著者
春日 遥 大橋 真智子 山本 将隆 小西 祐輔 北村 春菜 池田 宥一郎 村井 貴
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1_30-1_35, 2021-03-31 (Released:2021-03-19)
参考文献数
11

「アニマルめがねラボ」は小学3年生から中学3年生までを対象にした、バーチャル・リアリティ映像作品を用いたサイエンスコミュニケーションイベントである。子どもには難しい「動物の視覚」を題材に、バーチャル・リアリティによる直感的理解だけではなく、場のデザインにより教育効果を高める工夫を行った。多様な動物に実際に会える動物園という場の相乗効果を狙った開催場所の選定や、架空の研究所「アニマルめがねラボ」としてディティールにこだわった場の演出を行った。イベントに参加した子ども達は「リクガメとヌマガメの視力」、「イヌとネコの色覚」、「ヤモリとカエルの動体視力」の3つのブースを通して、多様性に富む生き物の視覚を学習し、更なる学習への意欲や動物への関心を得た。
著者
春日 遥 池田 宥一郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.1764-1778, 2021-11-15

これまでSiriやAlexaなどのコミュニケーションを主体とするエージェントが家庭に導入されてきた.一方で,家庭においてヒトとより長い間コミュニケーションをとってきた存在として,伴侶動物があげられる.代表的な伴侶動物であるイヌでは,エージェントが会話により飼い主の関心を独占する場合,飼い主の反応の観察から新奇物であるエージェントへの警戒を和らげるというポジティブな反応や,嫉妬行動を誘発するというネガティブな反応が誘発されると考えられる.嫉妬行動は対象の形状にも依存することから,どのような形状のコミュニケーション・エージェントであれば家庭において飼い主ともイヌとも良い関係性を構築できうるか調査する必要がある.本研究ではプリミティブな形状のスマートスピーカ(Google Home),大小の2台のヒト型ロボット(NAOとPepper),イヌ型スマートスピーカの4条件を用意し,飼い主-エージェントの2者間の調査と飼い主がエージェントにポジティブに接するときのイヌの行動観察という3者間の調査を行った.32人のイヌの飼い主の印象評価の結果,ヒト型ロボットが好まれ,イヌ型スピーカはGoogle Homeよりも印象が悪かった.一方で,2名のイヌの訓練士が評価した21匹のイヌの行動分析の結果,飼い主-エージェント間のやりとりの観察後にイヌ型スピーカに対しては臀部の臭いを嗅ぐなど後部の接触を行った個体の割合が他のエージェントよりも有意に高かった.この結果は,イヌの飼い主が好ましいと感じるエージェントとイヌが関心を持つあるいは接触がしやすいエージェントの形状が異なる場合があるということを示唆していた.
著者
春日 遥 坂本 大介 棟方 渚 小野 哲雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.1520-1531, 2018-08-15

ペット動物は人類の最も古い友人である.人々は彼らと生活を営み,今日では家庭において家族としてのペットと人の関係が研究されてきた.近年になってコミュニケーション・ロボットの登場により,家庭における人とペット動物に加え社会的ロボットを考慮した3者関係に注目した研究分野が生まれつつある.本研究では,社会的ロボットが家庭における人とペット動物の関係に対してどのような影響を与えるのかを調査するために実験的なフィールド調査を行った.調査には10家庭22人と12頭のペット動物(犬が4頭,猫が8頭)が参加した.調査においては社会的ロボットとして小型人型ロボットNAOを使用し,各家庭において小型人型ロボットと人,ペット動物が対話する様子の観察を行った.対話ではペット動物に対してポジティブに話しかける正条件と,相対的にネガティブに話しかける負条件の2つのシナリオで調査を実施した.両条件では約2分間の対話シナリオのうち,約30秒間のロボットからペット動物への発話内容が異なった.結果として,ロボットのペット動物に対する発話内容と態度の違いが,参加者からロボットへの印象に影響を与えていた.