著者
高崎 淳 片桐 聡 小寺 由人 有泉 俊一 山本 雅一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.2882-2888, 2011 (Released:2012-04-13)
参考文献数
34
被引用文献数
1

症例は51歳,男性.2009年8月,検診時に行った腹部超音波検査(以下US)で肝腫瘤を指摘された.既往にB型肝炎ウィルスキャリア.輸血歴なし.USではS2肝表に径10mmの境界不明瞭な低エコーの腫瘤を認め,造影CT早期相では周囲のみが造影され,後期相では等吸収であった.B型肝炎ウィルスキャリアであり,悪性の可能性否定できず,充分なInformed consentのもと全生検目的に腹腔鏡補助下肝外側区域切除術施行した.切除標本肉眼所見では,弾性硬,黄白色調の二こぶ状腫瘤を認め,病理組織学検査では,悪性細胞は認めず多数の好酸球の集簇を認めた.抗寄生虫抗体スクリーニング検査の結果,ブタ回虫に対する抗体が陽性で,内臓幼虫移行症による肝好酸性肉芽腫症と診断した.ブタ回虫による肝好酸性肉芽腫症は10mm前後の結節を形成し,CTで造影効果を認める症例もあり,肝悪性腫瘍との鑑別が難しい症例が存在する.
著者
河野 康一 佐々木 光信 嘉藤田 進 片桐 聡 深谷 正道 藤井 大輔 宇都出 公也
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.156-162, 2012-06

本年(2011年),当社より発売したがん保険の新商品「Days」においては,がんに対する放射線治療の給付要件「50グレイ以上の照射で,施術の開始日から60日の間に1回の給付を限度とする」から「50グレイ以上の照射で」(以下,総線量50Gy規定と記載する)の規定を廃止した。本規定はもともと1981年に作成された「疾病・手術に関する全社統一約款」において,当時のがん治療の実態から手術給付金の一つとして設けられたものであった。その後,放射線治療は多様化・個別化しており,現在では,臨床と保険給付要件との間に乖離が生じている。当社では,がん保険の新商品の発売に当たり,現在のがん医療の実情に合わせた保険とすべく約款内容の検討を行った。総線量50Gy規定の廃止もその一つである。本規定の廃止は,本邦のがん保険においては当社が初めて行ったものであり,歴史的にも意義の深いものと考えられるので,ここに報告する。
著者
内田 数海 高崎 健 次田 正 山本 雅一 大坪 毅人 秋山 和宏 片桐 聡
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.1445-1448, 1997-07-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
21

電解酸性水による手洗い消毒の有効性を判定する目的で,電解酸性水,手洗い用ポビドンヨード液,滅菌蒸留水でそれぞれ手洗いを施行し,手洗い前,手洗い直後,手術終了時について経時的に手指上の細菌を比較検討した.その結果,電解酸性水には手洗い用ポビドンヨード液とほぼ同程度の消毒効果が認められ,術前手洗いに十分利用可能であると考えられた.
著者
高田 有希子 奥出 祥代 林 孝彰 月花 環 片桐 聡 北川 貴明 久保 朗子 小島 博己 常岡 寛
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.153-159, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
25

【目的】心因性視覚障害で、色覚異常を主訴として眼科受診するケースは少ない。今回、一過性の聴力障害後に、色覚異常を訴えた心因性視覚障害の1例を経験したので報告する。【症例】15歳女性。2013年1月頃より、一過性の左聴力障害を認めていたが、経過観察していた。同年2月右眼の色覚異常を自覚し、近医眼科を受診。同年3月精査目的にて当科受診となった。矯正視力は右眼1.5、左眼1.2であった。左右眼ともに前眼部、中間透光体、眼底に異常所見は認めず、Goldmann動的量的視野は正常で、網膜電図の潜時・振幅は正常範囲内であった。石原色覚検査表の分類表誤読数は右8表、左4表。パネルD-15では右fail、左passであった。Farnsworth-Munsell 100 Hue Test(F-M 100 Hue)の総偏差点は右148(正常範囲外)、左84(正常範囲内)であった。精査中、頭部MRIにて左聴神経腫瘍を認めた。2013年6月頃には自覚症状の改善を訴えており、同年7月再度色覚検査を行ったところ、石原色覚検査表誤読数は右2表、左1表。パネルD-15は左右眼それぞれpassと改善がみられた。F-M 100 Hueの総偏差点は右108、左124(ともに正常範囲外)であった。【結論】発症時、高校受験勉強の最中であり、一過性の左聴力障害などストレスとなる背景がいくつか存在していた。明らかな視路疾患や眼疾患がなかったことから、色覚異常は重複したストレスによる心因性視覚障害が原因であると思われた。