著者
大八木 博貴 木下 和昭 眞田 祐太朗 阿部 渉 石田 一成 柴沼 均
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.145-149, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
25

〔目的〕本研究は人工膝関節全置換術(TKA)後の膝関節屈曲可動域(膝屈曲ROM)低下に及ぼす膝蓋骨アライメントの特徴を検討した.〔対象と方法〕対象は変形性膝関節症に対してTKAを施行された28膝とした.測定項目は年齢,Body Mass Index,膝屈曲ROM,膝蓋骨アライメント(外方傾斜角,外方偏位)とした.術後の膝屈曲ROMが術前値未満の群(ROM低下群)と術前値以上の群(ROM改善群)に分け,各測定項目を群間で比較した.〔結果〕ROM低下群はROM改善群に比べて術前後の膝蓋骨外方偏位と術後の膝蓋骨外方傾斜角が有意に高値であった.〔結語〕術後の膝屈曲ROMは,術前後の膝蓋骨外方偏位が大きく,術後に膝蓋骨外方傾斜角が増大するほど低値になる傾向が示唆された.
著者
中尾 英俊 稲葉 考洋 森藤 武 内原 由佳子 渡邉 萌 金子 元春 木下 和昭 橋本 雅至 大槻 伸吾
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.275-279, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
19

〔目的〕腰椎変性疾患患者に対し,体幹伸筋持久力トレーニングを実施しVASと JOABPEQへ及ぼす影響を検討した.〔対象〕腰椎変性疾患患者27名(平均年齢72.2 ± 8.3歳)とした.〔方法〕体幹伸展持久力トレーニングを実施する15名(T群)と,通院での運動療法のみ実施する12名(C群)との間で,1ヵ月毎に3回計測された体幹伸筋持久力とVAS,JOABPEQの経時変化を比較した.〔結果〕T群の体幹伸筋持久力は3ヵ月目に,JOABPEQは腰椎機能障害のみ2ヵ月目に有意に高値を,VASは2,3ヵ月目に有意に低値を示した.〔結語〕腰椎変性疾患患者に対する体幹伸筋持久力トレーニングは,疼痛およびADLの改善に効果的であることが示唆される.
著者
石束 友輝 橋本 雅至 井上 直人 古川 博章 山崎 岳志 河野 詩織 吉川 晋矢 木下 和昭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CbPI2220, 2011

【目的】<BR> 我々は、高校サッカー選手における運動時腰痛の軽減を目的にメディカルチェックと体幹筋トレーニング指導を行っている。体幹筋機能検査として、Kraus-Weber test 変法大阪市大方式(以下、KW)と Side Bridge test(以下、SB)を用いている。KWは体幹筋機能検査として有用性が数多く報告されている。また、我々はSBの体幹筋機能と運動時腰痛との関連性を報告した。先行研究において体幹筋トレーニングを継続した結果、SBやKWの点数の向上に伴い運動時腰痛が軽減したことを報告した。しかし、腰痛が残存する選手も認められた。本研究では初回メディカルチェック時のKW 、SBの点数から低値である選手、高値である選手に分類しトレーニングを継続したことによるそれぞれの点数の変化と運動時腰痛の関連を調査した。<BR>【方法】<BR> 対象は某高校男子サッカー部員で、平成19年度の1年生10名(身長169.0±4.2cm、体重56.9±5.7kg)と、平成20年度の1年生14名 (身長167.6±6.4cm、体重56.8±5.6kg)の計24名。メディカルチェックにおいてKW 、SBの測定と腰痛に関する問診を実施した。KWは大阪市大方式に準じた。SBは姿勢保持の時間を最大60秒とし片側6点満点、左右で12点満点とした。KW、SB共に負荷量は体重の10%の重錘負荷とした。メディカルチェックは初回、中間時(以下、2回目)と約1年後(以下、3回目)に実施し、体幹筋トレーニングは初回メディカルチェック終了後より開始した。<BR> 平成19年度、平成20年度の初回のKWの点数を合計し、平均点を算出した。