- 著者
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服部 裕一郎
上ヶ谷 友佑
- 出版者
- 一般社団法人 日本科学教育学会
- 雑誌
- 日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.3, pp.59-64, 2019-12-21 (Released:2019-12-18)
- 参考文献数
- 13
- 被引用文献数
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ユーモアを取り入れた数学教育の研究が,一般に,ユーモアが数学学習の情意的側面に肯定的な影響を与えることを期待する中,本研究は,ユーモアが数学学習の認知的側面に与える影響を検討する.とりわけ本稿の目的は,中等教育の文脈で「ユーモア」を意図的に取り入れた数学授業において,生徒達の数学的活動が真正となるためのユーモアの役割を明らかにすることである.理論的枠組みとして,ユーモアにおける不一致理論の立場に依拠し,中学校数学でユーモアを取り入れた数学授業の実践の具体から,生徒達の活動の様相を分析した.分析の結果,数学教育にユーモアを取り入れることにより,「生徒個々人の数学的な問題解決における思考の自由性の保障」,「授業者と生徒達によって交わされる教授学的契約の更新」,「生徒達の批判的思考の誘発」の3点をユーモアの役割として特定し,ユーモアが生徒達の真正な数学的活動の実現に貢献することを指摘した.