著者
山田 綾 門間 陽樹 龍田 希 仲井 邦彦 有馬 隆博 八重樫 伸生 永富 良一 エコチル調査宮城ユニットセンター
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.2020, (Released:2021-01-13)

目的:日本人女性を対象に,妊娠前および妊娠中,産後1.5年と3.5年の身体活動レベルの経時変化を記述することを主たる目的とし,さらに,産後1.5年と3.5年で低い身体活動レベルを維持してしまう要因について探索的に検討することを目的とした。 方法:子供の健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の宮城ユニットセンター独自の調査に参加同意した女性1,874名を対象とした。身体活動はIPAQ短縮版を用いて,妊娠前,妊娠中,産後1.5年および3.5年に測定し,低身体活動と中高身体活動の2カテゴリーにそれぞれ分類した。さらに,育児期の産後1.5年と3.5年で低い身体活動レベルを維持してしまう要因については,出産時年齢,婚姻状況,学歴,就労状況,出産歴,再妊娠有無,非妊娠時BMI,過去の運動経験の有無,妊娠前および妊娠中の身体活動レベルを説明変数とし,ポアソン回帰分析を実施した。 結果:低身体活動に該当する女性の割合は,妊娠前で51.7%,妊娠中で64.5%,産後1.5年で92.0%となり,産後3.5年では65.3%であった(妊娠前の割合と比較してすべての時点でP < 0.001)。産後1.5年と3.5年で低身体活動を維持してしまう要因は,出産時年齢が高いこと,高学歴,産後の仕事の継続,休止および未就労,過去の運動経験なし,妊娠前と妊娠中の低身体活動レベルであった(P < 0.05)。 結論:妊娠~育児期における女性は低い身体活動レベルに該当する者が多く,産後1.5年で最も高い値を示した。育児期に低身体活動を維持してしまう要因は,高年齢,高学歴,産後の就労継続,未就労および休止,過去の運動経験なし,妊娠前および妊娠中の低身体活動レベルであった。
著者
有馬 隆博
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第44回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S23-3, 2017 (Released:2018-03-29)

近年我が国の晩婚化、少子化の社会情勢と、医療技術の進歩により、既婚者の15−20%が不妊治療を受けている。また、そのおよそ40%は、男性不妊(精子異常)で、過去10年間で患者数は約25倍に増加していることが報告されている。一方、以前よりエストロゲン様作用を有する環境由来化学物質が、ヒトの性腺(生殖細胞)に影響を及ぼし、オスのメス化、精子数減少などに影響を与え、種の存続に関わる事が社会的話題となったが、その関連性については、十分な科学的根拠がないため、未だ明らかにされていない。環境由来化学物質は、エピジェネティックな修飾により、遺伝子発現に影響を及ぼすことが知られている。エピジェネティクスとは、DNAの塩基配列の変化を伴わない、遺伝子発現制御に関わる後付けの修飾である。主たる修飾として、DNAのメチル化、ヒストンのアセチル化やメチル化が知られている。このエピジェネティックな修飾は、生殖細胞形成過程では、『細胞の記憶』として遺伝子刷り込み機構(ゲノムインプリンティング)として知られている。インプリンティングとは、特定の親由来の遺伝子が選択的に発現する現象で、哺乳類の正常な発生、分化に必須な現象である。また、この機構の破綻は、先天性疾患に限らず、乳幼児の行動、性格異常、成人疾患にも影響を与える。本学会では、男性不妊症患者を対象に化学物質としてPCBに注目し、ヒト精子へどのような影響を与えているのか、精子の形態と機能の両面から解析を行い、その関連性について発表したい。
著者
小林 久人 有馬 隆博
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.143-149, 2006 (Released:2006-12-25)
参考文献数
25

ゲノムインプリントは,母親と父親由来のゲノムに親の由来が記憶される現象である.この現象は動物では胎盤をもつ哺乳類にのみ存在し,2本ある対立遺伝子(アレル)の親の由来が識別された結果,片親性発現を示す数多くのインプリント遺伝子が報告されている.これらの遺伝子発現制御には,卵子・精子が成長する過程で各ゲノムDNA上に起こる性特異的なDNAメチル化が必須であることが,マウスを使ったこれまでの研究で明らかにされた.本稿ではゲノムインプリント機構とDNAメチル化の関連性について概説する.