平均点が中間群に含まれるよう上位群、中間群、下位群の3群に分類した。SBも同様に3群に分類した。今回は上位群、下位群におけるKW、 SBの点数と運動時腰痛の保有者の変化を調査した。<BR> 統計処理は、多重比較検定にTukey-Kramer法を用い、有意水準を5%未満とした。<BR><BR>【説明と同意】<BR> ヘルシンキ宣言及び、個人情報保護法の趣旨に則り、被験者に研究の趣旨や内容、データの取り扱い方法について十分に説明し、研究への参加の同意を得た。<BR>【結果】<BR> KWは下位群9名、上位群8名であり、SBは下位群8名、上位群8名であった。<BR> KW下位群は初回15.1±2.4点、2回目18.0±6.8点、3回目22.3±7.4点であり、初回と3回目(p<0.05)において有意な増加が認められた。運動時腰痛の保有者は初回5名、2回目3名、3回目4名であった。KW上位群は初回24.6±2.4点、2回目26.8±5.3点、3回目27.0±5.4点であり有意な変化は認められなかった。運動時腰痛の保有者は初回7名、2回目5名、3回目4名であった。<BR> SB下位群は初回3.8±1.7点、2回目7.5±2.4点、3回目8.9±3.3点であり、初回と2回目(p<0.05)、初回と3回目 (p<0.01)において有意な増加が認められた。運動時腰痛の保有者は初回7名、2回目4名、3回目5名であった。SB上位群は初回11.3±0.9点、2回目8.9±3.0点、3回目10.9±2.1点であり有意な変化は認められなかった。運動時腰痛の保有者は初回4名、2回目2名、3回目4名であった。<BR><BR>【考察】<BR> 今回の結果からKW、SB下位群では点数向上に伴い運動時腰痛の保有者が減少した。初回メディカルチェック時の体幹筋機能検査において点数が低値である選手は、体幹筋機能の向上に伴い運動時腰痛の保有者が軽減したと考えられる。<BR> 一方KW、SB上位群では点数に有意な変化は認められなかった。KW上位群では運動時腰痛の保有者は減少したが、SB上位群では運動時腰痛の保有者に変化はなかった。我々は先行研究においてKW 、SB共に点数が高値でかつその点数を一定の期間維持することが、運動時腰痛改善の一要因となる可能性があると報告した。今回の結果からも、KW上位群では点数を一定の期間維持できたことで運動時腰痛の保有者が減少したと考えられる。しかしSB上位群では有意差が認められなかったものの点数を一定の期間維持できていないため運動時腰痛の保有者に変化はなかったと考えられる。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 腰痛に対する体幹筋トレーニングの効果と体幹筋機能の客観的な評価や腰痛改善との関連性についての報告は少ない。そこで、我々は体幹筋機能を客観的に評価し、運動時腰痛との関連性について経時的に調査することで運動時腰痛発生の要因を検討してきた。本研究では初回メディカルチェック時の体幹筋機能の評価結果から、運動時腰痛の予防や改善のための具体的な方針を決定しうることが示唆された。
著者
木下 和昭 橋本 雅至 中 雄太 米田 勇貴 北西 秀行 大八木 博貴
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1394, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】簡便な下肢筋力推定方法であるスクリーニングとして30秒椅子立ち上がりテスト(以下,CS-30)や5回椅子立ち上がりテスト(以下,SS-5)がある。CS-30は歩行速度(曽我2008)や下肢伸展筋力(Jones CJ 1999),SS-5はレッグプレスによる下肢伸展筋力,Timed up and go test(以下,TUG)など(牧迫ら2008)と関係性を認め,それぞれ信頼性が報告されている。またCS-30とSS-5の間には有意な相関が認められ,相互に代用ができることも報告されている(大村ら2011)。しかし,これらは対象が虚弱高齢者や脳卒中片麻痺などであり,変形性膝関節症の患者(以下,膝OA)やその後,手術に至った患者での有用性は明らかにされていない。