例にて副腎出血の治療法,そしてその適応について検討する. (対象と方法) 2004年11月から2013年9月までに東京大学医学部附属病院および同愛記念病院に来院した副腎出血6例と医中誌にて検索し得た57例について後向きに調査した. (結果) 今回の自験例6例と既報告57例の計63例において,悪性腫瘍の転移による副腎出血は重篤化する可能性が高い傾向があった.治療では保存的治療が13例(23%),TAEを行ったのが5例(8%),緊急手術が3例(5%)であり,残りの症例は状態が安定した後に診断を兼ねて待機的に副腎摘除術を施行していた.また,Hb 10 g/dl以下かつ血腫径が10 cm以上の症例は5例あり,そのうち1例を除いて,緊急止血術が行われた. (結論) 悪性腫瘍の副腎転移による出血,Hb 10 g/dl以下かつ血腫径が10 cmを超えるものは緊急で止血術を考慮すべきであり,止血術後も再出血や全身状態の悪化を起こす可能性があり厳重な観察を要すると考えられた.治療法としては,手術と比べ侵襲も少ないことからTAEを第一選択とすることが勧められる.
著者
兵頭 洋二 宍戸 清一郎 河村 毅 櫻林 啓 新津 靖雄 二瓶 大 青木 裕次郎 村松 真樹 酒井 謙 相川 厚
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.042-047, 2013-03-10 (Released:2014-10-03)
参考文献数
10

【Objective】The purpose of this study was to evaluate pharmacokinetic (Pk) profile of newly developed modified release tacrolimus (MR-TAC) in pediatric kidney transplant recipients.【Methods】According to our current immunosuppressive protocol, tacrolimus (TAC) was initially given and converted to MR-TAC in 13 pediatric patients who received kidney transplantation from April 2010 to April 2011. The switch dose ratio was 1:1, and the 24hour full Pk study was assessed before and after the conversion from TAC to MR-TAC.【Results】The mean total daily dose at baseline upon enrollment was 5.4±3.3 mg. There was no significant correlation between the oral dose and the trough concentration (C0) of TAC/MR-TAC. The consecutive Pk studies revealed no significant difference in the mean time to maximum concentration (Tmax) / maximum concentration (Cmax) and the area under the time-concentration curve (AUC0-24) of both reagents; the mean C0 of MR-TAC was 18% lower than those of TAC. A better correlation between AUC0-24 and C0 was observed in MR-TAC compared to that in TAC (r2=0.912, for MR-TAC; r2>0.555, for TAC). 【Conclusion】In the conversion from TAC to MR-TAC, AUC0-24 was equivalent despite the 18% reduction of C0, even in the pediatric kidney transplant recipients. The trough concentration might be an excellent predictor in the therapeutic drug monitoring of MR-TAC because of its better correlation of C0 and AUC0-24.
著者
小林 博仁 熊谷 仁平 大野 俊一 酒井 真人 平野 美和 手島 伸一 井上 滋彦 河村 毅
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.462-465, 2005-03-20
参考文献数
14

症例は81歳男性.1999年1月14日に排尿困難を主訴に当科受診.経直腸的超音波検査上, 前立腺に接して長径4cmの多房性嚢胞を認めたが, 本人精査希望せず放置していた.2002年8月頃より排尿困難が悪化, 尿閉となり精査目的に9月10日入院となる.RUG, DIPで膀胱, 前立腺部尿道の左側への圧排を認め, CTでは骨盤内に径12×7cmの多房性嚢胞を認めた.その他に骨盤MRI, リンパ管シンチ, 精管造影, 注腸造影等施行するも, 骨盤内嚢胞の由来は確定できなかった.PSA 3.7ng/ml, CEA 1.2ng/mlと正常であったが, CA19-9は111.4U/mlと高値であった.排尿状態改善のため10月1日骨盤内嚢胞摘除術施行.病理組織診断は前立腺嚢胞性腺腫であった.術後排尿状態は良好となり, 現在外来経過観察中である.
著者
河村 毅 大谷 幹伸 保坂 義雄 東海林 文夫 福谷 恵子 横山 正夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.288-295, 1981
被引用文献数
1

昭和40年から昭和54年までの15年間に東大分院泌尿器科であつかった15歳以下の小児尿路結石症は17名で,この間の全結石症例の1.6%に相当した.性別は男12,女5で男女比は2.4:1であった.年齢は最年少が8カ月,8例が5歳以下で最年長に15歳であった.結石部位は上部結石13例(腎結石9,尿管結石4),下部結石2例(膀胱結石2),上部と下部結石合併2例(尿管と膀胱結石1,尿管と尿道結石1)であった.臨床症状は肉眼的血尿6例,発熱3例,側腹痛3例,膀胱刺激症状3例,尿閉1例,尿失禁1例とさまざまであった.上部結石13例のうち観血的治療をおこなったのは11例,13回で,このうち腎摘例が2例で腎保存出来たものは9例であった. 10例に結石成分の分析をおこない燐酸塩系結石4,蓚醗塩系3,シスチン2,キサンチン1例であった.原因疾患の判明したしのは9例,52.9%で,その内訳はシスチン尿症2,キサンチン尿症1,尿路奇形と感染3,長期臥床1,薬剤の副作用2例であった.結石 freeの状態となった12例の平均追跡期間は9.6年で,この間の再発は1例のみで再発率は8.3%であった.小児尿路結石症は結石の早期診断と原因疾患の検索が必要であり,このためには前もってたてたスケジュールにしたがって原因疾患の検索をおこなう必要がある.またX線陰性結石の疑いのある場合には腹部 CTが診断上有用である.
著者
冨田 京一 金村 三樹郎 黒岡 雄二 諸角 誠人 河村 毅 福島 範子
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.1374-1377, 1989-09-20
被引用文献数
1

経過観察中,inverted typeのtransitional cell carcinomaの異所性再発がみられたinvertedpapillomaの症例を経験した.症例は24歳男性で1982年10月23日無症候性肉眼的血尿を主訴として当科受診.膀胱鏡検査にて内尿道口に表面平滑な小指頭大の腫瘍がみられ,全体像が膀胱鏡検査では把握できないため,膀胱高位切開にて腫瘍を切除した.組織学的検査にてinverted papillomaと診断された.その後19カ月,35カ月,43カ月,53カ月後に異所性再発を繰り返し,その度に経尿道的に切除した.組織学的検査にて大部分が内反構造を伴うtransitional cell carcinomaであった.inverted papillomaは一般的には良性疾患として扱われているが,悪性化および再発の可能性が存在することから他の膀胱腫瘍と同様に術後の経過観察が必要と考えられた.