- 著者
-
石橋 一昴
- 出版者
- 日本教科教育学会
- 雑誌
- 日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.3, pp.37-46, 2017 (Released:2020-01-26)
- 参考文献数
- 35
本稿の目的は,確率教育における独立概念の理解へ向けた,指導内容と方法について考察することである。今日の確率教育において重要性が高まってきている概念の一つとして独立概念があるが,その理解には古くから困難性が指摘されており,未だ解消には至っていない。このような現状に対し,先行研究からカリキュラムに原因を求めることが有効であるという示唆を得た。そこでまず,独立概念の理解の困難性の原因について考察し,「直観との乖離」と「排反事象との混同」を同定した。次に,それらの改善に向けた視座として「偶然概念の理解の強調」と「「排反事象」,「独立試行」,「独立事象」の区別」を導出した。その後,現行カリキュラムが前述の2つの視座を意識した構成でないことを指摘し,次期学習指導要領改訂の展望と確率概念の形成に関する水準に基づき,小学校高学年における実験による確率指導と,高等学校数学A における独立事象の導入を提案した。さらに独立事象の指導方法として,命題の設定とカルノー図による図的表現を提案した。