そこで本研究は膝OAの人工膝関節全置換術前(以下,pre)と人工膝関節全置換術後(以下,post)にて,この2種類の椅子立ち上がりテストの有用性について検討した。【方法】対象は膝OAの50名(年齢73.2±8.6歳,身長153.9±9.2cm,体重60.4±10.3kg)とした。測定項目はCS-30,SS-5,膝関節伸展筋力,台ステップテスト(以下,ST),TUGとした。2つの椅子立ち上がりテストは安静座位を開始肢位とし,両上肢を胸の前で組ませ,最大努力で40cm台からの立ち座り動作を繰り返す課題を行った。SS-5は5回の立ち座り動作の所要時間をストップウォッチにて測定した。CS-30は30秒間にできるだけ多く,立ち座り動作を繰り返させた回数を測定した。膝関節伸展筋力は加藤ら(2001)の方法に従い,端座位から膝関節屈曲90°位での最大等尺性収縮をハンドヘルドダイナモメーターにて測定した。測定値は体重にて除した数値とした。STはHillら(1996)が提唱した方法を一部改変し,静止立位をとった対象者の足部から前方に設置した20cm台の上に,最大努力で一側下肢を10秒間ステップさせた回数を測定した。TUGは椅子座位を開始肢位とし,任意のタイミングで立ち上がり3m前方のコーンで回転して開始肢位に戻るまでの歩行時間を計測した。本研究では,最大努力を課す変法(島田ら2006)を用いた。検討方法は手術2日前以内(pre)と退院時(post)に各項目を測定し,術前後の関連を検討した。統計学的手法はSpearmanの順位相関係数を用い,有意水準を5%未満とした。【結果】CS-30はSS-5との間に有意な負の相関が認められた(pre r=-0.65 p<0.01;post r=-0.83 p<0.01)。pre SS-5はpreの全ての測定項目との間に有意な相関が認められた(術側膝関節伸展筋力r=-0.44,p<0.01;非術側膝関節伸展筋力r=-0.37,p<0.05;術側ST r=-0.49,p<0.01;非術側ST r=-0.80 p<0.01;TUG r=0.46,p<0.01)。pre CS-30はpre術側のST以外に有意な相関が認められた(術側膝関節伸展筋力r=0.43,p<0.01;非術側膝関節伸展筋力r=0.33,p<0.05;非術側ST r=0.60 p<0.01;TUG r=-0.38,p<0.01)。post SS-5はpostの術側の膝関節伸展筋力以外に有意な相関が認められた(非術側膝関節伸展筋力r=-0.32,p<0.05;術側ST r=-0.48,p<0.01;非術側ST r=-0.61 p<0.01;TUG r=0.58,p<0.01)。post CS-30はpostの術側の膝関節伸展筋力と術側のSTにおいて,それぞれ有意な相関が認められなかった(非術側膝関節伸展筋力r=0.31,p<0.05;非術側ST r=0.38 p<0.01;TUG r=-0.49,p<0.01)。【考察】SS-5は今回測定した他の動作テストとの関係性が確認でき,先行研究と同様に膝OAに対して使用が可能であることが示唆された。CS-30はpreとpostともに,術側の動的バランステストとの関連を示さなかったため,人工膝関節全置換術前後の術側の評価においてはSS-5の方が短時間にて可能であり,負担が少なく,有用性の高いテストであると考えられた。しかし,下肢の筋力の推定を行う場合や立ち上がりが不可能な場合は,回数の規定がないCS-30の方も有用であると考えられ,荷重関節である膝関節に障害を持つ対象者に合わせて使用することが望ましいと考えられる。またpostでは今回用いた2つの椅子立ち上がりテストは,術側の膝関節伸展筋力と関係を示さず,退院時の術側の膝関節伸展筋力を推定するには課題があり,術後の動作に影響を及ばす関節可動域や変化した下肢アライメントなどが考慮されなければならないことが示唆された。【理学療法学研究としての意義】椅子立ち上がりテストは,臨床現場で簡易に行えるパフォーマンス(動作)テストであり,人工膝関節全置換術前の膝OAにも使用可能であったが,人工膝関節全置換術後の患者では術側の筋力を推定するには術後の動作に影響を及ばす他の要因を考慮する必要性が示唆できた。