- 著者
-
星 周一郎
- 出版者
- 日本犯罪社会学会
- 雑誌
- 犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, pp.57-70, 2018
<p>未曾有の高齢社会化に伴い,高齢犯罪者に関わる犯罪現象が変化するとともに,その対応のあり方についても新たな検討が求められる.増加の著しい高齢者万引きに関しては,その多くが比較的軽微な事案であるため,刑事司法制度が予定する犯罪者処遇がほとんどなされない一方,その犯行動機,犯行原因に対応する形で,医療,福祉との間での有機的な連携の必要性がある.しかしながら,それ以上に当該行為の未然防止が重要である.そのためには,生体認証システム付防犯カメラシステムの利用や問題を抱えた高齢者の情報などの個人情報の取扱いについて,社会一般の理解を踏まえた上で,プライバシー保護とのバランスを図った枠組みの整備が求められる.他方で,近年になって社会の耳目を集めることの多い「介護疲れ殺人」については,裁判員裁判が開始されて以降,「懲役3年・執行猶予5年」という量刑が下されることが多くなっている.しかし,当該被告人の再犯可能性がほとんど認められない事案が多いことを考えると,執行猶予の期間量定の意義に関して理論的な再検討が求められると同時に,当該者の支援のあり方についても,従来の刑事司法の枠組みを超えた対応の必要がある.</p>