- 著者
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春日 遥
池田 宥一郎
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.11, pp.1764-1778, 2021-11-15
これまでSiriやAlexaなどのコミュニケーションを主体とするエージェントが家庭に導入されてきた.一方で,家庭においてヒトとより長い間コミュニケーションをとってきた存在として,伴侶動物があげられる.代表的な伴侶動物であるイヌでは,エージェントが会話により飼い主の関心を独占する場合,飼い主の反応の観察から新奇物であるエージェントへの警戒を和らげるというポジティブな反応や,嫉妬行動を誘発するというネガティブな反応が誘発されると考えられる.嫉妬行動は対象の形状にも依存することから,どのような形状のコミュニケーション・エージェントであれば家庭において飼い主ともイヌとも良い関係性を構築できうるか調査する必要がある.本研究ではプリミティブな形状のスマートスピーカ(Google Home),大小の2台のヒト型ロボット(NAOとPepper),イヌ型スマートスピーカの4条件を用意し,飼い主-エージェントの2者間の調査と飼い主がエージェントにポジティブに接するときのイヌの行動観察という3者間の調査を行った.32人のイヌの飼い主の印象評価の結果,ヒト型ロボットが好まれ,イヌ型スピーカはGoogle Homeよりも印象が悪かった.一方で,2名のイヌの訓練士が評価した21匹のイヌの行動分析の結果,飼い主-エージェント間のやりとりの観察後にイヌ型スピーカに対しては臀部の臭いを嗅ぐなど後部の接触を行った個体の割合が他のエージェントよりも有意に高かった.この結果は,イヌの飼い主が好ましいと感じるエージェントとイヌが関心を持つあるいは接触がしやすいエージェントの形状が異なる場合があるということを示唆していた.