著者
木下 一彦 水野 裕和 日比 英晴
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.424-428, 2019-06-20 (Released:2019-08-20)
参考文献数
17

A case of multiple sialolithiasis in the submandibular gland and duct is reported. A 71-year-old man was referred to the Department of Oral and Maxillofacial Surgery in our hospital. He had no symptoms in the right submandibular region, but panoramic radiography and computed tomography showed multiple calculi in the right submandibular gland and duct. The patient underwent excision of the right submandibular gland with Wharton’s duct including multiple stones. A total of 332 sialoliths were detected, and the submandibular gland tissues were normal histopathologically. The postoperative period was uneventful, and the patient recovered without any complications. This is a rare case with the largest number of sialoliths ever reported.
著者
木下 一彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

電位依存性イオンチャネルであるBKカリウムチャネルは単一チャネル電流の測定が容易である。また、シェーカーチャネルは開閉が電位だけで制御されるイオンチャネルである。これらを対象に、その電位センサー部に操作用のハンドルタグを遺伝子的に導入し、電気的仕事ではなく力学的操作で開閉させることを試みている。まだ、成功率が極めて低く、タグの導入部位やハンドルの検討を試みている段階である。回転分子モーターF1-ATPaseのATP加水分解機構において、未だに決着がついていない燐酸解離とATP分解のタイミングを決めるため、加水分解しにくいATPアナログや解離が遅くなることが示唆されている燐酸アナログを用いての実験を行った。その結果、我々の仮説がこれまで通り主張できることが分かった。また、リポソームあたりに1個未満再構成したATP合成酵素について、ATP合成の逆反応としてのATP分解駆動によるプロトンポンプ活性が定量できた。これまでは、ATP分解活性のみを測定し、プロトン/ATP比を仮定してポンプ活性を推定するしかなかったが、ATP合成酵素1個あたりのプロトン/ATP比を実験的に初めて見積もることができた。70℃以上の高温で生育する超好熱菌のReverse gyraseは、高温でDNA二重鎖がほどけてしまうのを防ぐために、ATPの加水分解エネルギーを使ってDNAの二重螺旋をきつく巻き上げている。DNAの捻れ力を引っ張り力とは独立して測定することに成功し、この酵素一分子の出すトルクをはじめて見積もることができた。その結果、一回の捻れ反応にATPを2つ以上使うことが示唆され、F1-ATPaseとは違った、割といい加減な酵素であることが分かった。
著者
木下 一彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

(1) イオンチャネルの手動開閉チャネルコンダクタンスが高く単一チャネル電流の測定が容易なBKチャネル、広く研究されており開閉が電位だけで制御されるシェーカーチャネル、などを対象として、捕捉効率の高い操作用ハンドルの導入を試みた。すでに、チャネル配列の電位センサー部に外来たんぱく質を挿入することにより、そのたんぱく質自身の存在がチャネルの開閉を制御することを示したが、このたんぱく質の位置をさらに外力で操作できれば、より明確な解釈が可能になる。そこで、この外来たんぱく質のチャネルと反対側に、アビジン結合部位を導入することを試みている。また、つい最近発表された、高効率で膜電位を計測できる蛍光プローブを、チャネルに融合させる試みも開始した。いずれも、基盤研究(S)に引き継ぐ。(2) F1-ATPaseのATP加水分解および燐酸解離のタイミングの決定どちらのタイミングもすでに分かったつもりになっていたが、最近の研究により振り出しに戻った感がある。そこで、加水分解しにくいATPアナログ(蛍光性)や、解離が遅くなることが示唆されている燐酸アナログを用いて、再検討をはじめた。基盤(S)に引き継ぐ。(3) Reverse gyraseの反応機構DNAの螺旋をさらにきつく巻き上げる酵素reverse gyraseにつき、酵素を助けるつもりで磁石によりDNAを巻き上げたところ、酵素はそれを戻してしまうようである。まだ予備的な結果なので、継続する。
著者
木下 一彦 石渡 信一
出版者
早稲田大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2009

たんぱく質分子機械が働く仕掛けを探るのに、個々の分子が働いている現場を顕微鏡下で直接観て、さらに必要なら力を加えて応答を観るのが、一分子生理学である。従来は妨害方向に力をかける例が多かったが、外力で積極的に「働かせてやる」ことによる理解を目指した。働かせて得た成果ばかりとは言えないが、回転分子モーターの逆回転によるATP合成の仕組みを始めとして、リニア一分子モーター、DNA上で働く分子機械、さらに超分子レベルにおいて細胞分裂機構などにつき、多くの知見を得た。
著者
木下 一彦
出版者
早稲田大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2004

光学顕微鏡下の一分子生理学、とくに「一目で分かる」研究を標榜し、巨大目印による分子機械の動き・構造変化の直接可視化を通じて、動作機構の解明を試みた。回転分子モーターF1-ATPaseにおける化学反応→力学的仕事の共役スキームをほぼ完成させ、分子機械一般に通じ得る共役原理を提出した。一方、回転軸無しでも回転するという意外な発見をし、構造に基づく機能の説明は振出しに戻った。二本足のモーター、ミオシンの脚の動きの直接観察に成功し、ブラウン運動をうまく使って歩くことを証明した。