著者
小貫 建一郎 正田 純一 川本 徹 有泉 俊一 山本 雅一
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.62-69, 2012-04-25

【目的】癌細胞表面の糖鎖構造はその悪性挙動に深く関与する.糖転移酵素GnT-Vは,ノックアウトマウスの解析結果より,癌の増殖・転移に必須の分子であることが証明されており、様々な癌種において生物学的悪性度との関連性が報告されている.以前我々は,pT2胆嚢癌(GBC)のGnT-V陽性例において、術後遠隔臓器転移再発が多く、陰性例と比較し有意に予後不良であることを報告した.しかし、他の胆道癌に関してのGnT-V発現と臨床病理学的意義に関する報告は過去にない.そこで、肝内胆管癌(ICC)におけるGnT-V発現と予後および術後再発との関連性について検討を行った.【方法】ICC治癒切除72例を対象とし,GnT-V発現を免疫組織学化学にて解析し,その結果を臨床病理学的因子および術後予後と比較検討した.【結果】GnT-Vの免疫組織学的発現は陽性42例、陰性30例であった. GnT-V発現の有無と病理組織学的因子との間に有意な相関関係は認められなかった.GnT-V陽性例は陰性例と比較し術後5年生存率は高い傾向にあったが有意差を認めなかった.(P = 0.31) また、GnT-V発現の有無と術後再発率、再発様式との間に有意差は認めなかった. ,【結語】ICCにおいては、GnT-Vと関連のない機序の癌増殖・転移経路の存在が示唆された。,
著者
高崎 淳 片桐 聡 小寺 由人 有泉 俊一 山本 雅一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.2882-2888, 2011 (Released:2012-04-13)
参考文献数
34
被引用文献数
1

症例は51歳,男性.2009年8月,検診時に行った腹部超音波検査(以下US)で肝腫瘤を指摘された.既往にB型肝炎ウィルスキャリア.輸血歴なし.USではS2肝表に径10mmの境界不明瞭な低エコーの腫瘤を認め,造影CT早期相では周囲のみが造影され,後期相では等吸収であった.B型肝炎ウィルスキャリアであり,悪性の可能性否定できず,充分なInformed consentのもと全生検目的に腹腔鏡補助下肝外側区域切除術施行した.切除標本肉眼所見では,弾性硬,黄白色調の二こぶ状腫瘤を認め,病理組織学検査では,悪性細胞は認めず多数の好酸球の集簇を認めた.抗寄生虫抗体スクリーニング検査の結果,ブタ回虫に対する抗体が陽性で,内臓幼虫移行症による肝好酸性肉芽腫症と診断した.ブタ回虫による肝好酸性肉芽腫症は10mm前後の結節を形成し,CTで造影効果を認める症例もあり,肝悪性腫瘍との鑑別が難しい症例が存在する.